第6話 ソアリス視点①
ソアリス視点の話となります。人を選ぶ描写が出てきますので無理だと感じた場合はブラバしてください。
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僕はシュネルを愛している。今までも愛していたし、これからもずっと「大切にする」つもりだ。
なのに彼女は屋敷のどこにもいなかった。今、警察を呼んでこれから詳しく調査が行われると言う。
「どうして……」
今、僕の手元にあるのはシュネルが書いたと思わしき離婚届だった。ここに僕がサインして役所に持っていけば離婚成立となる。でも僕はシュネルと離婚したくないからサインするつもりは一切ない。
だから、この離婚届は自分で隠し持っておく事にした。
(シュネル……どこに行ってしまったんだ)
彼女と結婚した日の事を振り返る。彼女の花嫁姿はとてもとても美しかった。見ていてほれぼれするくらいだ。
彼女を初めて見た時からそっと大事にしたいとは思っていたけど、結婚式で彼女の花嫁姿を見た時、彼女への気持ちをより強くさせた。あのふんわりとした花束のようなデザインのウエディングドレスを着た彼女が今でも脳裏に深く刻まれている。
「ソアリス様。いかがなされましたか?」
彼女との結婚記念の絵を見ていると、メイドからそう声をかけられた。
「いや、なんでもない」
「奥方様の事を思われていたのですか?」
「ああ、そうなんだよ。シュネルは大事な人だから、早く探さないと」
「ふふっ」
メイドが笑った。なんで笑ったのだろうか。
「何かおかしい事でも?」
「いえ、ソアリス様は本当に奥方様を愛していらしたのだと改めて理解出来ました」
「? 僕は最初から彼女を愛していたよ」
「そうでしたか。失礼いたしました」
メイドはそう言って部屋から早歩きで出ていった。彼女は何を言いたいのだろうか。僕は最初からシュネルを愛していたし今も愛していると言うのに。
そして僕は結婚式の記念の絵にもう1度目を通す。そこに描かれた美しいシュネルをじっと凝視する。
ああ、僕は彼女を大事に大事に扱わないといけない。
だから、僕は彼女に手を出さなかった。彼女には清いままで……処女のままでいてもらいたい。他の男になんて渡さないし、僕が彼女に手を出す事もない。彼女はずっと美しく清いままでいてくれたらいいのだ。
だが、子供は必要になる。だから……仕方がないので愛人を持つ事にした。愛人に産んでもらって子育ては僕達がすればよい。それならシュネルは処女のまま子供を持てる。
(そうだ。美しいシュネルには死ぬまで美しいままでいてもらいたい。だから処女のままいてもらう必要があるしそして彼女が死んだ時には遺体に防腐処理を施してガラスの棺に入れて屋敷に飾るんだ……)
シュネルはとにかく美しい。だから僕は彼女の姿を遠くから見ているだけで満足だし性的にも満たされる。だから言葉を交わす必要なんてない。遠くから彼女を見ているだけでいいんだ。
(それに言葉を交わすとしても、何を言えば良いのかわからない。それで嫌われたくはないし。だったら話さない方が良いよね)
そんな状態のまま結婚して月日が過ぎた。シュネルがいなくなった日の前、僕は彼女の妹であるジュリエッタと遊びに行っていた。
正直僕はジュリエッタの事なんてどうでも良いし、むしろ苦手なタイプだ。でも、子供は残さなくちゃいけないからシュネルの妹であるジュリエッタなら良い腹になると思って彼女と親しくした。妹だからシュネルと血も近いからね。
「ソアリス様! お会いしたかったですわあ!」
相変わらず彼女は金髪碧眼に派手な見た目をしている。この見た目だけでもだいぶ嫌なのは嫌だけど、子供の為には我慢しなくてはいけない。僕は彼女と共に宿へと向かい、そこで彼女を何度も抱いた。そして事が終わるとさっさと宿を出ようとしたけどジュリエッタがもっと一緒にいたいと言い出したので仕方なく一緒にいてあげた。
「ねえ、ソアリス様。お姉様とはどうなってるの?」
「ああ、僕はシュネルの事を愛しているよ」
「でも子供がいないんでしょう?」
「ああ、そうだね」
「だから私が産んであげるわ!」
ああ、その為に僕は君と関係をもっているんだから。君には仕事を十分に果たしてもらう必要がある。
「ああ、よろしく頼むよ。子供が多い方が良いからね」
「ふふっ! 出来の悪いお姉様と違ってすぐに健康な赤ちゃんを産んでみせるわ! もし産んだ時は私を妻にしてくださらない?」
それは無理だ。僕にはシュネルしかいらない。後は子を産むためだけの者しか必要じゃない。ジュリエッタもその1人だけど……これを言ったら彼女が機嫌を損ねそうなので言わなかった。
「その時にまた考えるよ」
「ええ、せひそうして頂戴!」
それから僕は宿から屋敷に戻った。玄関に入るとメイド達が慌てて右往左往しているので何があったのかと聞くとシュネルが離婚届を出していなくなったと聞いた。
「警察を呼べ! 早く探してもらわないと!」
「承知しました!」
それから今に至る。早く彼女を見つけ出さないといけない。もし彼女が僕以外の男の手に渡り、穢されていたらどうしよう。そう考えるだけでぞっとするし、その男達を必ず残忍な目に合わせないといけないとも思った。
よし、警察だけに任せるのもあれだ。僕も探しに行こう。
「シュネル……早く見つけないと!」
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