第33話 奴隷と朝食を食べる



 俺一人、急いで食堂へ行くと早朝だというのに既に全員集まっていた。

 昨夜、朝食を出すと言っておいたからだと思う。


 皆、楽しそうに会話しているが、猫のタマは眠そうだ。


「おはよう」


 俺が挨拶をすると、皆恥ずかしそうに俺から顔を背ける。

 背けなかったのはCOOLなヒルデビアと掴みどころのない性格のラウラ、あと元気なフォン。


「あれ?どうしたんだ?」


 皆の様子を疑問に思っていると、狐のフォンが元気一杯の声で俺に言う。


「ゴロウ!昨日、ウィスタシアとなにしたの?」


 慌てた犬のモモが抱き締めるようにフォンの口を塞ぐ。


「こ、こら、フォン、そういうことは直接本人に聞いちゃだめなんだ」


「どうして?」


「わわわわたし、おおおお水を、よよよ用意いまっしゅ!」


 あ、語尾噛んだ。

 青い癖毛のアズダール人、レモニカがいつもより一層焦った感じで慌てて席を立った。


 するとピンク髪のラウラが申し訳無さそうに口を開く。


「ゴロウ、ごめんね。昨日の夜、ウィスタシアがゴロウの部屋へ行くって言って、朝まで帰ってこなかったから皆に話したらティアニーが……」


「ちょっと、私のせいにしないでよ!アストレナだって殿方はそういうものだって言ってたじゃない!ヒルデビアは気持ち良いらしいって、なんか説明してたし!」


「ゴロウ様……す、すみません」

「生娘の分際で出過ぎた真似をしました。お許しください」


 アズダールの姫、アストレナと侍女のヒルデビアが申し訳無さそうにしている。


 え?この子達、俺とウィスタシアがセックスしたとでも思ってるにょっ?俺も語尾噛んだ!


 こういう話題は子供には早いって!親とテレビ見てたらキスシーンが始まったみたいな、気不味さがある……


「ははは……、嫌だな君達……俺が変なことするわけないだろう」


 それに俺、彼女いない歴=前世の年齢+今の年齢だよ!

 はっきり言って出会ってその日になんてスキルないからね!


「ふぁー、遅くなってすまん」


 すると、タイミングよくウィスタシアが欠伸をしながら食堂へ入ってきた。


 良かった、誤解を解いてもらおう。と彼女に振り向くと一糸まとわぬ姿だった。


「露出狂かッ!?なんで全裸なんだよーッ!?」


「ゴロウ、昨日は激しかったな」


 エルフのティアニーは眉間に深い皺を寄せ顔を真赤にして外方を向き「最低」と呟く。

 赤髪のヒオリも頬を染めて「お前呼びからゴロウ呼びに変わっていますな」と独り言を呟いている。

 褐色肌の犬のモモは両手で顔を隠しているが、指の隙間からウィスタシアを凝視している。


「服は汚すといけないから脱いできたぞ。あの服、大切にするからな」


「だからっていけない格好で来ちゃダメでしょ!」


 迂闊だった。この子、裸を見られても恥ずかしくない系女子だった。流石魔族の姫と言いたいところだが、こっちが恥ずかしいからやめてもらいたい。


「お姉ちゃーん、待ってよぉ〜」


 まっ、まさかっ!?

 続けてシャルロットも食堂に入ってきた。姉がこれだから心配したが彼女は赤いドレスを着ていた。




 それから皆に昨夜のことを簡単に説明した。

 そしてシャルロットに自己紹介をさせる。


「シャルわぁ〜、可愛い可愛いシャルロット・アイ・ヴォグマンでーすっ♡わけあってぇ12歳っ♡みんなぁ〜、シャルのことわぁ〜、シャルってよんでねっ♡」


 と猫なで声で話しウインク&ポーズを決める。


「なんかむかつくわね」

 とティアニー殿。


「えぇ〜〜、どこがぁ〜?♡シャル可愛いでしょ♡」


「そういうところがよ」


 アルベルトさんが俺のところに寄越した理由、何となく察したわ。


「私の妹だ。仲良くしてやってくれ」


「顔は姉上に似ておりますが、性格は全く似ておりませんな。某はヒオリ・ホムラ。ヒオリとお呼びくだされ。シャル殿よろしくお願いします」


 ヒオリは爽やかな笑顔で自己紹介する。続けて仏頂面で。


「ティアニー・ウッドレーニンよ。よろしく」


 それから全員、シャルロットに自己紹介をした。

 すると料理担当のゴロウズから念話が入る。


【朝食、13人分用意できたぞ】

【ありがとう。送ってくれ】

【オーライ】



 料理が転送されて。


「いただきます」

「「「「「いただいます!」」」」」


 朝食はバターの香りが香ばしいカリッと焼いた食パンと肉汁が溢れるベーコンエッグとソーセージ、それとサラダ。


「これも、美味しいわね……」

「うまいですな!」

「このパンていうの、中はモチモチであたし凄く好きだ」

「朝食も素晴らしいですわね」

「わわわわたし、ここに来れて本当に幸せです。ほわ〜」

「レモニカ、口にソースが付いてますよ(フキフキ)」


「ニャー、ジュース飲みたい」


 飲み物は果実から絞ったリンゴジュースとオレンジジュースを用意した。


「どっちがいいんだ?」


「両方」

「アッチも両方飲みたい!にひひひ」


「はいはい。ココノはどうする?」


「ココノん黄色いの」


「オレンジジュースな」


 俺はジュースが入ったピッチャーを魔法で持ち上げてコップに注ぐ。同じ要領でフォン、タマ、ココノにコップを配った。


「ほえー、コップが浮いてる。ねぇお姉ちゃん、この料理凄く美味しいよね。こんなのヴォグマン領じゃ食べれないよ」

「昨日、ゴロウが用意してくれたハンバーグという料理もとても美味かったぞ」

「ええー、お姉ちゃんずるーい!シャルも食べたい」


 ヴァンパイア姉妹も仲良さそうに食べているな。


 俺も料理に口を付けた。

 原料の小麦から栽培して家の窯で焼いた食パン。何度も失敗し試行錯誤して作った逸品だ。

 焼いて外はカリカリ、中はフワフワモチモチ、塩の効いた濃厚バターが染みて美味い!超美味い!


 はぁー、贅沢だぁー。



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