第17話 きらびやかな宮廷
馬車は宮廷の入口である金色の巨大な門の前に止まった。門は巨大さもさることながら複雑な金細工で覆われている。その門をくぐった先にあるのが白亜に金色の装飾が施された宮廷だ。いつ見てもこの景色に圧倒されてしまう。
馬車をギルテット様に支えられながらも降り、宮廷から出てきた侍従達に案内されながら私達は大広間へと通された。大広間は金、赤、白、緑など装飾も併せて複雑な色合いをしている。本当に煌びやかな部屋だ。この大広間に立った状態でしばらく待たされた私達。侍従が来てようやく国王陛下のいる王の間へと通される事が伝えられた。
「ではどうぞ。お静かにお願いします」
口をつぐんだまま鏡張りの巨大な廊下を歩き、金色の大きな扉が開かれる。その奥の方にある玉座に国王陛下は座っていた。国王陛下の金髪は遠くから見てもギルテット様とよく似た色合いをしているのが良くわかる。
私達が並ぶと国王陛下はゆっくりと口を開いた。
「まずは皆ここに来ていただき感謝する。ギルテット久しぶりだな。元気か?」
「はい。父上。おかげさまで元気です」
「そうか。医者としてもよく働いていると聞く。もっと腕を磨きこの国の民を救うべく頑張ってほしい所だ」
「ははっ」
「そして、シェリーと言ったか」
国王陛下の目がこちらへと向けられた。彼の目は碧眼とまではいかない茶色っぽい瞳をしている。だがぎらりとした目つきには光がぎらぎらと宿っているように見えた。
「はい。シェリーと申します」
「この度はギルテットを手当てして頂き、感謝する。褒美を用意しておるゆえ、受け取ってほしい」
後ろから侍従がトランクを持って現れる。その中にはお金がたんまりと入っていた。え、そんなお金受け取ってもいいのかしら?
「う、受け取っても良いのですか?」
「ああ、診療所の増築や設備を増やすのに使っても良し。己の家を用意するのに使っても良し。どこかに寄付をすぬるのもよし。この金の使い道はそなたが決めよ」
あっけにとられていると右横に並んでいるギルテット様が小声でここは受け取って大丈夫だとアドバイスをくれたので私は素直にお金を受け取る事にしたのだった。
「国王陛下、ありがたき幸せにございます」
「ああ、看護婦としてギルテットと共に励めよ。それとシュタイナーも元気そうでよかった。お前にも労いの為に褒美を用意してある。こちらだ」
「ははっ」
侍従が用意したのは新品の剣と鎧だった。勿論お金の入った袋も傍らにはある。シュタイナーはおおっと目を輝かせている。
「いい、いいんですかい? こんなに贅沢な鎧に剣なんか貰っちゃって」
「貴様は騎士団の者だったろう。それに剣も鎧も消耗品だからな。受け取るが良い」
「ははっありがたき幸せにございます」
「ああ、よく励めよ。そしてギルテット達。数日間はここで滞在する事を許可する。日ごろの疲れを思う存分癒すと良い」
「父上、よろしいのですか?」
「ああ、お前達は日々頑張っているが、時には休む事も重要だ。ここで英気を養いまたデリアの町で民を救うべく頑張ってもらいたいからな」
国王陛下はそう穏やかな笑みを浮かべ、私達に下がるように指示した。その後は侍従により宮廷内にある施設をあちこち案内される。
「ここが歌劇場となります」
特に圧巻の作りだったのが最近建設が終了したばかりの歌劇場だった。ここでオペラの公演などが執り行われるらしいがステージも客席も広く煌びやかな造りになっている。それに王家や高位の貴族には専用のボックス席(個室付き)も用意されていると聞いた。特別に案内してもらったが個室には小さめのベッドにドレッサーとクローゼットまでついている。ここまで至れり尽くせりなのかと驚いた次第だ。まあこの個室にお世話になる事は多分ないだろう。
また食堂に図書館、博物館も案内され最後に私達が宿泊する事になるゲストルームがある区画に移動する。
「こちらがシェリー様のお部屋になります」
私の宿泊する部屋は実家の屋敷の離れよりも、アイリクス家の自室よりも広かった。それに紅色の天蓋付きのベッドもこれまで使用してきたベッドより格段に大きい。
「わ、わああ……」
これが宮廷の部屋。部屋の広さも内装の豪華さも全てがこれまでとは別次元すぎて声が出なくなるくらいに驚きを隠しきれないでいる。
「驚きましたか? シェリーさん」
「ギルテット様……」
ギルテットはにこっと笑う。
「この宮廷は他国にもひけを取らないくらい立派な宮廷ですからね? 思う存分堪能してください」
「は、はい……!」
ギルテット様からそう言われたのでここは思う存分楽しもう。宮廷なんてまず来られない場所だ。
それからはまず部屋の中にあるシャワールームで身体を洗い、メイドが用意してくれたドレスに着替えた。髪は頭巾で覆ってはいるが頭巾も平民にしてはちょっと上級な品になる。今の私の見た目は大商人の家族、といった具合だろうか。
メイドに食堂へと案内された私。そこで夜のディナーを頂く。肉をメインとしたフルコースは品数も作りも豪華だった。食事を全て頂き満腹状態になりながらギルテット様やシュタイナーと語らいつつ部屋へと戻る時。私の目の前にある人物が通りがかった。
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