Days12 チョコミント
今日も今日とて彼はコンビニでアイスを買おうとしている。
「俺昔から疑問だったんだけどさ」
冷凍庫を真上から見降ろし、透明な戸の向こう側を凝視する。開けたり閉めたりすると冷気が逃げて結果として店員や他の客に迷惑がかかるので、彼も彼なりに気を遣っているのである。
「双子は同じものを与えたほうがいいって言うじゃん。奪い合って喧嘩になるから。でも、俺も双子だけど、正直妹が欲しいものを俺も欲しいと思ったことほとんどないんで、俺は俺、あいつはあいつ、で結構ですって感じ。俺、ぜってーチョコミント食わないし。でもやつはこういう時ぜってーチョコミント」
「男女差じゃないの。これが一卵性双生児だったら、同じものが欲しくなるんじゃないの」
「そういうもんか? 双子じゃなくても、普通の兄弟でも同じものをやったほうがいい、って誰かが言ってた気がするんだよな。片方が楽しそう、おいしそう、嬉しそうにしていると、そっちのほうが良いもののように見えてくる、っていう――」
そこまで言って、彼は「あ」と呟いた。
「俺、ひとつだけ妹と奪い合ったものあるぜ。大喧嘩したことある」
「へえ、珍しいわね。何をそんなに欲しがったの?」
「雪ちゃん」
うーん、それはこの世でひとつしかないからとてもとても困るわねえ、とは言わなかった。なんとなく、冷静にそんなことを言っている場合ではないような気がしたからだ。恥ずかしがったり、照れたりしたほうがいいような気がする。けれど、彼と彼女がわたしをめぐって争うのは当然のことのようにも思われるので、不思議がることではない。
「で、何にするの?」
「塩キャラメルかな。俺、しょっぱくて甘いもの好き」
「えっ、おいしいの? 塩よ、塩」
「分けてやるから食えよ」
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