第8話 俺、完全なる落ち度
「……はぁぁ」
柔らかなクッションに顔を埋めこみながら、俺はぼー……とベットの上に転がる。
今日はお茶会もお出掛けも家庭教師との勉強も特に何も無い。
かと言ってしたい事があるかと聞かれればそんなことも無く、だらだらと子鳥の囀りを聞いたりしながら気ままに考え事をしたりする。
(ゲームのストーリー開始まで残りあと半年か……)
最近の考え事と言えば専らこれだ。
現在接触を果たしたのはヒロインと悪役令嬢と王太子、メインキャラクターはこれぐらいだろうか。
特にヒロインに関してはかなり関わりたくない部類の人間。これからはもっと慎重に行動するべきだろう。うわぁ……考えただけで寒気がする。
(いや、接触しないのは正直難しいだろうな)
ユリアスに突っかかっていたあの様子からみるとまた同じことを繰り返すだろう。
一応きつくは言い聞かせたが俺のいない場所でユリアスと接触するのは目に見えている。絶対あのヒロインならやりかねない。
その為にも俺はできる限りユリアスの側にいるべきなのだ。
「これは仕事が山積みだなぁ〜」
ユリアスのバッドエンド回避の為にも先回りして攻略対象とヒロインのイベントをぶち壊すという役割もある。
それでいてゲームストーリーに巻き込まれてしまわないようにできる限りモブとして動かなければならない。
正直手が足りない。曰く猫の手でも良いから借りたいほどだ。
「せめてあの王太子がさっさと婚約者を決めてくれればユリアスの件はどうにか出来るのになぁ。やっぱりこれって強制力が関係しているのか?」
然程これまで感じてきたことはないがここは『ときラブ』の世界。何かしらの強制力が働き始めていても可怪しくないだろう。
アルバートの婚約者が決まらないのもそのせいだろうか?
ユリアスもまだ王太子の婚約者候補という立ち位置であるし、学園に入学するまでに正式な婚約者になる可能性は十分にある。
「ユリアスとアルバートの婚約を破棄するにはどうすればいいか……兄さんの婚約者になってもらうとか?」
ユリアスとシグルドが婚約……。いやぁ全く想像がつかないな。
「仮にユリアスが断罪ルートに入ったりしたら断罪前に一緒に国外に逃げちゃえばいいか。……ふっ、なんかこれ駆け落ちみたいだな」
そのときは男であることも明かして表立ってユリアスを守ろう。失望されても嫌われても、絶対に。
「――"駆け落ち"……?どなたか好きな殿方でもできたの?でも駆け落ちはどうかと思うわよ」
「え、ユリアス嬢!?」
いつの間にか室内に入ってきていたのか。ベッドの上に寝転がっている俺の真横でユリアスが俺の顔を覗き込んでいた。
「い、いつからそこに……?」
まさか、断罪の下りを聞いてたりしてないよな!?
しかし、血の気の引き顔を青ざめている俺とは対照的に、ユリアスはこてんと首を傾げ「別に今さっき来たばかりよ」と素直に口にする。
(あ、危なかった……それにしても何でここにユリアスが)
「ふふふ、シグルド様が貴方の様子を見て欲しいとお手紙をくれたのよ」
「兄さんが……??」
ユリアスと手紙でのやり取りをしていたなんて、初耳だ。
いや、そんな事よりも絶対これ俺への相談無しにユリアスを呼び出したパターンだろ。
「それで、どこか体調でも悪かったのかしら?シグルド様のお手紙にはルアの様子が可怪しいって書かれていのだけれど」
「私の様子がおかしいですか?」
「えぇ、枕に頭をぶつけたり、顔色を変えながら何かをぶつぶつと呟いたり……って書かれていたわもしかしたら呪われてしまったのかもしれないとも仰っていたわよ」
「――……。」
ここ数日の挙動不審な行動は全て見られてしまっていたらしい。流石に呪いの当たりは恐らくおどけていっていると思うが。
「それで、好きな殿方がいるの?どこの家の方?どこで知り合ったのかしら?」
「い、いませんってば!」
やはり女の子は恋愛沙汰の話に興味津々であるらしい。
俺にはまだそんな感情無いためそんな相手もいないが、ユリアスの追求が暫く続いたのは想像に難くないだろう。
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