エロゲ廃人ゲーマーの転生、ヒロインの座は俺のものらしい〜悠々自適な貴族生活を送る筈がいつの間にか逆ハーになっていた〜

ときたぽん

序章

第1話 俺、エロゲに転生する


 ここはロザート王国


『ときラブ』の舞台となる王国である。


 因みに『ときラブ』とは『トキメキ☆恋と紡がれるLOVEストーリー』という世間ではエロゲと呼ばれる成人向けアダルトコンテンツの事だ。



 そして俺の名前は桜木恋人さくらぎれんと……因みに彼女はいない。


 ではなかった、ルア・イリムバーグという少年だ。

 

 俺はこの『ときラブ』の世界においての一人である。


 どうやら俺、桜木恋人はエロゲの攻略対象ルア・イリムバーグとして転生してしまったみたいだった。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――



 俺は桜木恋人、こんな名前をしているが生涯二十三年間で一度も彼女がいたことはない。


 大学生であった俺は勤めていたバイト先で傷害事件に巻き込まれてしまい、目が覚めたらこの『ときラブ』の世界へと転生していた。


 そして俺はこのイリムバーグ侯爵家の次男にして『ときラブ』の攻略対象の一人に転生してしまったのだ。


 今世の俺はかなりの当たりくじを引いたと思う。侯爵家という高位貴族という生まれにして、前世とは比べ物にならない整った顔立ちを持っていたからだ。


 ふわふわな薄茶色の髪に木漏れ日の様な淡い煌めきを放つ若葉色の瞳、木目細かで滑らかな肌は陶器の用に真っ白で、まるで森の妖精のような姿をしていた。


 ゲーム画面で見ていた絵姿よりも現物の方が一層美しさに磨きがかかったように見える。


「さて、問題はここからなんだよなぁ」


 そう、このゲームのヒロイン、デフォルトネーム"アイナ"についてだ。


 攻略対象である限り彼女との接触は避けられないだろう。しかし、俺はこのヒロインが大の苦手なのだ。とにかくあざとい。行動が破天荒。世間知らず。ゲームをプレイした時に何度寒気がしたことか。


 どうすればこのヒロインと関わらなくて済むか考えた末、俺はをすることに決めた。


 普通の男なら無理だろう。しかし、このルアという少年は実は『ときラブ』では可愛い枠の攻略対象だったのだ。


 ――つまり、年をとっても可愛いままという事である。


 そしてモブ枠になってしまえばヒロインは他の攻略対象に夢中で俺の存在など気づかないだろう。


「ふふ……ふふふ」


 そして俺は普通の貴族生活を満喫してやるさ……っ。ヒロインなんかに振り回されたりはぜってえにさせねぇ。


 ゲームが始まるまで残り七年。

 十五歳になるまでに完璧な女装で挑んでみせよう。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



「旦那様奥様……っお坊ちゃまがお坊ちゃまがっ」


「侍女長、どうしたのだ?」


「お坊ちゃまが『もう男物の服は着ない』と仰られまして」


「「は……?」」


「女物のドレスを作る用に言われたのですがどうすれば……?」


「「……。」」


 慌てた様子の侍女長と言葉を失った侯爵と夫人。そんな彼らの下に当事者のルアが現れる。


「あ、父上母上――」


「「――……。」」


 ワンピース姿で現れた息子の姿に両親はまたしても言葉を失って項垂れた。あまりにも可愛らしく美しいその姿に言葉を失ってしまったのだ。


「……やっぱり、似合いませんかね?」


 いきなり黙り込んだこの二人に上目遣いで俺はそう聞く。予想通り目の前にいる二人は首を横に振って否定の意を示した。


「いいや、似合っているよ。逆に似合いすぎて困るほどだ」


「えぇ本当に」


 間髪を入れずそう応える両親からは親馬鹿らしさを感じ取れ、思わず俺はくすりと笑みを浮かべる。


 その微笑みが決定打だったのか両親は俺の肩をもの凄い形相で掴むと……。


「よし、決めたぞ。女装をして王妃になるのだ」


「え……?」


「淑女教育も受けましょう。そこらの令嬢よりもきっと美しく育つわ」


「え、えぇ?」


 突拍子もない事を言い放つこの両親に俺は間の抜けた声を出す。


(王妃……?淑女教育……?それって……)


 

 ――俺の悠々自適貴族生活、早くも崩壊しかけているんだが。





―――――――――――――――――――――――――――――――――


第一話を読んでくださりありがとうございます。


この先もお付き合いくださると嬉しいです。

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