18話 学修 続、皇法国に棲息する危険生物②
神官の一人が責任を感じお通夜ムードになっている中、俺は空気を読まずに
猫については動いている物に全力タックルしたり恐ろしく鋭利な爪で金属板等を引っ掻きたがるはた迷惑を通り越した騒音生物らしい。
但しこちらから攻撃を仕掛けなければ爪での攻撃や噛み付きはしないとの事。
爪で云々の話をしたとき何名かが思いだしたのか渋い顔をした。
続いてヒヨコのことだが…ロクでもなかった。
成長するまでの期間は4ヶ月。
生まれて4ヶ月間はひよと呼ばれるらしいが、その間の姿は人面ヒヨコらしい。
体は産毛に覆われ可愛らしいが顔がしょぼくれたおじさんらしい。
例外なくしょぼくれたおじさんらしい。
鳴き声は「はぁ…」とか「ほぅ…」とか「ヴァ゛~」というなんか、うん。
途轍もなく厭な鳴き声らしい。
そして其奴らは虫や野菜クズを億劫そうに食べるらしい。
もう聞きたくなかった。
成長したら大半は普通の大きなニワトリになるらしい。
稀に大軍鶏(風貌からして恐らくはそう)がいるらしいが、まあ、普通。
大軍鶏は一蹴りで木を折るらしいが、神官達の敵ではないらしい。
いや、貴方達が敵わない相手だとしたら、それ災害クラスですよね?
時折ちょこっと起きるスリリングな船旅ももうそろそろお終い。
港町とその先に白亜の城が見えた。
いや、城砦化した教会?
モン・サン・ミッシェルのような…まあそんな感じか?
表現するには語彙力が足りないのが残念だ。
「今回はかなり危険な事もなく無事に渡航できたな」
「海鳴り婆が居ただろ!」
「襲いかかってこなかったから問題ないだろ。俺なんか前々回海竜と風竜の喧嘩に巻き込まれて船が大破寸前までいったんだからな!?」
「あー…うん。あれお前の時だったのか」
もしかして大陸間の移動って、遣隋使時代レベルの成功率とか言わないよな?
それでも成功率7〜8割だから良いかもしれないけど。
船がゆっくりと港へ入る。
そして人々が口々に
「えっ?今回無傷!?」
「何だよ本物の聖人でも乗っているのか!?」
とか言っているのが聞こえる。
いや、確かに聖人は結構乗ってますねぇ…しかし教会内部でも偽物がいるのか?
そんな事を思っていると、
「馬鹿野郎!今法国と皇法国の聖者様方が乗っているんだぞ!?聞かれたらお前等全員的当てゲームだぞ!?」
かなり物騒な窘めを受けていた。
船を下り通りを馬車ではなく歩車と呼ばれる町中用の全自動バスのようなものに乗り込み港町を進む。
「神子様。このまま皇城へ向かっても宜しいですか?」
「私は特に問題ありませんが、皆様方は」
「私達神官職は問題ありません」
そう即答されたら僕から言うことは何もない。
「ではそのように」
皇法国聖者のエキメウスがそう言って一礼したとき前方に何か大きな物が突進してきた。
ドンッと大きな音と共に「ヂュイッ!?」と鳴き声がした。
「ああ、当たり屋のオオスズメですね。少し出て来ます」
エキメウスがそう言い、歩車の外へと出て行った。
直後、
「おぅテメエこら当たり屋なんぞしおってからにテメェがあたった歩車には聖職者がわんさか乗ってんだぞ!?オゥ、そのくちばし金属錠で鳴けんよう封じてやろうか?それとも何か?俺らに喧嘩売りたくて当たってきたんかい!俺らのシマ荒らしに来たっちゅう事はテメェ等のシマ荒らされても構わねぇって事だよなァ!?」
「ッヂュウッ!?」
「おう、助けを呼べや。ちょうど宴を開こう思ってたんでな。肉が足りんから狩りをしよう思ってたが…手間、省けたわ」
「ヂヂヂヂュゥゥゥッ!?」
「どしたオウ、早く鳴いて助けを呼べや。ほれ、呼ばんか!」
甲高い鳴き声が響いたが、オオスズメは1羽も現れなかった。
「…なんだお前、あちらさんにも迷惑掛けた個体だったんか。なら仲間に見捨てられてもしゃーないな…まあ、最期に俺らの糧になって罪を償うのも良いな」
「ケッ!?」
断末魔の悲鳴なのか悲鳴を上げかけたかと思ったらカクンと崩れ落ちて収納されてしまった。
「───皆さんお騒がせしました。それでは皇城へ参りましょうか」
ええええええ?
戦場で話したテリトリー云々含めた一連のやりとりの意味は?
というよりも助けを呼んだのに来ないって事もあるのか…
「あのオオスズメはハグレ個体で恐らく群の中で何らかの問題行動を起こし追い出されたのでしょう。
その場合はあのように助けを求めても仲間はやってきません」
俺の疑問を察したのかラナがそう説明してくれた。
「ここは昔からの港町。言ってしまえば人のテリトリーでありある程度人のルールを守ってもらわねばならないのです。
ドラゴンですらある程度は守るのにオオスズメが守らないどころかチンピラのようなことをする。それは粛正対象です」
ラナがそう言うとエキメウスがやってきた。
「そうは言っても一般の方々にとってオオスズメは脅威です。ああやられたら数日分の餌を渡さざるを得ないでしょう。
ただ、自ら当たりに来たのでかなり手慣れた個体だと判断し私が動きました。
恐らく周辺に似た個体が潜んでいると思いますが…食材にはなりたくなかったのでしょうね」
フワリと優しい微笑みを浮かべながらそう言った。
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