第7話 異世界への挑戦

 アルカナスの灰色の巨大な身体が神殿の奥から現れ、その姿が神殿内を圧倒する。灰色の毛皮は光を反射し、まるで銀の鎧を纏ったように輝いている。目は燃えるように赤く、鋭い角は神殿の天井に触れるほど高く伸びていた。彼の存在は圧倒的で、まるで神話の中から抜け出してきたかのようだった。


「これは……まさに伝説の魔物、アルカナス……!」

 アリアが驚愕の表情で呟く。


 俺とアリアはアルカナスの威圧的な姿に一瞬戦慄したが、すぐに決意を固めた。俺は剣を強く握りしめ、アリアは魔法の力を高め、再び戦場に身を投じた。


「愚か者どもが。私の前に立ち塞がるとは命知らずな。」


 アルカナスの声が低く、地響きのように神殿内に響く。


「お前を倒すためにここに来たんだ。俺たちの道を邪魔するなら、全力で戦うだけだ!」俺は剣を構え、アルカナスに向かって叫んだ。


 アルカナスは大咆哮を上げ、その巨大な体を振り回しながら俺たちに襲いかかってきた。その一撃一撃が神殿の床を揺るがし、砕けた石片が飛び散る。その威力は尋常ではなかった。


「健太さん、気をつけて!彼の力は普通じゃない!」アリアが叫ぶ。


「わかってる!でも、俺たちには引き下がる場所なんてない!」

 俺は剣を振り上げ、アルカナスの前脚に向かって突き刺した。


 俺の剣がアルカナスの灰色の毛皮に触れると、剣先が滑るように毛皮に吸収されていく。彼の体はまるで岩石のように頑丈で、簡単には傷つかない。だが、俺はあきらめず、次の攻撃を試みる。


「アリアさん、彼の動きを封じる魔法はないか?」

 俺は叫びながら、再び剣を振るった。


「試してみます!その間少しだけ時間を稼いで下さい!」


 アリアは両手を広げ、集中して魔法の詠唱を始めた。


 アルカナスの目が一瞬赤く輝き、その巨大な角が天井に向かって突き上げられた。俺はその動きを見逃さず、素早く横に飛んで避けた。


「ここだ!」俺は叫びながら、アルカナスの腹部に向かって剣を突き立てた。鋭い刃が毛皮を貫き、深い傷を負わせた。アルカナスが苦しそうに咆哮し、その巨体を揺らした。


「今です、健太さん!」アリアが叫び、彼女の魔法が発動した。彼女の手から放たれた光の鎖がアルカナスの四肢を捉え、その動きを封じた。


「これで終わりだ!」

 俺は剣を高く掲げ、全力でアルカナスの心臓部に向かって振り下ろした。剣が深々と突き刺さり、アルカナスの目から光が消えた。


「やった……!」アリアが息を切らしながら、地面に膝をついた。


 アルカナスの巨体がゆっくりと崩れ落ち、神殿の床に倒れ込む。灰色の毛皮が再び光を失い、その巨大な体は静かに息絶えた。


 俺は剣を抜き、アリアのもとへ駆け寄った。

「大丈夫か、アリアさん?」


 アリアは疲れ切った表情で微笑み、「なんとか。でも、あなたのおかげで勝つことができました。」


「ふん、見事なものだ。だが、お前たちはまだ知らぬ。」


 アルカナスの声が再び響いた。彼は倒れながらも、その目に決意を宿していた。


「この世界の真実を、お前たちはまだ知らぬ。」


「どういう意味だ?」俺は剣を構え直し、アルカナスを睨みつけた。


「お前たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。これから先に待つものは、私など比ではない。」


 アルカナスは苦しそうに笑った。


「それでも俺たちは進むしかない。どんな困難が待ち受けていようと、立ち止まるわけにはいかない!」俺は決然と答えた。


「ならば、その覚悟を持って進むがいい。だが、忘れるな。真実はいつもお前たちの予想をはるかに超えるものだ。」


 アルカナスの目が最後に光を放ち、その体が完全に崩れ落ちた。


 俺達は互いに支え合いながら立ち上がり、神殿の奥へと進んだ。そこには、新たな力と試練が待ち受けているのだろう。しかし、今の俺達ならどんな困難も乗り越えられると信じていた。


 神殿の奥には、古代の英雄たちの魂が眠る場所があった。彼らの力を得ることで、俺たちはさらに強くなることができるはずだ。


「行こう、アリアさん。新たな力を手に入れに。」俺は彼女に手を差し出した。


 アリアはその手を取り、力強く頷いた。「はい、一緒に行きましょう、健太さん。」


 俺達は再び歩き出し、新たな冒険への一歩を踏み出した。異世界への挑戦は続き、俺達の物語はまだ終わらない。未来への希望を胸に、俺達は新たな試練に立ち向かう決意を固めたのだった。

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