3. 『天才打者の忘れ形見』(著:砂糖醤油)
<作品URL>https://kakuyomu.jp/works/16817330666933094241
【ジャンル】現代ドラマ 【連載中】247,256文字
【セルフレイティング】残酷描写有り/暴力描写有り
今回は、筆者様から以下のようなご質問をいただきました。
>「天才打者の忘れ形見」という作品で参加させていただいております。
>15話に登場する舘という名前のキャラクターが内心の葛藤と戦いながらダイビングキャッチをする、という内容の話なのですが、舘に対してのリアクションが少ないかな、という風に感じております。
>個人的には盛り上がるシーンとして書いたつもりでしたが、他の人からすれば描写不足などがあってリアクションが薄かったのか知りたいです
とっても具体的な内容で助かります!
(*'∀'人)✨
早速、くだんの15話まで拝読させていただきました。
ってか、この作品……めちゃくちゃ面白いんですけど!( ゚∀ ゚)ハッ!
かつて天才打者として名を馳せた
バットがしゃべるという冒頭の掴みも、序盤でストーリーの方向性を読者に伝える点もばっちり!
シリアスなシーンの中で、コミカルな会話が個人的にちょうどよい。特に入夏の心理描写が丁寧で、尚且つ自分と重なる部分もあり、大変共感できました。
野球素人の私でも楽しめますので、万人におすすめしたい作品です!
(" ⪰ヮ⪯)⭐️ .*・。゚
筆者さまが気にされていた15話ですが、
涙ちょちょぎれたよ(´;ω;`)
盛り上がるシーンとしては、実に素晴らしい出来であると個人的には思います。
では何故、読者から舘に対してのリアクションが少ないのか、という点について個人的な見解を述べさせていただきますと……
おそらく、舘が過去の傷から立ち直る過程に、読者の気持ちがついていけていないのではないでしょうか。
まず、舘というキャラクターは、七話「舘と万田」でキャラクターの紹介があるものの、実際にストーリーへ絡んでくるのは十一話「宿題」からです。
入夏が勇名からの宿題を解くため(このストーリー進行への動機の作り込みが自然でうまいなぁ~!と感心いたしました)、舘に接近していく過程を十三話「誠意とは金ではなく唐揚げ」まで綴られております。
そして、舘が心を持ち直すシーンが十四話「答えと理由」にて描写されているのですが……それまでの経緯に文字数が割かれている割に、一番重要なこのシーンが一話だけで終わるというのは、ちょっと物足りない気が致します。
とあるカク友さんから教えていただいたのですが、一番大事なシーンは、一番文字数を割いて描写する必要がある、と。言われてみれば当たり前ですけどね(^_^;)
なので問題は、十五話ではなくて、前段にある十四話にあるのではないでしょうか。
ちなみに、この十四話「答えと理由」の中で個人的に気に入った描写があります。
▼以下、作中から抜粋。***
舘は別に唐揚げが欲しかったわけでも、見返りとして要求したわけでもない。
その後食べようとした時に向けられた残念そうな視線を思えば、受け取った事を少し後悔すらした。
けれど、悪い気はしなかった。
「お前の事を知りたい」と言う言葉に誠意を感じたからだ。
▲以上。 *****
舘が入夏の誘いに乗って、練習へ来るまでの心理描写は、とても納得がいきますし、感情移入できました。唐揚げってところが個人的にツボです(*´艸`)
▼以下、作中から抜粋。***
「気づいた事っていうか……その。これって結局、ただの練習じゃないですか。別に今のが取れたからって誰かが評価を改めてくれるわけじゃないし、自主練だから注目されるわけでもない。なのに、何でそこまで頑張ろうとするんですか」
その言葉を吐いて、すぐに舘から血の気が引いた。
頑張っている人に対してその言い方は違うだろ。
少なくとも、練習に誘ってくれた相手にかけるべき言葉じゃない。
▲以上。 *****
ここの舘のセリフも、すごく王道というか、誰もが心に抱きやすい考え方かなと思うので、共感を得やすいだろうなと感心いたしました。
その後で舘が自分のセリフに後悔している様子も、ナチュラルですごくいい。
で、これに対して入夏が自分なりの答えを述べます。
▼以下、作中から抜粋。***
「『君はどうして上手くなりたいのか』と。今の俺はその問いに対して正しい答えを出せない。さっきの質問もそうだ。恐らく自分も相手も納得させられる答えを、現在の俺は持ちえないだろう」
だが、と入夏は切り出す。
「けど、俺は白紙が嫌いだ。曲がりなりにも、いつか必ず答えられるように俺は練習をしている。……矛盾しているように聞こえるだろうが、『答えを出したいから』というのが、先ほどの質問への答えだ」
▲以上。 *****
要は、答えを出すために頑張るんだ、という誠意と自分なりの真摯な姿勢を舘に見せることで、彼の心を立ち直らせようとしているのだと思います。
ただ、舘も練習はしているだろうし、頭では理解していてもそれが出来ないから一年も悩んで苦しんでいるわけだと思うんですよね。
それを入夏からたった一度もらった言葉で、その数分か一時間かそこら一緒に練習したくらいで立ち直れるものなら、とっくに立ち直っていたのではないのかしら、という疑問がふっと湧いてきます。
このあと、舘は入夏と練習をして、次の十五話で、トラウマ的な存在である亀津さんと話をしようと踏ん切りをつけます。
入夏から勇気をもらって、恐くて立ち向かえなかったトラウマに目を向けようとするのを描写したかったのだと推察されます。
話の展開も王道だし、十五話の舘の心情を「鎖」に例えるところなんて秀逸で、個人的に大好きです。
▼以下、作中から抜粋。***
人は自らの本質から逃れられない。
どれだけ高尚こうしょうな人物からありがたい言葉を授けられようと、どれだけ親密な人物から情に訴えかける言葉をかけられても、それは「変わった気がするだけ」である。
けれど、変わりたい。
正しくなくてもいい、ちゃんと自分なりに考えた答えを出せる人間になりたい。
踏み出さなければならないのはこの足だ。
引きちぎるべきは泥から伸びているこの鎖だ。
▲以上。 *****
ここで舘が言っているように、人は誰かに何か言われたくらいじゃ変わらないんです。でも、変わりたいと思う気持ちはずっと舘の心にあるんです。鎖を切らなきゃいけないことなんて分かっている。では、それができないのは、何故か?
その答えが微妙に描写されていない気がします。
▼以下、作中から抜粋。***
(ワンバウンドする)
(無茶だ)
(……やってみろよ。そのために練習したんだろ?)
あぁ。やっと、肯定的な声が聞こえた。
▲以上。 *****
ここが一番、舘の心が変わる転換部分だと思います。
でも、性急すぎて、もうワンクッションほしい。
▼例えば、以下のようにワンクッション入れる案。***
(ワンバウンドする)
(無茶だ)
舘の脳裏に、入夏と守備練をした日の光景が浮かぶ。
あの時だけじゃない。
これまでだって自分は、もっともっとたくさんこれまでだって、練習してきたじゃないか。それは一体、なんのためだった?
(……やってみろよ。そのために練習したんだろ?)
あぁ。やっと、肯定的な声が聞こえた。
▲以上。 *****
……すみません。私には野球の練習光景をぱぱっと描写できないので、モノローグみたいなのしか書けませんけど。本当は、練習風景を書けるといいですね。
舘がこれまで泥にまみれて守備練習をしてきた様子や、恐怖で一歩を進めなかった時のことなんかの描写があれば、より舘の心情に寄り添うことができるのではないかなと思います。
十四話のここも、同じかな。舘の心が変わる瞬間の描写が抜けている。
▼以下、作中から抜粋。***
「じゃあ、また何か気づくことがあったら」
「……あの!」
▲以上。 *****
たぶん、舘は怖かったんですよね。
頭ではわかっているけど、身体が交錯事故のことを思い出して、あと一歩が踏み込めない。ある意味、カウンセラーを受けるべき事案だと思います。
だからこそ、心を立ち直らせるキッカケは、もう少し文章を割いて描写されていてもいいのではないかなと個人的には思いました。
例えばですが、最初は入夏の練習を横目で見ているだけだった舘が、毎日毎日、入夏が守備練を一人でがんばっている姿を見て、居てもたってもいられなくなった、という時間的な経過。
舘が本当は何を恐れていたのか、何なら自分の分身と会話するシーンを入れてもいいと思います。自問自答して、それでもやっぱり怖いよ……と言う舘に、そんなら野球なんてやめちまえ、というもう一人の自分。でも、俯こうとした視線の先に、入夏の真っすぐな瞳が飛び込んできて……やっぱり俺、野球が好きだ!……的な。
え、クサイですかね?(;'∀')
まぁ、そのへんは個人によって受け取り方が違うと思いますので、あくまで参考にしてください💦
とは言ってもですよ、自分でこれ書いていて、すごくハイレベルな内容だなーと思っています。
個人的にすごく推したい作品の一つになりました。
砂糖醤油さん、これからも応援しますので、是非がんばってください!
✧*。٩(ˊωˋ*)و✧*。
☆彡 ☆彡 ☆彡
そして今回の内容で、私は今自分の作品に何が足りないのか分かった気がします。
前々から薄々気付いてはいたけれど、自分でもうまく書ききれていないなと感じる部分があって、それがまさに足りないものだった、みたいな。
世界観の説明や、不自然な流れにならないようにストーリーの展開を描写することにおいては、読者を納得させられる力量がある程度ついてきました(たぶん)。
でも、キャラクターの心情の変化について、読者を納得させられるだけの描写ができているか、というと出来ていないなと。
公募での文字数制限や必要な展開、世界観の説明の描写を重視しすぎていて、キャラの心情を削ってしまっている。脚本を書いているのではないのだから、小説では心を書かなきゃ、と頭ではわかっているつもりでも、実際はできていない。だから読者が感情移入できない。これはもう致命的ですね。
今ちょうど執筆中の『CHILDREN』という作品、電撃の締め切りが迫っていたので駆け足で書いていたのですが、締め切りを過ぎた今改めて終盤を書いてみたら、意外とちゃんと心理描写書けるんですよね。なんだ落ち着いて書けば書けるじゃん、とちょっと反省。自分を追い詰めるのも大概にします(笑)。
最後、自分の話になってしまって申し訳ありません。
大変ためになる作品でした。本当にありがとうございます!!!
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