婚約破棄された公爵令嬢を救ってみた〜いつのまにかヤンデレになってるけど俺のせい?〜

量産型勇者

第1話 公爵令嬢を保護します


「アリスティアーーー君との婚約を破棄させてもらう」


楽しげな祝賀パーティーにそんな言葉が響いた

見ると殿下が婚約者であるはずのアリスティアに、取り巻きや衛兵を後ろに携えながら告げていた


「ーーーなぜでしょうか、殿下」


冷静さを保ちながらアリスティア公爵令嬢は聞いた

いや、よく見ればドレスの端を震える手で掴んでいる


「なぜだと?名誉あるローグレード公爵家の令嬢でありながら、子爵令嬢のルーナを虐めたらしいな?!」


ーーーーー見れば殿下の隣に子爵令嬢がいた


「将来の王妃にそんな汚い女は要らない!よって私は第一王子及び父上不在の際の代理として言い渡す!!」


つまり今殿下の命令は全て勅命に当たる

そんな殿下がアリスティアを罵倒したのだから、周りにいる子息子女も次々に陰口を叩き始めた


ーーーー国王陛下がいない時を狙ったのか....


「将来の王妃の身でありながら、自分より下の身分の子に虐めを?」


「なんてひどい、今までお慕いしてたのに」


「でも証拠はあるのか?」


「た、確かに一応アリスティア様は公爵家だし、いくら王家としても」


誰かが疑問の声を上げると、それを待っていたかのように殿下の取り巻きのうちの一人......確か宰相の息子であるアルセルブは紙を全員に見せつけながら言い放った


「証拠はこちらに!これはアリスティアが取り巻き達に命令した際に使ったと思われる文書です!!アリスティアの取り巻き達が自白してくれました!」


「うわ、まじかよ本当にいじめてたんだな」


「最低な女だな」


「将来の王妃ということで調子に乗っていたのでしょうか?」


次々にそんな言葉が行き交う中、アリスティアは下をうつむいていた


「.........」


果たして本当にアリスティア公爵令嬢はルーナを虐めたのだろうか?

普段のアリスティアを見ていないから主観では言えないが、少なくとも私の情報網では聞いたことがない


「閣下、おそらくあの子爵令嬢....サキュバスの血を引いているかと」


背後にいた分家の人間であるアルカディアがそういった。

おそらくアルカディアが持っている{看破の魔眼}により把握はあくしたのだろう


「.....魔眼か」


「はい、そして殿下をはじめ我々以外は子爵令嬢のとりこになっています」


「そうか」


ーーとなると完全にアリスティア公爵令嬢は冤罪えんざいをかけられている。

国王陛下が戻るまでアリスティア公爵令嬢に何事もなければ、いくらサキュバスの血を引いているとは言え国王陛下は魔力反発の魔導具を持っているし護衛である父上もそばに居るため、冤罪は晴れるだろう。

そうすればサキュバスの呪いも消えて今まで通り次期王妃となる


「ーーー殿下!女神にちかって私はルーナ令嬢に危害を加えていません!!」


「ふんっ!まだ言うか、よろしい....衛兵!!」


そう殿下が叫ぶと衛兵がアリスティアを囲い出した


「なっ...殿下!どうか聞いてください!!」


白々しらじらしいぞ!アリスティア公爵令嬢、これほどの証拠が集まっているのだ!!」


「衛兵!!アリスティア公爵令嬢を監獄へ!」


次は騎士団長の息子であろう子息がそう口にした


ーーーいくら時期国王とはいえ、公爵家の令嬢を監獄に入れるのはまずいだろ


後ろを振り返り、分家の人たちを見ると俺を見て頷いた

あ、早く行けよって顔ですね


「ーーーーーお待ちください、殿下!!」


なんとかこの場をしのげそうな言葉を考えながら俺は殿下の前に立ち、ひざまずいた


「ーーーールシウスか....なんだ?」


「ーー確かに殿下が言ったことが本当なら、公爵令嬢とはいえ行ったことは次期王妃に相応ふさわしくない行動になります。しかし王国に尽くしてくれたローグレード公爵の顔を立てて監獄は控えた方がいいかと」


「勅命だぞ!逆らうと言うのか!!」


ーーーーまたもや騎士団長の息子が邪魔をしてきた


「ーーー私は殿下と話しているのだ。伯爵子息 ごときが口をはさむな」


「なっーー!!」


「血統主義なんて感心しませんね、ルシウス殿」


「貴殿も宰相の息子だからと言って調子に乗りすぎではないか?公爵令嬢を呼び捨てしていたようだが.....いいご身分だな?アルセルブ」


「ーーー今のお言葉、お忘れずに」


翻訳すると「宰相になったら覚えていろよ、あ?」という意味である


「うわ、見ろよ...ルシウスのやつ血統主義だってよ」


「アルキュレム侯爵家もいい噂を聞かないし、ルシウス様も噂通りね」


「アルキュレム侯爵家に嫁ぎたい人なんていないだろうな」


周りの野次馬.... アルキュレム派閥以外の子息子女が次々と小さい声で話しはじめた。


ーーーやっぱり今の若者は貴族子息子女であろうが、血統主義が嫌いらしい

王国の未来は明るいね


「ーーまぁ、待て....先程の話だが俺の願いを聞いてくれれば考えてやるぞ」


「ーーなんでしょうか?」


「俺とルーナを祝福してくれるか?」


「あっ、殿下!!」


そういうと、殿下はルーナ令嬢を抱き寄せた。

待ってましたと言わんばかりのルーナ令嬢の反応を見て俺は思わず、軽蔑けいべつした目で殿下を見てしまった


ーーーーーーこんな時まで愛人とイチャつくのか


「....えぇ、国王陛下が賛同されればアルキュレム侯爵家を代表して祝福いたします」


ここで素直に「祝福します」と言うと、アルキュレム侯爵家が賛同したと世間からは見られてしまう。

そのため俺は上手く話をずらした


「そうか、ではこの件は終わりだ。俺は単にここにいる未来の貴族当主達に知ってもらいたかっただけだ....私はルーナと結婚するとな」


....それだと俺が来なかったらアリスティアは立場がなくなり同級生との婚約が難しくなる....ことを見越していたのか、公爵令嬢に対してよくそんなこと出来るな



「ーーーアリスティア様、我々アルキュレム侯爵家がお守りしますので私たちについて来てください」


「....はい」


そう返事をしたアリスティアの顔は泣いているのか少し赤くなっていた


ーーーー次期王妃のアリスティアだ。どんな刺客が来ようと守ってみせるさ

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