第21話

地下道の奥深く、冷たい空気が漂う中で、香織と涼介は静かに足を進めていた。暗闇の中、懐中電灯の光が頼りだった。地図に示された最深部に近づくと、二人の緊張感が一層高まった。


「涼介、気をつけて。何か異常を感じる。」香織は囁くように言った。


「わかった。慎重に進もう。」涼介は前を見据えながら答えた。


突然、前方に人影が見えた。その人物は黒い服に身を包み、顔をマスクで隠していた。香織と涼介は瞬時に身構えた。


「そこまでだ!」涼介が叫んだ。


犯人は一瞬立ち止まったが、すぐに反応し、逃げ出そうとした。しかし、香織と涼介はその動きを阻止するために素早く動いた。狭い地下道内での格闘が始まった。


「逃がさない!」香織は叫びながら犯人に飛びかかった。


犯人は俊敏に動き、香織の攻撃を避けた。しかし、涼介がすぐに後を追い、犯人の腕を掴んだ。狭い通路内での戦いは困難を極めた。


「香織、気をつけて!」涼介が警告する。


犯人は鋭いナイフを取り出し、涼介に向かって振り下ろした。涼介は咄嗟に身をかわし、犯人の腕をねじり上げた。しかし、犯人は力強く抵抗し、涼介を押し返した。


「涼介、大丈夫?」香織が叫びながら犯人に向かって突進した。


「大丈夫だ!気をつけろ!」涼介が応じる。


香織は犯人の背後に回り込み、足を引っ掛けて倒そうとした。しかし、犯人はバランスを崩すことなく、逆に香織を押し返してきた。激しい格闘が続く中、犯人のマスクが外れ、その顔が露わになった。


「逃がさないぞ!」涼介は全力で犯人に立ち向かった。


香織もまた、力を振り絞り、犯人の動きを封じようと必死だった。地下道の壁にぶつかりながら、三人は激しく戦い続けた。


「涼介、これで終わらせる!」香織が叫びながら、犯人の足を掴んだ。


涼介はその隙を突いて、犯人の腕を強く締め上げた。犯人は抵抗を試みたが、二人の連携には勝てなかった。ついに、犯人は地面に倒れ込み、息を荒げながら降参の態度を示した。


「これで終わりだ。」涼介が息を整えながら言った。


香織も同様に深呼吸しながら、犯人の手に手錠をかけた。「もう逃げられないわ。」


犯人は黙ったまま、敗北を認めるように頭を垂れた。狭い地下道内での戦いは過酷だったが、二人は犯人を捕らえることに成功した。


「さあ、真実を話してもらうわよ。」香織が犯人に向かって冷静に言った。


その瞬間、犯人は突然力を振り絞り、激しく暴れ出した。香織と涼介は驚きながらも必死に押さえ込もうとするが、犯人の抵抗は尋常ではなかった。


すると、暗闇の中から急に強い光が差し込み、地下道の入口から数人の警察官が突入してきた。その先頭には、見慣れた顔があった。


「叔父さん!」香織が驚きと喜びの声を上げた。


三田村幸一探偵が、釜山の警察を引き連れて現れたのだ。彼は病院で療養中のはずだったが、事情を聞きつけて釜山に駆けつけてきたのだった。


「香織、涼介、大丈夫か?」幸一は心配そうに二人の様子を見ながら駆け寄った。


「叔父さん、なぜここに?」涼介が驚きの声を上げた。


「お前たちが困っていると聞いてな。どうしても黙っていられなかったんだ。」幸一は息を整えながら答えた。


幸一が指揮する警察官たちは、瞬く間に地下道を制圧し、犯人を取り押さえた。犯人は手錠をかけられ、抵抗することなく捕らえられた。


「これで終わりだな。」幸一が深い息をつきながら言った。


「叔父さん、本当に助かりました。あなたが来てくれなければ、どうなっていたか分かりません。」香織は感謝の気持ちを込めて言った。


「さあ、真珠のネックレスを探そう。」涼介が言った。


警察官たちは地下道の隅々を調査し始めた。しばらくして、一人の警察官が声を上げた。


「ここにあります!」


警察官が指差す先には、隠し場所があり、そこには盗まれた真珠のネックレスが見つかった。香織と涼介は胸を撫で下ろし、幸一も満足そうに微笑んだ。


「これで全てが終わったな。」幸一が静かに言った。


「はい、叔父さん。本当にありがとうございます。」香織は感謝の気持ちを込めて答えた。


「これからはもっと自分たちで解決できるように頑張るわ。」涼介も同意した。


「その意気だ。だが、いつでも助けに来るからな。」幸一は優しく笑った。


こうして、釜山の地下道での激しい戦いと捜査は終わりを迎えた。真珠のネックレスは無事に取り戻され、犯人も捕らえられた。香織と涼介は、幸一の助けを得てこの事件を見事に解決することができた。


地下道の奥深くでの出来事は、二人にとって大きな教訓となり、今後の捜査における貴重な経験となった。三人は新たな絆を感じながら、真実を追求する旅を続ける決意を新たにした。

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