第19話 最終試練


 洞窟の静寂が不気味に感じられる中、凍氷龍が語り始めた。


「最終試練の舞台はここから少し離れた、古の氷竜の眠る場所だ。」


 俺たちはその名を聞いた瞬間、緊張が走った。古の氷竜は伝説に謳われるほどの強力な存在で、その名を口にするだけで畏怖を抱かせるほどだ。


「古の氷竜…」アリアが囁くように言った。「本当にその存在がまだこの地に?」


「そうだ。そしてその力を超えた時、君たちは真の力を手に入れるだろう。」


 凍氷龍の言葉に決意を新たにした俺たちは、洞窟を後にし、古の氷竜の眠る場所へと向かった。到着すると、そこには巨大な氷のドームがあり、内部は凍てつく寒さに包まれていた。


「準備はいいか、皆?」俺は振り返り、仲間たちに声をかけた。


「もちろんだ、今さら引けない。」レオンが剣を握り締め、力強く答えた。


「私は準備できています。あなた達と一緒なら、何でも乗り越えられますよ。」アリアが微笑んで言った。


 ドームの中心に進むと、突然地面が震え、巨大な氷の塊が動き始めた。その中から姿を現したのは、まさに伝説の古の氷竜だった。全身を覆う厚い氷の鱗、鋭い氷の角、冷酷な青い瞳。その存在感だけで空気が凍りつくようだった。


「うわ…こいつが古の氷竜か…」レオンが驚愕の声を漏らす。


「気を引き締めて、あの巨体を倒すには連携が必要です。」アリアが冷静に言った。


「分かった、アリアは後方から魔法で支援、レオンは俺と一緒に前線で戦う。準備ができたら、行くぞ!」俺は二人に指示を出した。


 古の氷竜が大きく吼えると、凍てつく風が吹き荒れ、その冷気が鋭い刃のように襲いかかってきた。俺たちはそれを避けながら、戦闘態勢に入った。


「アリアさん、氷のバリアを!」俺は叫びながらドラゴンの攻撃を避けた。


「了解!」アリアが杖を高く掲げると、輝く氷の壁が俺たちの前に現れた。


「レオン、今だ!突撃しろ!」俺はバリアの後ろからレオンに指示を出す。


「おう!」レオンが剣を振りかざし、ドラゴンの足元に駆け寄ると、その鋭い一撃が氷の鱗を打ち砕いた。


「やった、効いてるぞ!」レオンが叫ぶ。


「まだまだだ!この程度じゃ倒せない!」俺も剣を構え、古の氷竜に向かって突進した。


 ドラゴンの尻尾が猛烈な勢いで振り下ろされるが、俺はそれを避け、剣を振り下ろす。刃が氷の鱗に食い込み、冷たい感触が手に伝わる。


「アリアさん、もっと強力な魔法を!」俺は叫んだ。


「分かりました!」アリアが杖を再び掲げ、強力な氷の嵐を呼び起こした。その嵐がドラゴンを包み込み、動きを鈍らせる。


「これならどうだ!」レオンが氷竜の胸に剣を突き刺し、氷の鱗をさらに打ち砕いた。


 古の氷竜が怒りに満ちた咆哮を上げ、その巨大な爪を振り下ろす。俺はその攻撃を受け流しながら、全力で剣を振り下ろした。その一撃がドラゴンの鱗を貫き、冷たい血が飛び散る。


「いいぞ、レオン!続けて攻撃だ!」俺は彼に呼びかけた。


「うん、任せろ!」レオンが剣を振りかざし、ドラゴンの足元を攻撃し続ける。


「アリア、もう一度強力な魔法を!」俺はアリアに叫んだ。


「了解!」アリアが再び杖を掲げ、今度は巨大な氷の槍を呼び起こした。その槍がドラゴンの胸に突き刺さり、さらに深いダメージを与えた。


「やった、これで決めるぞ!」俺は剣を振りかざし、ドラゴンの頭に向かって突進した。


 ドラゴンが最後の力を振り絞って爪を振り下ろすが、俺はそれをギリギリで避け、全力で剣を振り下ろした。その一撃がドラゴンの頭に直撃し、巨大な氷の塊が砕け散る。


「やったか…?」レオンが息を切らしながら呟いた。


「まだ油断するな、奴は強い。」俺は警戒を続けた。


 しかし、ドラゴンは動かなくなり、その巨大な体がゆっくりと崩れ始めた。


「これで終わりだ…」アリアが安堵の声を漏らした。


「やった…俺たち、やり遂げたんだ。」俺は剣を収め、仲間たちと共に勝利の喜びを分かち合った。


「皆、よくやった。これで君たちは氷雪華の力を完全に手に入れた。」凍氷龍が満足そうに言った。


「ありがとう、凍氷龍さん。あなたのおかげでここまで来られました。」俺は感謝の言葉を述べた。


「いや、君たちの努力があったからだ。これからもその力を大切にし、この地を守り続けるんだ。」凍氷龍が微笑んだ。


「はい、必ずやり遂げます。」俺たちは決意を新たにし、新たな試練に向かって歩み出した。

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