彼女が同じ部のチャラ男にNTRられ、悪びれることなくイチャつく二人に絶望する俺。そんなある日、1つ下の生意気で天才な美少女は「復讐しませんか?」と笑いながら俺にディープキスをした。

田中又雄

第1話 彼女と別れました...。いや、親友にNTRられました。

 ◇9月18日 AM8:25


 いつも通りの朝。

俺はいつものようにカバンから取り出した教科書を机にしまう。


 目の前には別れた彼女とクラス1のチャラ男が飽きもせず、見せつけるようにいちゃいちゃしていた。


 そんな光景にため息をついていると、教室の前の扉が開く。


 そこに立っていたのは...関野せきの リノアだった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093078857305563


「おいおい...あれ...関野リノアだよな...?」

「なんで2年の教室に来てるんだ?」

「近くで見るとマジで可愛いな...」


 注意を引くように数秒扉の前で立ち尽くした後、ゆっくりと教室に入ってくる。


 ざわざわする教室...。

そんな中を我が物顔で通り抜け...そうして俺の机の横に立つと、俺の顔を両手で掴み、無理やり顔を横に向ける。


 そうして...そのまま顔を近づけて...ディープキスをかますのだった。


 それはわざと元カノとNTRった男に見えるように...。


「!!//」


 クラス全員がその瞬間が見届けたのを確認すると...ゆっくりと唇を離す。


「...先輩...私と付き合ってください」


「...お、おう...」


 その瞬間、教室から割れんばかりの歓声が広がるのだった。



 ◇7月25日


 俺の名前は三好みよし けん、17歳、高校2年生。

野々宮ののみや高校に通っており、探偵部に入っていた。


 見た目は中の中、勉強は中の下のよくいる高校生だ。


 しかしながら俺には大好きな彼女がいる。

付き合ってもう3年になる彼女...榎田えのきだ 美也みやだ。


 中2の春に告白し見事成功。笑顔がかわいくて愛想が良い子。

クラスでも一番かわいいと噂であり、俺とは少し不釣り合いな彼女。

しかしながら、彼女は一切そんなことは思ってないらしく、いつも「大好きだよ」と言ってくれる。


 そして、同じ高校を受験し、うちの高校は絶対に何かの部に入らないといけないという校則があったため、なんとなくで二人とも探偵部に入った。

そうして、今も仲良くしておりきっとこのまま高校卒業後も付き合って、いつかは結婚するんだろうななんて考えていたそんな矢先だった。



 ◇8月1日 13:30


 夏休み中の出来事だった。


 お婆ちゃんが亡くなったため葬式に参加していた俺。

てっきり、もっと時間がかかると思っていたのだが、家族葬ということもありあまり時間がかかることなく終了し、早めに家に帰ることができた。


 彼女には「今日は部室に行かない」と言っていたものの、早めに終わったので暇なので探偵部に行ってみることにした。


 そうして、いつも通りノックすることなく扉を開くと...そこにいたのは彼女と最近探偵部に入った同じクラスのチャラ男の後藤ごとう与一よいちだった。


 いや、正確にはそこにいただけではない。

二人はキスをしていたのだ。それも...深いほうのキス。


 こいつは決して良い評判は聞かない男だった。

しかし、この居心地の良い探偵部の部員が規定を満たすために彼女が頭を下げて入ってもらっていた。


 俺がいる前でも彼女にちょっかいをかけており、正直いけ好かない奴だとも思っていたが、彼女との絆があれば大丈夫だと...そう思っていた。


 焦り始める彼女と、むしろ待っていたといわんばかりににやつくチャラ男...。


「...何...してんの?」


「え?wみりゃわかるっしょ?wディープキスwてか、マジで気づいてなかった感じなん?w俺とこいつの関係w」と、まるで物を差すようなその言い方をしながらそう言った。


「何...が?」


「二人しかいないこの探偵部wとかいう部活に俺が入った時点で気づくと思ったんだけどなwこの部室でももう何回もやりまくってたんだけどなwそしたら、こいつ俺にメロメロでさw」と、無理やり肩を寄せるが一切抵抗することのない俺の彼女。


「...なんだよそれ」


「まぁ、ばれちゃったからもう今日からは隠すのやめるわwあと、この部活もやめるからwんじゃ、ばいばーいw負け犬の三好くんw」


 そのまま、無理やり連れていかれる彼女。


 呆然と立ち尽くす俺...。

起こったことが理解できなかった。

夢であってくれというはかない思いなど届くわけもなく...。


 涙は出なかった。

だって...だって...。


 けど、本当の地獄はそこからだった。

 


 ◇9月9日(月)


 夏休みが明けると、二人とも同じクラスということもあり、堂々といちゃつく二人。全員が見ている前でキスをすることすらあった。


 最悪なことに俺の席は美也の後ろであり、前を見ると自然と視界に入ってします。


「なぁ、美也w俺にキスしろよ」


「...うん」


 そうして、ついこの前まで彼女だった美也が...くそ野郎にキスをする。

目を閉じても嫌な音が聞こえる。


 見せつけるように、わざと聞こえるように...、朝も昼ごはんも隙があれば公の場ということもわきまえず、そういうことを繰り返すのだった。


 心が引き裂かれるようになり、けどいつしかそんなことも感じなくなってきていた。


 けど、そんな状況に同情の目を向けられることもあったが、元々不釣り合いな俺がクラス1かわいい女子と付き合っていたという嫉妬から、嘲笑を受けることが多かった。


 地獄のような状況の中、俺はどんどんと心を閉ざしていき、教室では一言も話すことがなくなり、放課後は部室に籠るようになっていた。


 ここだけが学校の中の唯一の居場所だった。


 しかし、不幸は続くもの...というより必然なのだが、探偵部の部員は俺一人となったため、基準を満たしていないため来月には廃部の予定。

そうすると、どこかの部活に所属しないといけないのだが、高校2年の途中から部に入ったところで迷惑でしかないのは間違いない。

いよいよ、学校のどこにも俺の居場所はなくなる...。

そう思っていた時のことだった。


 今から部員を集められるわけもないことはわかっていたので、部室を明け渡すため本の整理をしていると、突然ノックをされる。


「...はい」


「失礼します」と、きれいな声がドアの奥からしてきた。


 そこに立っていたのは1つ下の後輩である、【関野《せきの》 リノア】だった。


 関野リノアはうちの学校でも一番といっていいほど有名な女子だ。


 その可愛さもさることながら、圧倒的な頭脳が有名であった。

しかも家がお金持ち...。

しかし、あまりにも恵まれているせいか、あるいわ可愛すぎて頭が良すぎることから悪いうわさもちらほら聞こえてきた。

人を見下したりとか、馬鹿にしたり...そういう女の子らしい。


 そんな超有名人が廃部寸前の部にいったい何の用なのだろう。


「...部長の三好みよし けん先輩ですよね?」


「...そうですけど」


「噂はかねがね」


「...噂?」


「付き合っていた彼女を金髪色黒同級生にNTRられた...とw」と、堪えきれず笑うくそ女...。


 ...思わずこぶしを強く握りしめる。


「...だから...なんだよ」


「悔しくないですか?惨めじゃないですか?」


「...そりゃ...悔しいに決まってんだろ」


「では、復讐をしませんか?」


「...復讐?」


「されたことをそのままお返しするんです」


「...よくわからないんだが」


 そういうと、彼女はどんどんと俺に近づいてくる。

そして、そのまま壁ドンをして、ディープキスをした。


「...んあっ!?//」


 そうして、少し距離をとると悪そうな笑みを浮かべながら「こういうことです」というのだった。

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