第27話 お付き合いの終わり。
真田明奈は、篤川優一から真面目なトーンで「話があるんだ」と言われ、少し身構えた。
それは、1月2日以降の小田美貴の態度が想像とは違っていた為に、また何かの想定外、小田美貴とよりを戻す話を疑ってしまっていた。
篤川優一は、バイト上がりに岩渕剛と越谷桃子という、年上の人と話した事で色々なことがわかったと言った。
真田明奈は「小田美貴にキチンと終わりを告げて、真田明奈と付き合いたい」とキチンと言った篤川優一を歓迎する。
「本当?嬉しいよ優一!」と言って本当に心の底から喜ぶ真田明奈に、篤川優一も嬉しくなって、話を聞いてくれた岩渕剛と越谷桃子に感謝をした。
後は小田美貴に言う日で、長引かせてはいけないが、無駄に焦っても良くないとして、次の水曜日に連絡する事にした。
水曜日、バイトのない篤川優一は、岩渕剛に「これから言います」と報告してから小田美貴に電話をした。
小田美貴は、はじめは明るい声だったが、会話の内容が別れ話だとわかると、すぐに暗くなって、「なんでですか?」と理由を聞く。
そして「それは、真田さんが関わっているんですか?」と聞いてきた。
キチンと岩渕剛達と話した中で、名言化できた理由と、初恋の相手だった真田明奈と再会して、自分の気持ちを再認識して、真田明奈から気持ちをもらった事を伝える。
鈍感不器用で優柔不断の篤川優一だが、キチンとしたのは決して逃げを打つ真似、どうする事の出来ない年齢を言い訳にしなかった事だった。
小田美貴が「6歳差があるからですか?」と聞いたが、「ううん。ゼロではない。でも、俺と小田さんで考えた時、小田さんの初めてのキスの相手もなんでもだけど、初めての相手が俺というのが怖かったんだ。俺なんかで良いのかっていつも考えていたんだ」と説明した。
「俺なんかって、優一さんはなんかじゃない!優一さんがよかったです!」
「ごめんね。ありがとう」
篤川優一はもっと長引くかと思ったが、話はスムーズに終わる。
最後に小田美貴は「3月以降、一度は会ってください。電話だけだと心が切り替えられません」と言った。
躊躇する篤川優一に「真田さんには言いますから」と言われれば、まだ自分だけでは本質に辿り着けない篤川優一は、「うん。わかった」と言ってしまう。
「じゃあ3月以降に、今日までありがとうございました」
小田美貴はそう言って電話を切った。
篤川優一は終わった話をキチンと岩渕剛と越谷桃子、両親、店長に報告をして、翌日、真田明奈と正々堂々と会って付き合う事になった。
岩渕剛と越谷桃子は「お疲れ、断るのも疲れるよな。大事なことはくだらない事を言わずに、キチンと終わらせればいいんだよ」、「そうね。でもキチンと決める事は大事よ」と言ってくれる。
両親はまさか痛い目に遭う前にキチンとするとは思っていなかったので、この展開には驚いたが、岩渕剛達の話を聞き、相談できる年上が周りにいなかった事に納得をして、「キチンと先輩付き合いも大事にしなさい」と教えていた。
まあゴネたのは店長で「えぇ、マジで?小田さん帰ってきたら岩渕くん達を返す予定だったんだけど、ダメじゃん。一緒…無理だよねぇ」と言っていた。
真田明奈は泣いて喜んで「優一!優一!」と名前を呼んで抱きしめてきて、「お祝いしよう?」と言って、2人で夕飯を食べてからホテルに泊まって肌を重ねた。
篤川優一は初めてのことに目を白黒させたし、真田明奈は前の彼氏とは比べ物にならない喜びに目を白黒させた。
「ヤバい、一日中でもしてたい」
「私もだよ。止まらないかも」
これだけで嬉しくて、新しい日々に感謝をする。
次の土曜日、篤川優一は店で会った岩渕剛と越谷桃子にキチンと頭を下げて、「2人のおかげで先に進めました。ありがとうございます」と言う。
これにより店長や岩渕剛が秘密にしてくれていたのに、小田美貴と終わった事、真田明奈が彼女になった事が公然になってしまう。
だが、どの道夕方には真田明奈が骨抜きの顔で篤川優一を迎えに来てバレてしまうわけで、この展開に越谷桃子は「不器用どもめ」と悪態をついていた。
岩渕剛は周りのバイト達に「はい、後で全員の名誉に配慮して説明してやるから追求しない」と言って事態を収束してくれる。
真田明奈は岩渕剛と越谷桃子に挨拶と感謝をし、岩渕剛と越谷桃子は真田明奈に不満は無いので、これから応援してると言ってくれた。
篤川優一には夢のような時間だった。
キチンとした事で、バイト先では堂々と振る舞える気がしていたし、真田明奈との時間は2人で過ごし、飲酒をして、これでもかと愛を深めていった。
1月はあっという間に終わり、2月は岩渕剛が根回ししてくれて、急に土日に休みが取れると、真田明奈と共に泊まりで旅行にも行かせてもらう。
バレンタインデーは真田明奈からのチョコレートに本気で喜び、真田明奈からは「店売りだよ?手作りは自信なくてさ」と言われたが、「そんな事ないよ!嬉しいよ明奈!」と言って感謝を伝えた。
3月は小田美貴の復帰に合わせて卒店をする。
新生活の用意もあるし、辞める人間より、これからも働く人間が優先で、小田美貴のリハビリも考えて通常の卒店より早かった。
残留決定の岩渕剛は「見送る俺の嘆き」と軽口を叩いてから、「俺の連絡先は消すなよ?篤川には頼りになる年上がいない感じだからな」と言った。
篤川優一からすれば、岩渕剛は真田明奈と付き合えた恩人なので、連絡先を消す真似なんてできるわけがなかった。
4月、新生活。
緊張と不安だったが、真田明奈がいる事で精力的に仕事に迎えたし、忙しくても日曜日はデートをして、愛をさらに深めていった。
だが、突然4月の最終土曜日に「優一、一度別れよう」と真田明奈から言われてしまった。
青天の霹靂、篤川優一には何がなんだかわからなかった。
今も肌を重ねて、お互いを求め合い、裸のままベットの上で余韻に浸っていた。
真田明奈は嬉々として篤川優一を求めていたし、受け入れていた。
本当に何がなんだかわからなかった。
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