第23話

「着いたな」



 昼過ぎ、リン達は海に面した平地に立っていた。かつて港町があったという場所には何もなくなっており、かつての賑やかさもなく、その光景を見ながらリンはため息をついた。



「こいつぁ、酷いな。俺の故郷を思い出すぜ」

「あなたの故郷も消失したわけですからね。あなたは特にこの光景を見て哀しさを感じると思います」

「そうだな。さて、この辺りで何かねぇか探してぇところだが、手分けして探すかぃ?」

「少々広いですしそうした方が良いですわね。オーマ、あなたもそれで良いですか?」

「構わん。しかし、ここまで広いならば連絡を取り合う手段が必要ではないのか?」

「そのためにコイツらに力を借りんのさ。つーわけで、出てきてもらおうかね」



 リンは夜行の書を取りだし、ページの上に手を置いた。すると、三つの光の玉が浮き出し、それらは三匹の鎌鼬に姿を変えた。



「おう、おめぇら。仕事の時間だぜ」

「仕事かぃ?」

「そうだ。これからこの辺りを手分けして探索するんだが、一匹ずつ俺達についてもらう。おめぇらなら兄妹の匂いを辿って飛んでいけるし、戦いもそれなりにこなせっから問題ねぇだろ?」

「へへ、違いねぇや。んで、どの組み合わせで探索をすんだぃ?」

「末っ子の長女をアイリーンにつかせて、長男が俺、次男をオーマにする。おめぇら、それで良いかぃ?」



 オーマと鎌鼬三兄妹は頷いたが、アイリーンだけは首を傾げた。



「何故その組み合わせなのですか?」

「長女とアイリーンの女同士の方が話しやすいのもあるだろうからな。それと、長男は兄妹の纏め役として俺と話す事が多いから俺と組ませて、次男はどんな奴とも話すのが得意な方だから初めてのオーマと組ませる。その方がお互いにやり易いからな」

「たしかにアイリーンさんと色々お話がしたいかも。アイリーンさんから見た親分さんの姿って新鮮に映りそうだし」

「だろ? それじゃあおめぇら、配置についとくれ」



 その言葉と同時に三兄妹がそれぞれの相方の肩に捕まると、三人は別々の方向へ歩き始めた。



「よし、んじゃあ俺らも色々探すぞ。風一郎かざいちろう

「あいよ、親分。しかし、アイリーンの姉さんと組んだ風花ふうかはまだしも、オーマの兄さんと組んだ風二郎かざじろうは大丈夫かねぇ。たしかにあいつぁ色々な奴と話す機会が多くて人懐っこいとこがあるが、オーマの兄さんは結構冷たい印象があっからな。風二郎の奴でも少し接しづれぇかと思ったんだ」

「かっかっか! 心配はいらねぇよ、風一郎。オーマの野郎もちっと不思議なとこはあるが、決してわりぃ奴じゃねぇさ。俺の勘がそう言ってんだ」

「親分の勘が……へへ、たしかにそれなら心配いらねぇや。親分の勘は富くじよりも当たっからな」

「だろ? んじゃあ、そろそろ俺らも探し物を……」



 その時、リンは辺りを見回した。



「親分、なんか感じ取ったか?」

「ああ。姿は見えねえが、気配を感じる。風一郎、きぃつけろよ」

「あいよ、親分」



 二人が辺りを見回しながら警戒していた時、二人の目の前に何かが現れ始めた。



「これは……」

「み、港町……?」



 そこには人で賑わう港町が出現していた。

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