エピソード8:追跡と発見
【タイプの追跡と古書の発見】
「うわっ!見失っちゃったか...」
「おれたちへ復讐しようと再び、現れるに違いない」
「まぁ、それよりもあんた、大丈夫かい?
裏切っちゃった感じだな」
「いいってことよ。
タイプは強欲で、ひでーやつなんだ。
あんなやつは俺がやつけてやる!」
笑いながら話す二人だが、デラは自分の子どもに対して
「実は俺にもお前たちと同じくらいの子どもがいてな…。生きてりゃ、17ぐらいの息子だ」
デラはふと目を伏せ、自分の過去について話し始めた。
「病弱の幼い子どもがいて、手術代に多額のお金が必要だった。土木作業員の俺にはそんな高額の治療費を払えるわけもなく、一攫千金のトレジャーハンターになったんだ」
(回想シーン)
幼い頃の息子がクリスマスの朝、デラに向かって微笑んでいた。
「おとうさん!うちにもサンタさん来るかな?」
「毎年、来てくれるじゃないか。サンタさんに何を頼むんだい?」
デラは優しく答えた。
息子は少し考え込んでから、小さな声で言った。
「...いや、何も欲しくないんだ」
息子の顔に浮かぶ不安な表情を見て、デラは心が痛んだ。彼がお金に困っていることを心配しているのだと、痛いほどわかった。
「どうした?言ってみろ。サンタさんに伝えてあげるから」
しばらくの沈黙の後、息子はぽつりと言った。
「...サッカーボールが欲しいんだ。元気になったらお父さんと一緒にサッカーやりたいからさ」
デラの目に涙が浮かんだ。
「そうだな。その前に早く、元気にならないとな。そしたらサンタさんも願いを叶えてくれるよ」
息子は小さくうなずき、「うん」と答えた。
クリスマスの夜。
デラは息子のためにサッカーボールを手に入れ、急いで帰宅した。
しかし、目の前には火の手が上がる自宅があった。
息子が家の中にいることを知り、デラは必死に火の中へ飛び込んだ。
「お〜い!」と大声で叫びながら捜し、ついに息子を見つけ出したが、既に大火傷を負っていた。
デラは泣き叫びながら息子を抱きしめ、救急車を待った。
病院での治療の甲斐もなく、息子は静かに息を引き取った。
デラはその場で崩れ落ち、涙が止まらなかった。
現在。
「炎を見ると今も手が震えるんだ。俺が悪かった、子どもに悪い事をしちまったって、後悔してな…」
デラの目には涙があふれていた。
「あんたも大変な目にあったんだね」
「もう一攫千金を狙うの止めたよ。
真っ当な人生歩むことにした」
改心したデラはこれからは
宣教師の駐在所に4人が来ている。
タイムトラベルする前に、
「これは何ですか?魔法の箱ですか?」
「スマホだよ。
この時代の人たちにとっては、まるで魔法みたいだろうね。」
「スペイン語で書かれていますが、この部分、読めますか?」
「スペイン語、大丈夫です。
ここには肥後国、カワチノウラ(河内浦)にコレジオがあったと書かれています」
その中に記された情報からコレジオの本当の場所が河内浦であることを知る。
「やっぱりコレジオは本渡じゃなくて河内浦にあったんだね」
「やっぱり
「ええ〜!せっかく頑張ったのに、ただの無駄足だったってこと?めっちゃガッカリだよ」
そして
「悪い奴らがわざと嘘の情報を流してたかもね」
悪党連中が財宝の場所を他に知られたくないために誤った情報を流し、撹乱するために行ったこと、さらにコレジオの正確な場所が書かれた古文書を執拗に欲しがっていた訳を知る。
「ちゃんと自分たちでファクトチェックしなきゃダメだね。
「
自分たちでちゃんと史料調べて、証拠見つけるしかない」
そして
「郷土部、マジでやばいじゃん。これ、世界史的な大発見かも!」
「うん、マジで!俺たち、すごいことしたんだから」
みんな大喜びで研究を称え合った。
所在地発見の証拠となったこの本はイエズス会宣教師のルイス・ピニェイロが1617年にスペインのマドリッドで出版したスペイン語の書物「われわれの聖信仰が日本諸王国において得た成果の報告」。
日本イエズス会は本来ポルトガル王室配下で布教活動をしていたが、1581〜1640年の間、スペイン国王がポルトガル国王を兼ねることになり、マドリッドのスペイン王室政庁にプロクラドールを置いた。
この職に就いたのが、ポルトガル人のピニェイロだ。著書はイエズス会士の書簡・年報等を資料に記述したものと思われる。
本の内容は1612年から14年の迫害史で、江戸幕府2代将軍の徳川秀忠と宣教師たちの悪化する関係を背景に、布教状況や、幕府が行ったキリスト教徒への弾圧や迫害について書かれている。
巻末にはイエズス会のパードレたちが日本に所有していたカザ(修院)、レジデンシア(駐在所)、および迫害で失われたもの、その移動についての一覧がある。
この部分にコレジオの場所が記載されていた。はっきりと場所が書かれた史料は唯一無二で、大変貴重な史料とされる。
「これってキリシタン本じゃ?...」
「これですか?
これは私たちが布教の時に使う教義書です。
ローマ字で書かれていて、日本語で説明してあります」
「今って、日本にただ一冊しかないって言われてる『ドチリーナ...』って本、それかな?」
「よく知ってますね、君」
「それって、現存する数もめちゃくちゃ少なくて、数億円もする超貴重な本なんだぜ!」
ローマ字本の教義書「ドチリーナ・キリシタン」(国指定重要文化財=東洋文庫所蔵)は1592年に天草コレジオで印刷された。
現存するものは他に、1591年、印刷地不明の国字本「どちりいなきりしたん」(ローマのバチカン図書館蔵)また、1600年に長崎で発行された国字本(ローマのカサナテンセ図書館蔵)とローマ字本(水戸徳川家の水戸彰考会蔵)の4書のみで、それぞれ世界に1冊ずつしか残っていない。
「マジで!数億円!? これ、現代に持って帰りたいレベルだよ!」
「この時代でも、本は超貴重品だよ。
君、宣教師になる気はある? そうすれば、この本を持つことができるけどね」
「うーん、ちょっと考えてみる...」
一堂、笑う。
【探索と発見】
東シナ海に面する内湾で、さらに奥まった所に宣教師が島の「首都」と称する町があった。
「
中世の城は険しい山の地形を利用し、外敵から守る山城だった。
山の尾根付近に殿の居住地だろうか、瓦葺きの立派な邸宅があった。
狭い平野部に藁葺きの民家が立ち並ぶ河内浦城下。
そして小舟が行き来する川沿いの小高い所に仏教寺院を改造した教会の建物があった。
コレジオ跡地については現在、まだ発見に至っていないが、宣教師の記録によれば、殿の居住地に近い距離にあり、殿が提供した家屋と宣教師が所有していたカザ(修院)を基に作られたとある。
「この建物、教会の隣にあるし、コレジオ跡地かもしれないね。
同じ時代のマカオのコレジオも聖ポール天主堂の隣にあった」
コレジオは1597年にこの地から長崎へ移転しており、
恐らくここがコレジオの跡地に違いないと、遺物や手がかりを探そうとする。
「ここか。見る影もないな。
当時は栄華を誇っていたというけど・・・」
クモの巣を手で避けながら、壊され、ほこりだらけの部屋を見て回る。
「うわっ!」
床板を退けて下をよく見ると床下に地下室があった。
隠れ部屋だろうか、注意深く、用心しながら階段を降りて行く。
ひつぎが置いてある。
突然、ひつぎの蓋が開く。
白骨化した死体が現れた。
「え、何これ?キャー!」
死体の手が上がった。
その手は焼き物の破片を掴んでいる。
「何だ!これ?」
破片は鮮やかな緑と黄色で装飾され、繊細な花や葉が描かれており、その美しさは見る者を魅了するものだった。
【秘密の解読】
宣教師が深い知識を元に説明を始める。
「これは中国の焼き物で、非常に高価なものです。南蛮船を通じて日本にも運ばれてきたものですね。」
「図書館の本で見たんだけど、『華南三彩貼花唐草文五耳壷』(かなんさんさいちょうかからくさもんごじつぼ)っていうやつだって!南蛮貿易に関連した資料らしい」
熱心に話す
この重要な発見は、彼らがコレジオ遺跡の謎を解く手がかりとなり、新たな歴史のページが開かれることを示唆していた。
彼らはこの情報をもとに、さらなる探索と冒険を進める決意を固める。
「殿も宝物のように大切にしています」
「宝物?!金銀財宝のこと?
発見までもうすぐだ!」
「どうかしましたか?」
不思議な顔をして、彼らの顔を覗き込む。
夕日が沈むコレジオ遺跡の風景。
未発掘のエリアや遠くに広がる東シナ海が見える。
南蛮船が入江の奥に見えた。
コレジオの遺物が明らかにする真実は、
しかし、すべての謎が解けたわけではない。
彼らの前にはまだ数多くの試練が待ち受けているのだった。
(次回予告)
悪党のラスボスが巨大な魔法の守護者を放つ!
「悪魔の守護者よ!大いなる怒りを持って地上に降り落ちよ!」
(続く)
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