第十三話 合同実習
入学して1ヶ月、学園での生活にも慣れてきたころ。
「今日は別クラスも交えて3人ペアの合同実習を行いまーす」
授業開始、教室へと入ってきた片群先生からの第一声はなんとも予想出来ないものだった。
「別のクラスなんてあったんだね」
「んまぁ、ここ学園やしな。学舎が広い分、他の生徒との交流も少ないんやろ。それだけや無い気もするけどな」
「と、言いますと?」
「ほら誰かさんが最初突っかかってきたやろ〜?身分や見た目で差別する奴なんておらん方がおかしいわ。やから別クラスと別けとんのやない?」
聞こえるように喋る彼は怖いもの知らずなのだろうか。
「それは俺の事か?」
ほら来た。
「事実やろ?なー先生」
「まあ、問題児や訳ありを集めてる事は否定しない。1箇所に集まっててもらった方がこちらとしても動きやすいからな」
「な?」
「チッ…」
舌打ちをしながら先へと戻る。一触即発の雰囲気があったが、彼が引いてくれたので良かったと言うべきか。
それにしてもこの間の初任務の時からか、彼から滲み出ていた自信やオーラを感じなくなった。元気が無いと言うべきか。
「合同実習だがペアに別クラスを交えなくてもいいからな。三人組を作れないチームは別クラスを交えて作れ。以上、ペアができたチームから“転移門”に集合だ」
そう言うと先生は俺たちを教室へと残し、出て行った。
「どうするあと一人?ってあれ???」
横を振りむ行くと居ると思っていた人物がいなかった。
「みこっちゃ~ん♪一緒にチーム組まへん?」
どうやらもう誘いに行っているようだ。
「別に組んであげてもいいわよ」
「おしゃ、これで3人揃ったわ。行くで陸朗」
「はーい」
「いい?仕方なくだから。たまたま他に組む人が居なかっただけ」
「はいはい、ボッチやったんやろ?そんな見栄張らんでもええで。俺は分かっとる」
「アンタ…本当にしばくわよ…」
無遠慮と言うかなんと言うか…律は恐れ知らずだと改めて感じる。
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・転移門
ど◯でもドアの事。簡単に言うと、任務書類に魔力が込められていてその任務を受注した時点でその紙が扉を開く鍵になるらしい。詳しくは理事長しか分かりません。
任務書類を片群先生から貰い転移門へと進む。
転移門から外へ出ると見慣れない街の風景。自身がタイムスリップしたかのように錯覚する。
「ここって…長野県!?」
任務書類に記された地名を見て驚く。
「見てみぃ!これは観光マップで見た事あるわ!木曽の大橋!」
「立派だ…」
「はしゃいじゃって…子供みたい」
その言葉にハッとし咳払い。気持ちを切り替えて任務書類を注視する。任務書類には悪魔の目撃場所が記されていた。俺たちはどうやらその場所に最も近い街へ転移門が繋がったらしい。近いと言っても数十キロ離れてますけど???
「律〜目撃場所まで移動するぞー」
「ま、待ってや!まだお土産選んでへん!!」
そう駄々をこねる律を藤波さんと2人で引っ張り移動を開始する。他クラス合同と言っても任務の内容は同じでは無く、別々の派遣先らしい。
山道を歩く事数時間…森森森…あたり一面森だらけ。なんか最初の任務も森だった気がする。
「なんで森が多いか、先生に聞ぃたことあるんやけどな「1年の内は魔術の簡略化とコントロール。冷静に状況を判断して、悪魔を確実に滅する事を意識する事。悪魔は森だけじゃなく街にもでるが、街の任務は2年になってからだ。街で大掛かりな魔術を使うと言い訳が面倒だが森ならその心配も少ないからな」だそうや」
「ま、理にかなってるわね」
「みんな止まって…」
悪魔の気配に先頭を歩いていた俺は動きを止める。
「俺が前衛、後衛は律に任せる。藤波さんは俺のサポートよろしく」
「うぃ♪」
「分かったわ」
前に飛び出し肩から下げた袋から刀を取り出す。悪魔が俺に気づく前に首を薙ぎ払う。
「ギギィ…?」
(…!?こいつって…)
俺が驚いたのはこの悪魔は通常の下級悪魔と違っていたから。首を切り離してもすぐには消えず、残り続ける。それは他の場所から魔力を供給されているから。
つまり…
(この森の何処かに大悪魔(おおもの)がいる!?)
その考えに至った時、背後に立つ大きな魔力、気配に気がつく。
「しまっー」
ボンッ!!
回転。視界が勢いよく宙を舞った。俺は受け身の体制をとりながら木々に打ち付けられる。
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