第33話 反省するコト


 ※なこ視点


 ーーーーーーー


 今日、初めてマコトくんと喧嘩してしまった。

 

 あたしが無理にお願いを聞いてもらおうとしたからだ。

 せっかく楽しい一日を過ごしてたのに、あたしが台無しにしてしまった……。


 少しでも冷静になれば、あの時マコトくんが断ろうとしてるって分かったはずなのに、どうしてわがまま言っちゃったんだろう……。


 あの後、マコトくんを走って追いかければ良かったのかもしれないけど、動けなくて、結局私も家に帰るしか無かった。


 それから、とぼとぼ歩いて家に帰ったけど、その途中、色んなことが頭を駆け巡った。


 先週初めてマコトくんを誘った時のことや、初めて家に行った時のこと、ショッピングモールでお寿司を食べたこと、ゲームセンターに行ったこと。

 楽しいことからドキドキしたことまで……。


 でも、思い返すしてみて思う。考えてみれば、いつも私が一方的にやりたいことを言って、それにマコトくんを付き合わせてたことに。


 今日だってそうで、この前も、その前もそう……。


 それで、なんだかんだ遊ぶのに付き合ってくれて、私が誰にも言えないようなやりたいダメなコトを、一緒にしてくれる。それで楽しんでくれる。


 だから、あたしももっと遊びたくて、今まで家で一人でしてたことを分かって貰えた気がしてて、きっと調子に乗ってたんだと思う……。


 マコトくんに色んなこと押し付けちゃってて、マコトくんのしたいこと、全然聞けてなかった……。

 私だって、やりたくないことを無理矢理押し付けられたら嫌なのに、それをしちゃってた……。

 友達なのに……。


 ダメなコトはしても、ダメな子にはならないって決めてたのに……。

 友達のこと全然考えれてなかった……。

 あたし、これじゃダメな子だ……。


 そう思っていると、いつの間にか家に着いていて、私は無言で玄関を開けて入った。


 今日も誰もまだ帰ってきてなくて、家は真っ暗だった。

 リビングに入って電気を点けると、テーブルに書き置きが置いてあった。


 そこに書いてあるものを冷蔵庫から取り出して、レンジでチンして食べる。


「今日はレストランのパスタとハンバーグかぁ」


 いつもの少し高いお弁当を食べる。

 今日は当たりで、普段なら喜んで食べる大好きな美味しいやつ。

 私の大好きなハンバーグ弁当。


 なのに、心無しか美味しくなくて、どこかボーッとしながらそれを口に運ぶ。

 そうしていると、ふと時計が目に入って、時刻が19時なのを知る。


 そっか、あたしゆっくり歩いて帰ってきたんだ。

 もっと早い時間だと思ってた。


 なんて思いながら、ご飯を食べ終えて、食器を片付ける。

 そしてお風呂を洗って、沸かして、その間に勉強をする。


 しばらくしてお風呂が沸く頃には勉強が終わって、あたしの自由な時間が始まる。


 普段なら、ここでお風呂にお菓子を持ち込んだり、一人で歌を歌ったり、ダメなコトをして遊ぶ。

 あたしだけが出来る楽しいコトとして、それを楽しむ。


 だけど、今日はそんな気も起きなくて、あたしはお風呂にサッと入って出ると、そのまま歯磨きをして、部屋に向かった。


 そしてベッドに潜り込みながら、自分のスマホで動画を観て、SNSを見て、好きなものにいいねした。

 好きなアーティストの新曲が上がってて、それを聴いたり、無料の漫画を読んだりした。

 でも、気持ちは晴れなかった。


 そしてふとボーッとしたくなって、スマホを枕元に置いて、天井を見上げてみた。


 すると、少しだけ目がうるうるした。


「あたし、マコトくんに嫌われてないかなぁ……」


 不安だなぁ……。せっかく、転校してきて初めて本音で話せる友達が出来たのに……。

 

 あたし、同じ時間に電車に乗るマコトくんが読んでる本を見かけて、それがあたしも読んだことある、同い年の子が読まなさそうな本だったから、話しかけてみたくて……。

 

 それで、話しかけたら、普通に話せて、友達になれて……。


 それから仲良くなったら、マコトくんのお家もパパとママが帰ってくるのが遅くて、夜遅くまで一人だって知って、あたしと同じ境遇の人がいるんだって一人親近感湧いて……。


 だから、少しでも帰るの遅くても大丈夫だって勝手に思って……そうすれば一人で居る時間も減るからって思って……。


 あたし、マコトくんに謝らなきゃ……。


 しっかり、ごめんって……。


 本当にダメなコトしちゃってごめん、て……。


 でもどうやって言えばいいか、分かんない……。


 言えるかな……でも言わなきゃ……。


 そう思いながら、いつの間にか目を瞑っていた。

 

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