【完結】地中海の秘密とエジプトの謎

湊 マチ

第1話

美しい港町フィレンツェの夜、街は静かな安らぎに包まれていた。風がアーモンドの香りを運び、石畳の道を優しく撫でる。だが、その静寂の中で、暗い陰謀がひそやかに進行していた。


高名な宝石商、ルイジ・ベネデッティの自宅は、フィレンツェの中心にそびえ立つ古い邸宅だった。彼の成功と富を象徴するその邸宅は、豪華な装飾と高価なアンティークで埋め尽くされていた。


ルイジはその夜も、日課である晩餐を楽しんでいた。テーブルには、イタリアの伝統的な料理と共に、彼の妻が愛した美しい花々が飾られていた。ルイジはワイングラスを傾けながら、静かな夜のひとときを楽しんでいた。


だが、その夜、彼の運命は大きく変わろうとしていた。ルイジの秘書であるアリア・ロッシが、静かに部屋に入ってきた。彼女は美貌と知性を兼ね備えた女性で、ルイジにとっては信頼のおける右腕だった。


「ルイジ様、今夜のご予定は特にありませんが、少しお話ししたいことがあります。」アリアは柔らかな声で言った。


ルイジは微笑みながらアリアを迎えた。「アリア、君が何か話したいことがあるなら、いつでも聞くよ。何の話だい?」


アリアは慎重に話を進めた。「実は、最近手に入れた新しい宝石についてです。あの宝石には特別な価値があると考えています。」


ルイジは興味を示し、アリアの話に耳を傾けた。だが、彼の知らないところで、アリアは冷酷な計画を進めていた。彼女は完璧な計画でルイジを殺害し、その遺産を手に入れようと企んでいたのだ。


「それは興味深い話だね、アリア。もう少し詳しく聞かせてくれ。」ルイジはワイングラスを持ち上げた。


その瞬間、アリアは手際よく用意していた小瓶を取り出し、ルイジのワインに静かに毒を混入させた。毒は無味無臭であり、ルイジには全く気づかれることなくワインに溶け込んだ。


「この宝石には、古代からの伝説がありまして……」アリアは話を続けながら、ルイジがワインを飲むのをじっと見守った。


ルイジは一口飲み干し、再びワイングラスをテーブルに置いた。「なるほど、それは実に興味深い。もっと詳しく調べてみる必要があるね。」


アリアは微笑みながら頷いた。「そうですね、ルイジ様。私もさらに詳しく調べておきます。」


その晩、ルイジは突然体調を崩し、苦しみ始めた。彼の顔は急速に青ざめ、息が詰まるような痛みが全身を襲った。アリアは冷静に状況を見守りながら、彼の助けを呼ぶふりをした。


「ルイジ様、大丈夫ですか?」アリアは表情を変えずに尋ねたが、心の中では冷酷な計画の成功を確信していた。


ルイジは息も絶え絶えに、椅子に倒れ込んだ。アリアはすぐに救急車を呼び、必死に助けを求めるふりをしたが、彼の運命はすでに決まっていた。


翌朝、ルイジの死亡が確認された。警察は初めは自然死と判断したが、彼の妹が何か不審な点を感じ取り、再調査を依頼した。


こうして、美しき港町フィレンツェで、冷酷な殺人が完璧に遂行された。しかし、その背後には、アリア・ロッシという美貌と知性を持つ殺人者の存在が隠されていた。


彼女の計画は見事に成功し、遺産を手に入れるための道が開かれたかに見えたが、フィレンツェの静かな夜の中で、真実を追求する者たちが新たな物語を紡ぎ始めようとしていた。

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