『助手席に死んでる』(351文字)

 曇りの日だから空が白くて、遠くの山肌が青っぽくて。ここは丘だから、小高くて、背の高い草がたくさん、枯れながら生えてる。

 小高いから、街がうっすら見下ろせて、風が寒くて肌が冷える。

 トカレフの銃口からは、白い煙が薄くヒュラヒュラしていて、寒そうに見える。寒そうだから、車のトランクへ入れてやった。余った弾倉と一緒に入れてやった。

 助手席には男が死んでるから、寂しくもないはず。

 俺はここで伸びをして、ポケットからライターを取って、火つけてから、シートへ放り込んだ。

 白い火柱がゆらゆらして、黒い煙がどんどん上がっていっては、空と、隙間からの白い日差しに食われていく。

 人の焼けるにおいにカラスが集まってきて、煙の上がる黒い車の周りを取り囲んだ。

 あいつらも寒かったんだなあ。とか思いながら、三十秒くらいそれを眺めてた。

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