実力主義の学園で無能な俺が隻腕で最強ということがバレた..!
りと
第1話 最悪な実力主義の世界
この世界は、実力主義の世界だった。
この世界では実力が高ければ高いほどその生物の価値は高まっていく。
そして実力と言っても様々で、戦闘分野だったり、頭脳の方だったりと......様々なのだ。
だがそんな世界では平等なんてありゃしないだろう......
「才能のある人間からしたらこの世界は万々歳だろうが.....もちろん、そうじゃない人間だってたくさんいる」
そう、それこそが俺.....無能の烙印を押されている、最弱な人間だ。
無能な人間には人権すら与えられない、それがこの世界なのだ。
だからこそ俺は今......虐めを受けていた。
俺のような虐めをされている人はもちろんたくさんいる....だが、そんなのは問題にはならない。
だってこの世界じゃ......強い奴が正義なのだ、だからこそ政府はこれを問題とすら捉えていないのだ。
「ったく......随分とやってくれたよなぁ」
俺は散々殴られて、蹴られて体を持ち上げて...
「ふぅ......まぁとりあえずラーメンでも食べにいくかぁ」
そうとりあえずは飯なのだ、とりあえずはラーメンなのだ。
だって、この島じゃラーメンというのは物凄い絶品なのだ。
だからこそハマってしまうのは仕方がないとも言えるだろう。
「やっぱ虐められて疲れた後は.....食事だよなぁ??」
あぁ.....ほんとに早く食べに行きたい。昼頃にラーメンのチラシを見て授業中もずっとずっと食べたかったのだ。
だからこそ俺は、ラーメン屋に向かおうとしたのだが......
「はぁ......またあなたはラーメンを食べに行くのね」
声をかけた方に振り向くとそこには....呆れたような顔をした赤髪の少女が立っていた。
「......普通、虐められた後は食欲なんて失せると思うのだけど?」
「何を言ってるんだお前は....虐められた後だからこそ食欲が増すんだろう?」
俺は意味がわからないことを言うこの少女に向かって、言う。
「ラーメンっていうのはいいぞ?....別に噛む必要なんてない.....ただ吸うだけで美味しい美味しい麺が味わえるんだ。そして追加の野菜やチャーシューなどで体力だってすぐに回復するんだ」
「実際それであなたは次の日には怪我という怪我はなくなってるのよね.....ほんとに怖いわ、あなたという人間が」
この少女と話している最中に.....俺はとある物を取り出す。
「とりあえず.....これ、吸って良いか?落ち着かなくてなぁ」
「.......ヤク中はおすすめしないわよ」
「すげぇ誤解すんじゃねぇよ.....あくまでこれは、回復手段にすぎないんだよ」
「......つまり、気持ちよくなって回復するってこと?」
「何でそうなるんだお前は.....そんなもんじゃねぇよ、これは」
これを吸おうとした瞬間.....この少女の手が俺に伸びてきた。
奪われると察知した俺は、瞬時に対応し、少女の手を受け止めた。
「......ほら、すぐ隠そうとするじゃない。貴方。別に何にも違法してないんだったら見せてくれても良いと私は思うのだけど」
「こういうやりとりは何回もしたわけだが.....結局お前はそれを学校側にいうことはしない。優しい奴だよな?」
そういえばさっきから「この少女」と言われているこいつの名前は「リフォン」.....らしい。
こいつは戦闘で言えば大した実力はないわけなのだが.....頭に関しては一級品だ。
勉強なんてしてないくせにいつもテストは満点を取ってくるし、チェスや人狼ゲームなど、そういう類のこともお手のものだ。
「まぁ.....貴方とは無駄に付き合いが長いからね、腐れ縁ってやつかしらね」
「だけど、そんな俺と話していたらいつかお前もこういう目に遭うかもしれないぜ?」
「出来るやつがいればの話だけどね.....私はこの卒業直近のこの学園で、私はSクラスだもの....私に歯向かってくるやつなんてほとんどいないわ」
そう、さっきリフォンが言っていたSクラスというのは、言ってしまえば俺たちが通っている学年の強さ順だ。
強い方からS,A,B,C,D,E,Fそして....最弱のGクラスということになっている。
そしてリフォンは3年間不動のSクラスに在籍しているというすごい優秀な奴だ。
「だけど.....あなたが虐められている原因はあなたがよく知っている。そうでしょ?」
そう、俺は.....ゴミと言われている最弱のGクラス......なのだ。
だからこそ、虐められているというのはもはや当たり前のことだ。
「.....そうだな、俺はこの学園でゴミといわれる存在.....だがお前はあの学園にいけるという、俺とは真反対の人間だもんな」
この世界には、誰もが入学したいと願う学園がたった一つだけある。
だが......入学の条件があまりにも困難すぎるためか、入学できる生徒はほんの一握りだ。
頭脳、そして戦闘能力のどちらかが秀でているか、それとも片方がよっぽど優れていないと不可能なのだ。
そしてその学園に入るためには、Sクラスにいなきゃいけないわけなのだが、この目の前の少女は軽々と入っているのだ。
「えぇそうよ、もはや私はあの学園に行けることが決まっているようなもの.....そんな私が、そんなことされるわけがないのよ」
「だがお前は頭脳が優れているというだけ.....戦闘能力はそこまで高くないだろう?」
「まぁそうね......悲しいことに私の戦闘能力はそこまで高くない.....だけど、危機察知脳力はあるから大丈夫よ.....それが頭脳派だもの」
頭が良いからこそ.....たとえそんなことを企てる奴がいてもすぐに気づける.....ということを言いたいのだろう。
「そんなことより、あなたはこれから先の人生をどう生きるつもりなの?....この世界は弱い者から死んでいく、そんな世界なのよ?」
「その時はその時だ.....生きてれば良いんだよ」
そして俺は、吸っていたそれをやめた。
「......この世界であなたのようにのんびりとしている人間なんてそうそういないわ.....だからこそ、私は少し考えていることがあるのよね」
「へぇ.....何を考えているというんだ?」
「それは.....あなたが途轍もない実力者であるという可能性よ」
ふざけているのかと思ったが.....どうやらリフォンは真面目な顔でそんなことを言っている。これはこれは.......
「この世界じゃ.....みんな自分以外のことは敵視しているわ。まぁ.....それが政府の目的とも言えるけどね。だって、自分以外の人を気にする余裕なんてないもの。だけど.....あなたは違う。」
「まぁ俺は最弱だからなぁ.....いちいちそんなこと気にしても仕方ないだろ?」
「仮にそうだとしても.....少しでもましになるように努力をするはずよ。あなたにそんな気はあるのかしら?」
「んまぁ......自分のためだとか、そういう考えはやめたんだよ」
「はぁ.....なんかもういいわ、めんどくさいし」
そう言って、リフォンは俺に向けて背を向けた。
「とりあえず、私は帰ることにするわ......精々、死なないように頑張りなさい」
そうしてリフォンは俺のところを去っていった。
厳しそうに見えるクールな彼女なわけだが.....仲良い人にはなんやかんや優しい少女、リフォン。
「まったく、素直に生きてくれって言って欲しいもんだよな」
俺は苦笑をして......この場を去るのだった
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