小話

@e_nunuma

エレベーターで賭けをする3人

 ある深夜0時。酔った男3人が歩いていた。


 そのうちの一人が、通りかかった3階建てのマンションを指さして「賭けをしよう。あのマンションのエレベーターが何階に止まっているかについて、3人が異なる予想をして、当てた奴が総取りだ」と言った。そして3人とも合意し、同じ額の金を出し合った。


 一人はこう言った。「うーん、エレベーターが何階に止まってるかなんて完全にランダムだよな……強いて言うなら、1と2と3の平均をとったら2になるから、2階に止まっている可能性が高いんじゃないかな。俺は2。」


 別の一人はこう言った。「ばかだなぁ。エレベーターを利用する人のことを考えてみろよ。皆、1階から昇ったり、1階に降りたりを交互に繰り返しながら生活しているんだ。ということは2分の1の確率で1階にいるだろう。俺は1階を選ぶよ」


 言い出しっぺである、余った一人はこう言った。「1階? 良い推測だけど、1階だけはありえないね。いいかい、皆は昼に外出して、夜になると帰って来るんだ。昼には1階で降りて、夜には1階で乗って他の階に行く。今は夜なので、1階に止まってるわけはない。よって、僕は余った選択肢である3を選ぶよ」



 そうして3人はマンションのドアを開いた。すると……


 エレベーターは今まさに「↑2」の表示から「2」に切り替わった所であった。つまり、たった今1階から2階に移動した人がいるのだ。


 一人はこう主張した。「どうだ、俺らが観測した瞬間にはエレベーターは2階にあったのだから、俺が正解だろう」


 一人はこう主張した。「いやいや、ゲームに合意して金を出した時点ではエレベーターは1階にいたのだから、俺が正解だろう」


 一人はこう主張した。「でも、推測の仕方は僕が一番的を射ていたことが証明された瞬間を見ただろう。2階でなく3階を選んだのも、2階が先に選ばれていたから譲ったからであるわけだし」


 そうして酔った男3人は、喧嘩を始めてしまったという。


 おわり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小話 @e_nunuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る