第8話 ◇様子見3
8
◇様子見3
「その話、今聞いてもうれしいから、一年半前に聞けてたら
涙を流して喜んだと思う。
だって私はあなたにプロポーズしてからもずーっと、離婚してほしいって言われるまであなたのことがほんとに好きだったからねー。
アホみたいに好きだったんだ」
「ン? じゃあ俺と……」
「私ね一年半前に職場の男性から告白されてその少し後に結婚したんだ。
残念……って言っちゃあだめだよね。今の夫に悪いから。
すごくやさしくていい人なのよ。で、今6か月」
「ろっかげつ?」
「うん、もう少ししたら子供生まれるの。嘘みたいでしょ?
私母親になるの。
産まれたら見に来て。
あなたは子供いらないって言ってたけど、今の夫は30才で私より一回りも下で若いのに、子供大好き人間で『貴理子ちゃんと小貴理がいるんだよ、もう食べてしまいそうだよ』って今から子煩悩振り発揮してるわ。
結婚した時からずーっと貴理子ちゃんの子供がほしいって毎日
口癖のように言ってて。
それのお蔭かも。
神様が毎日聞かされてたもんだからぽいっと赤ちゃん授けてくれたみたい。
むちやくちゃ楽しみぃ~」
私は嫌味ではなくて嘗て交際した時から入れると20年近く一緒に暮らした元夫にも私たちのかわいい娘を見てほしいって思ったのだ。
お互いの子ではないけど、長年暮らした私の子だよ、見てほしいわ。
でも私が話をしている間、目の前の男はあっけにとられ戸惑う素振りを
見せ、その内落胆した様子に代わり最後にため息をついた。
「まさか、俺が相手の様子見していた頃に早々と再婚していたとは、
参ったなー。
一本取られたってわけだ。貴理子の魅力を舐めてたんだな俺は」
「私の魅力じゃなくてきっとアレよ。
あなたの気持ちを汲み、ごちゃごちゃゴネずに涙をこらえて
離婚に判をついたからよ。
それだから神様がプレゼントしてくれたのよ」
「そっか、そうだよな。
それで貴理子を泣かせた俺にはこの仕打ちなんだな」
「そんなぁ、たまたまご縁がなかっただけよ。
あなたならまたすぐに素敵な女性が見つかるわよ、私じゃなくても」
「そっか、貴理子はもう他の男の奥さんになってたか。
じゃあ、長居したね。帰るよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます