第27話 レジスタンス
「ん? あれは兵士じゃないな」
グラザムでもない。マントを着けていて、どちらかというと冒険者のような出で立ちだった。
「えっ? あの方は」
「知ってるのか」
リズが突然声を上げる。もしかして知り合いなのか?
「ユート様、あの方はムーンガーデン王国の騎士団長をしていたレッケさんです」
「味方なのか?」
王家を乗っ取られているから軍も乗っ取られている可能性が高い。
敵ならこのままやり過ごした方がいい。
「お父様と共にリスティヒ公爵と戦って下さったと聞いています」
「リズの味方⋯⋯と考えてもいいのか?」
「はい」
「それなら話しかけた方が良さそうだな」
リズは茂みから飛び出す。そして馬に乗った男に向かって語りかけた。
「レッケ騎士団長!」
「ん? あれは⋯⋯リズリット様!」
レッケさんはリズの姿を認めると、急ぎ駆け寄ってきた。
俺は念のためリズの側に行き、何が起きても大丈夫なように警戒する。
レッケさんが味方だと思いたいけど、万が一敵だった場合洒落にならないからな。
「リズリット王女よくぞご無事で」
レッケさんは馬から下りて、リズの前に跪いた。
「こちらにいらっしゃるユート様のお力によって、ここまで来ることが出来ました」
「おお! そうですか! 私は騎士団長をしていたレッケだ。リズリット王女を守ってくれてありがとう!」
「い、いえ」
レッケさんは勢いよく近づいてきて俺の両手を握り、抱きしめてきた。
ここまでリズを心配しているということは、これは味方と考えてもいいのかな?
「なるほど⋯⋯よく鍛えられている。若すぎるため少し疑ってしまったが、リズリット王女を守ったというのも強ち嘘ではなさそうだ」
この人抜け目ないな。
感激した振りをして抱きつき、俺の身体の状態を調べていたとは。
「レッケ騎士団長は何故こちらにいらっしゃったのですか?」
「カザフの村でリズリット王女を見たというお話があったので、急ぎ駆けつけたしだいでございます」
あの場でリズが姿を見せたのは無駄ではなかったということか。だけどそれにしても対応が早すぎる。村人の中にレッケ騎士団長の手の者がいたと考えるべきか。
「レッケ騎士団長にお聞きしたいことがあります」
「はっ! どのようなことでしょうか」
「お父様とお母様がご無事かどうかわかりますか?」
グラザムの言葉から、リズの両親が生きていることは間違いなさそうだが、レッケさんの表情が暗い。何だか嫌な予感がするな。
「⋯⋯国王陛下と王妃様の行方は現在わかっておりません」
「それは既に命を奪われているということですか」
「いえ、お二人はどこかに捕らえられているようです。しかしその場所はわかっておりません。ローレリアから出ている馬車は全てマークしているので、王都にいらっしゃるのは間違いないと思いますが」
「そうですか⋯⋯」
最悪の事態にはなっていないが、予断は許さないといった所か。
「ですが我らはリズリット王女という希望の光を見つけることが出来ました。必ずお二人も救い出すことが出来るはずです」
「レッケ騎士団長、我らとはどういうことでしょうか?」
「今我々はリスティヒの政権を打倒するためレジスタンスを形成しており、是非リズリット様にも参加していただきたく思います」
「ユート様、よろしいでしょうか?」
「リズの思うがままに」
これは俺が決めることではない。ムーンガーデン王国の王女であるリズリットが決めることだ。
「わかりました。リスティヒを打倒し、お父様とお母様を救出するために皆様のお力を貸して下さい」
「はっ! 我が剣はリズリット王女に捧げます」
こうして俺達はレッケさん達が作ったレジスタンスに参加することになった。
「レッケさんに一つお願いがあります」
レジスタンスのアジトがあるローレリアへと向かっている中。三人のレジスタンスのメンバーと合流した後、俺はレッケさんに話しかける。
「なんだい?」
「ニナさんを安全な場所へと連れていくことは出来ませんか?」
ローレリアに到着したら、間違いなく今より危険な状況になるだろう。そのような中で戦うことの出来ないニナさんを連れていくのは得策ではない。
「わかった。近くの街にもアジトがある。そこにその子を連れて行こう」
「ありがとうございます。ニナさんはそれでいいかな?」
「わかりました。私がいても皆さんの足手まといになるだけなので」
「お前達。この子を丁重にアジトへと案内しろ」
「「はっ! 承知しました!」」
ニナさんは二人のレジスタンスに守られながら、俺達から離れていく。
そして俺達は再びローレリアへと足を向ける。
「リズリット王女がいらっしゃれば、我らの士気も上がります。必ずリスティヒを倒してみせましょう」
「は、はい⋯⋯よろしくお願い致します」
ん? 何だかリズが浮かない表情をしているように見えるが気のせいか?
そして日が暗くなってからもリズは元気がないように見えた。
「それでは本日はここで野営をしましょう。明日の昼頃にはローレリアに到着すると思います」
俺達はレッケさんが準備してくれた夕食を食べるが、その際もリズは二人前しか食事を取らなかった。
これはやはり何かあったと考えるべきだな。
「ユートくん、周囲は我らが警護するので、今日はゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます」
そしてレジスタンスのメンバーはこの場から離れたため、この場には俺とリズ、そして既に寝ているマシロとノアだけとなった。
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