異界の絆

追求者

プロローグ

 風が古びた書物のページをめくるように、ゆっくりと街を通り抜けていく。


 その風は、町の喧騒を遠くに残し、静かな郊外の一角へと吹き抜けていった。そこには、古代の秘密が眠ると言われる、神秘的な森が広がっている。木々は高くそびえ、その葉の隙間からは、時折、光がちらりと漏れる。森の奥深くには、誰も足を踏み入れたことのない、禁断の領域があると噂されていた。


 主人公のカイは、表向きはごく普通の高校生だ。しかし、彼には誰にも明かせない秘密がある。


 夢の中で、彼はたびたび異世界へと誘われる。その世界は、魔法が現実となり、空を自由に飛び交うドラゴン、森を守るエルフ、山を掘り進むドワーフなど様々な種族が共存する幻想的な場所だ。カイがその夢を見るたびに、現実世界では不可解な出来事が増えていく。時には、風が書物のページをめくるように、現実と夢の境界をも揺らす。


 ある日の放課後、カイは何気なく選んだいつもと違う帰り道で、予期せぬ出来事に遭遇する。


 突如、立ち眩みが起こったかと思うと、眩い光が彼を包み込む。目を開けたとき、彼は見知らぬ森の中に立っていた。


 耳を澄ませば、遠くから戦いの響きが届く。金属がぶつかり合う音、魔法が空気を震わせる音、そして、空を裂くようなドラゴンの咆哮。


 カイは呆然と立ち尽くす。これはもはや夢ではない。彼は本当に異世界に足を踏み入れてしまったのだ。そして、その瞬間から、彼の運命を変える冒険が、今、始まろうとしていた。

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