第14話 それなら…
ふと夜中に目が覚めると、明日香が脳裏にいることがある。
暖かい空気と暖かい目。そして僕を包み込む温かい体…。
消そうとしても消せない生々しい記憶とついさっきまで感じていたようなそんな感覚が残る…。
体に残った痕と、まだ重ね入れしていない
なんどあいつの痕の付いた腕に噛み付いたか分からない。まるで…あいつと繋がってあいつとキスしてるような、いや、それ以上の感覚になっていた。
…本当はあいつが付けた傷を尖ったもので辿って出てきた液を吸いたいとも思った…。
あいつがあいつの手でつけてくれた大事なもの…。
ずっとずっと…そばに感じてたい…。
会いたい…。
僕は、与える側じゃない。
与えられる側なんだ。
――――――――――――呼び出し音。
「…どうしたの?」
「邪魔なら切って。要らないなら切って。」
「切らない。切ってほしいなら別だけど。」
「嫌だ。切らないで。」
「うん。…それで?どうした?」
耳を通って頭の中に欲しくてたまらなかった明日香の声が響く。
「……血だらけ。」
「どうして?」
「……。」
「どうして?」
少しだけ声が強くなる。
「……明日香がしてくれないから!こんなに明日香に会いたいのに!!明日香にいっぱいして欲しいのに!!…でもどうせ、どうせ明日起きたら俺は嫌われてるんだ!!『気持ち悪い』って避けられるんだ!!…だからもういい!!誰と居ても無理なんだよ!!俺の頭の裏には明日香しか居ないんだよ…。目が覚めたらついさっきまで明日香といたみたいに、明日香がいた感じがするんだよ…。でもその時にはもう明日香はいなんだよ…。…もう死にたい。俺、あたまおかしいから。だからもう…消えたい。全部終わらしたい…。」
僕は一方的にわめいて電話を切った。
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