第6話
ここは、海に近く海産物が美味しいことで国内の人間には有名な村である。
かなり首都から離れていて、田舎の村なのだが、ここには適度に観光客などの来客がある。
その理由は、ここが国境近くだからである。
近くにある大橋を渡ることで、海の上に作られた隣国へと行くことが出来る。それで、旅の休憩などに利用されることが多く、宿屋などが特に発展している。
旅の休憩などに利用されることが多く、宿屋などが特に発展している。
しかし、それに合わせてモンスターに関する悩みも増える。例えば、橋近くにモンスターが住み着いてしまった、など。
なので、それらを解決するギルドも、地方ながら立派な建物だった。
ララクとゼマは、村に帰ってくるとさっそくギルドに入って、クエストの成功報告をしていた。トライディアの死体は、解体班にすでに受け渡し済みである。
ギルドはレトロな木造の内装で、軽く食事もできるので、テーブルがいくつか置いてある。酒場のようになっており、冒険者以外にも訪れるので、旅の者と異文化交流が出来る場所にもなっている。
現在は昼過ぎということもあって、他に人はいなかった。
ララクとゼマは、受付兼ギルドマスターの中年の女性と話し込んでいた。
「それじゃあ、解体した肉で料理を振舞うよ。それで、せっかくだから他の村人たちにも食べさせてあげたいんだけどいいかい?」
話はさっそく、トライディアの肉をどうするか、という内容に入っていた。ゼマが開口一番、その話題を切りこんだからである。
「ぜーんぜんいいよ。ぱーとみんなで飲もうよ」
ゼマは両手を広げた。彼女は食べることも好きだが、どちらかというと酒を飲むのが好きなのである。トライディアの肉は酒が進みそうだと、倒した段階から考えていたのである。
「ありがとう。それじゃあ、ここで村人集めて鹿肉パーティーだね。ちょっと準備に時間がかかりそうだから、ゆっくりしていって。
これ報酬金」
大量の金銭が入った布袋を、ギルドマスターの女性はカウンターに置いた。これで心行くまで、休んでいって、ということだろう。
「こんなに……。ありがとうございます」
相場より高い気がしたが、ララクはご厚意だと素直に受け取った。その分、この村に落としてあげればいいと思ったのだ。
それに、旅の中継地ということで、羽振りがいいのだろう、とも感じていた。
「いいのいいの。あそこはさ、外国の人もよく行く場所でさ、この村の売りの1つなのよ。ほんと、こんな一瞬で解決してくれるなんて、思ってもみなかった」
今回のトライディアに要した時間は、実は2時間にも満たない。村の近くが指定地だったということ、モンスター側から姿を現しバトルが長引かなかったこと、そして帰り道が一瞬だったこと、などが時短に繋がったのである。
トライディアにはここ一週間ほど悩まされていたようで、ギルドマスターは大いに感謝しているのだ。
依頼人の釣りが大好きドンジも、感激することだろう。
「そうだったんですね。早急に解決できて良かったです。
それじゃあ、ボクたちは宿屋で休んでいます。
鹿肉パーティー、楽しみです」
ララクは丁寧に喋った後、ニコッと笑いかけた。
それがギルドマスターのハートをわしづかみにした。
男性として、ではなく子供、いやペットを愛でる感覚に近いだろうか。見た目と戦闘力のギャップ、そしてそこにさらに礼儀正しさが追加されるので、ギルドマスターには魅力的に感じたのだろう。
冒険者パーティー ハンドレッドの2人は、報告を終えたのでギルドを後にしようとした。
そんな時、ギルドの出入り口の扉の奥から、話し声が聞こえてきた。
ララクはまず来客を入れてから帰ろうと、少し離れた場所で立ち止まる。
そして扉が開かれると、そこから5人構成の冒険者パーティーがやってきた。
その5人を見て、ゼマはなんのリアクションもしなかった。仕事にやってきたか、移動中の冒険者だろうと軽く予想してそれで終わった。
しかし、ララクは違った。
そのメンバーを見て、背筋をパンと張らせて、マルッとした目をさらに見開いた。
「皆さん、お久しぶりです」
ララクは驚きながらも、すぐに挨拶の言葉を述べた。
彼の目の前にいたのは、かつて自分が所属して戦力外通告という追放を受けたパーティー、「風心雷心」だったのである。
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