第23話 報告
出張中に溜まっていた仕事を何とかこなして、午後の会議までにお昼を食べようと席を立つ。
「神原さん、お昼行きましょう!」
タイミングよく現れた高木と一緒に、最近できたパスタの店に行くとタイミングよく座れた。
「ラッキーでしたね~、もっと待つかと思ってました」
「本当だな、俺Aランチで」
「Aか〜、うーんCランチと迷うな〜やっぱり僕もAランチで」
注文を頼んで、水を一口飲むとスマホの通知に目をやる。
「北海道の件、2課と一緒に進めるから」
「大きなプロジェクト初めてなんで、緊張します!」
「俺も緊張するよ」
「神原さんが?いつも余裕に見えますけど…」
「そう見せてるだけだよ、余裕なんて全然ないから…。さ、急いで食べないと遅れるぞ」
きれいに盛り付けられたパスタを2人でかきこんだ。
会議が滞りなく済んで、次の会議の日程を2課の担当と調整して終わると、16時を回っていた。会議中に見てなかったスマホに2件の着信、一つは麗衣ちゃんで一つはホテルからだった。朝、言い切られる形で終わった会話を思い出して、麗衣ちゃんに電話をかけるのはしんどかった。仕方なく、もう一つのホテルの方に電話をかけた。彼女の上司の真木という人が会いたいと、朝かかってきた電話は、忙しいからと断ったはずなのに…かけてきたのには理由があるんだろう。
電話を終えて、ため息をついた。麗衣ちゃんが1人で式の準備を進めようとホテルに来たが、何も決められず帰ったらしい。ホテル側として、どういう対応をしたらいいかも含めて、一度話をしたいということだった。20時までなら大丈夫というので、会社帰りにホテルに寄って話をすることにした。
片付けられる仕事を終えて、会社を出たのは19時を過ぎていた。外に出ると、街が賑わっていて、今日が金曜だと気づく。ホテルにつくと真木さんが出迎えてくれて、応接室に通された。
「今日西園様がお見えになった時、神原様はご存じないということだったので詳細も含め、ご連絡させていただきました」
「そうですか、連絡ありがとうございます。何も聞いてなかったので驚きました」
「日取りも決まってないので、それからでも大丈夫ですとお伝えしたんですが…お二人でも決めかねることをお一人でというのは難しいと思います」
「…彼女に結婚をするつもりは無いと言ったんですが、それでも諦めないと言われて…」
「お父様からのお話と伺っております」
「親父が勝手に見合い相手を決めて、結婚話を進めて、俺の意見はどこにもありません」
「わかりました。私共は結婚のお手伝いをさせていただきますがお二人の仲やご両親との関係に関わることはできません」
「わかっています」
「ホテルとしては、お父様からのお話ですのでキャンセルもお父様の許可がなければ進んでいきます」
「はい」
「何より西園様が不安を感じながら、話を進めようとしていることも心苦しく思っております」
「…はい」
「神原様ご自身の結婚ですので、神原様のお父様、西園様と連絡を取った際は逐一報告させていただくように担当スタッフで連携を取るようにいたします」
「それはありがたいんですが、ホテルとしては大丈夫なんですか?」
「そうですね、マネージャーが知ったら大変ですが、結婚は片方だけでできるものではないと思いますので」
「…ありがとうございます、あの…」
「はい」
「あ、いえ、それでは」
見送ってもらって、ホテルを出ても、すぐに家に帰る気にはなれなかった。不甲斐ない自分が親父にどう立ち向かえばいいか、どれだけ飲んでも答えはでなかった。
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