第4話 蒼貂熊の侵入
ここで説明しておこう。
なんで、高校生の僕たちが、学校に侵入してきた魔物と戦うようなことになったかだ……。
10年前、この東北地方の山奥に口を開けた魔界、そして現れた
だけど、その魔物はあまりに
そう、近代兵器なしでのタイマンでなら、人類はその魔物に勝ち目がなかった。だけど、自衛隊はおろか、猟友会の猟銃にもその魔物は勝てなかったんだ。魔法の1つでも使ってくれればよかったけど、それもなかった。だから、いつの間にか「異世界からの来訪者」から格下げされて、「ケダモノ」と認識されるようになった。そして、その身体の手にあたる部分の触手の大きさと強さ、獲物を襲う巧妙さと気の強さ、さらにその毛色から
生態の知られた「ケダモノ」と認識されるようになると、蒼貂熊への対策は一気に変わった。まず、自衛隊が封じられた。蒼貂熊は単なるケダモノで、「わが国に対する武力攻撃が発生した」とは
で……。
自衛隊が出られないとなったとき、次に武器を持っている公権力としては警察の出番のはずなんだけど……。警察の装備では蒼貂熊に対して手も足も出なかった。あまりに当然のことだけど柔道はまったく通じず、拳銃も蒼貂熊に対してあまりに威力不足過ぎた。出動した回数だけ、生命か手足を失った警官の数が増える状況だったんだ。
そこで駆り出されたのが猟友会だった。
たしかに、ハンターの持つ猟銃は蒼貂熊に対して有効だった。ベテランのハンターは蒼貂熊を評して、「トラ以下ヒグマ以上の獲物」と言ったくらいだ。危険ではあっても、ハンターに狩れない獲物ではなかった。
だけど……。
猟友会は、ただでさえ有害鳥獣駆除や人的被害の多いヒグマやツキノワグマ対策に駆り出されているのに、さらに蒼貂熊も駆除しろというのには無理があった。なにしろ、人数が限られていて高齢化も進んでいる。そして、そもそもが
それでも、この状況が続けば、なんらかの法改正なり手が打たれた可能性はあった。だけど、蒼貂熊が猟銃で殺せることが知れ渡ると、一気に蒼貂熊に対する保護活動が巻き起こったんだ。
曰く、「3人の犠牲はいたましいが、別文明からの来訪者がこちらの文明を担う者が人類とは知らずに起きた不幸な事故」とか、「人類が初めて出会った他者、別文明からの来訪者に対し、相互理解を深める努力もないまま駆除対象にするとは何事か」とか、「自衛隊や警察による蒼貂熊駆除部隊の創設は、国民に銃を向けるための言い訳だ」とか、「ファーストコンタクトの相手を殲滅したら、人類は宇宙で孤立する」とか、僕からしたら正気とも思えない論が、毎日、新聞やテレビで語られ続けたんだ。
あとがき
第5話 鳥獣保護法
に続きます。
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