第12話 必殺技
『オカアサンノカタキイイイイイイイイ!!!』
突如塊が先程の母親、
いやそれ以上に肥大化して肉薄してくる。
「くっ!」
『バチュッ!』
麗奈の咄嗟の判断で御札が間に合い、
御札がバリアのように四点で覆った。
「何なのこいつ!?
なんでこんなのがこんなところに!?」
今までにないほど麗奈が動揺している。
確かに途中で大きくなったのは
今までになかった。
だが、少女がこうなる心中も察するに余りある。
きっと、母親を先に対処したことで、
彼女の地雷を踏んでしまったのだろう。
「フーッ、フーッ」
麗奈は鞄の中身を撒き散らして、
手当たり次第に使用している。
「私達もなにか…」
「うん!」
『む』
『ちゅ』
『キイイイイイ!!』
『バチュッ!』
だが塊の勢いは止まることなく、
バリアをぶん殴ってくる。
「ヤバいヤバいヤバい…」
麗奈がヤバいしか言えなくなっている。
「すみれさん」
「うん?」
「こんな状況でするのは不本意だけど…
舌を出して」
「うん!…へ!?」
「え!?」
麗奈も驚いて振り向いている。
「あなたは前を向いてなさい!」
「ひぃん」
「舌…って…その…ディープな…やつ?」
「そうよ」
「そうなのかー」
何かの間違いであって欲しかった。
私も今ここでするのは不本意。
「エッチさと水音を強くしないと、
対処は難しいのだと思う。
私には見えないけれど、
あの麗奈の取り乱しようで、
どういった状況かはわかるもの」
別の部分で取り乱してるとも思うんですけど。
「悪いけど、了承を待つ余裕はないわ」
「わかった…うん…んあ」
「いい子」
『はふ』
お互いに口を開け、暖かい息が当たる。
『れ』
舌先が、当たる。
『る』
少し奥に。
『りゅ』
舌と舌が混ざりあう。
『ずぢゅっ』
キスの要領で吸う。
明らかに、キス一つの重みが違う。
『れる』
『じゅ』
温かい。
霊美ちゃんの匂いがする。
味がする。
一気に体温が熱くなる。
興奮してきた。
『んぢゅっ』
『れるりゅ』
『じゅぱ』
「はっ…はっ…」
「ふっ…ふっ…」
呼吸かキス、
どちらを優先するかという話になってきた。
『ちゅっ』
もちろんキス。
酸素が脳に行き届かなくなり、
意識が薄れていく。
もはや本能でキスしている。
『ぢゅる』
『れろれっ』
「あの…」
「「!」」
「もう…終わったよ…」
「あ…」
確かに、黒い塊は消えている。
夢中でキスしていたようだ。
ディープキスの魔力、恐るべし。
「グスッ」
唐突に水音。
キスではない。
「…ぃ…」
「え?」
麗奈がなにか言ったが、聞き取れなかった。
「ずるいぃ!」
「えっ」
ずるい?。
それは何に対して?。
「私も霊美ぢゃんどギズじだいぃぃ!」
唐突な告白。
「わだしでいいぢゃん!!
ギズして除霊でぎるのだめずんだっだら、
わだじでいいじゃん!!」
これでもかというくらい泣きじゃくりながら、
心中を吐露している。
「取り憑かれたの?」
「ぢがう!」
こんな時でも自分のペースを崩さない
霊美ちゃん流石。
「霊能力の高い人だと、
本当に効果があるか分からないもの」
「別にわだじぞんなだがぐない!」
「あとそうね…
単純にあなたとはキスしたくないかしら」
「うわっ」
「…」
あまりに直接的な言葉に、
思わずうわっとか言ってしまった。
「私のごど…ぎらい…?」
「ええ」
正直、麗奈には同情してしまう。
私も何かの歯車が違えば、
こうなっていたかもしれないから。
「ヒック…グスッ…」
空気が重たい。
「あの…二人は普段どういう関係…?」
「顔を合わせる度彼女が悪態をついてきて、
私がそれをあしらうだけの関係よ」
「ぞんなふヴに思っでだんだぁ…」
「そうとしか思えないわよ」
「霊美ちゃんそれくらいに…その、
麗奈さんは霊美ちゃんのことが好き、
ってことですか?」
「ヴン」
「なら何でそんな態度を…?」
「わがんない、調子にのっでだのがも」
「チッ」
「うえっ」
「どうせ私があの家に束縛されているから、
不遜な態度でも大丈夫だと
高を括っていたのでしょう?」
「…うん」
「言い訳は止めたようね、ついでに言っておくと、
私がそういう状況だったのにも関わらず、
手を差し伸べずに悪態をつき続けた罪は、
あなたが思っているよりも重いわよ」
「…どうしたら許してもらえる…?」
「許すつもりなんてさらさらないわ。
あなたが何をしたって、
あなたに対する印象が変わることも、
変えることもないでしょう」
「…」
完全に沈黙してしまった。
「…まあでも、今回に関しては助かったわ、
ありがとう」
「!」
光明が見えた、そんな顔をした。
「でも、諦める事ね。
すみれさんが大好きという感情も、
変わりそうにないもの」
「ふぇえ」
お先真っ暗、そんな顔をした。
「この人は放っておいて、報告をしましょう、
すみれさん」
「あ、うん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます