第11話 食事を振る舞ったら懐かれた
「口に合うかわからないけど、良かったら食べてくれ」
そう言いながら用意した10皿をグラビティで宙に浮かせて皆の手元に運んだ。
俺が用意したのは全てこの世界にない食べ物。この世界の植物や動物は地球とは別の進化を遂げていて、地球と全く同じ食べ物は存在しない。
目の前に食事が来ると皆一気にがっついた。
「感謝いたします。二人とも、いただきましょう」
「「はい!」」
青髪ボブの子にお礼を言われた。この子が3人の中でリーダー的存在のようだ。
皆一口食べると目をキラキラと輝かせる。
「ん~!甘いよ~」
「おいしい~!」
「こんなおいしいの始めてなの」
「ガツガツガツ くちゃくちゃくちゃ」
「この柔らかい食材は何であろうな?美味だ」
皆一心不乱に食べてる。相当お腹が減っていたんだな。まぁ皆あばら骨が浮いていてガリガリだったもんな。
俺は青ボブの子に尋ねた。
「なぁ、ここの食事ってどんな感じなの?」
「一日に一度、クルテン1個と野草のスープが殆どでした。このような甘くて美味しい物は食べれなくて……。うっ……あう……うぅっ、……ずっ、ずみまぜん……」
泣いてしまった。
クルテンとは芋の一種でじゃが芋より一回り大きくて味は長芋に似ている。とろろのように生で食べることもできる。
青ボブの涙を見て青髪仲間二人も一緒に泣き始めた。
「えっく、うっ……な、泣いていたらお行儀が悪いですね。ほら二人とも」
「はい。うっ、ぐす」
「も、申し訳ありません、うぅ……」
「育ち盛りが一日一食でありましたからな。それはもう腹が減って仕方なかったのですよ」
赤髪ストレートヘアの人族の少女が口を挟んできた。真っ赤な髪の色からして彼女は東の大国、東倭国出身だろう。名前はヒオリ・ホムラ。
「そんな食事では病気になるのも当然か」
「ええ、某など、そもそも大食いでありすから、20倍、いや……30倍は食べれるというのに、まったく!」
「ははは、凄い量だ。そんなに食べれるのか?」
「むむ!信じておられませんね。では、某にクルテン30個持ってきて下され。証明してみせましょう!」
「いや、クルテンじゃなくてもっとちゃんとした料理を食べ切れない程用意してあげるよ。家に帰ったらな」
そう言うとヒオリの顔がパァーっと明るくなった。
「なななんと!ゴロウ殿ぉ〜っ!」
そう言って俺の腕に抱きついてきた。
「腕を治してもらった恩もあるというのに……、某、どこまでもゴロウ殿にお供いたします!不束者ですが宜しくお願いしますッッ!!」
「ああ、宜しくな」
この子は10人の中で一番明るいし、何故かポジティブなんだよな。ヒオリは片腕の無い欠損奴隷で40万グランで購入した。檻の中で黙っている姿は滅茶苦茶美人で買ってしまったわけだが、喋り出すと声がバカでかくてうるさい。
まぁ個性だし、賑やかでいいけど。
「ん?」
少し離れた所にいた精霊眼で桜色の髪の少女ラウラが立ち上がり俺の隣り、ヒオリの反対側に座った。
そして俺の脇により掛かり腕に発育の早い胸を押し当てる。
「ゴロウ、ボクも美味し物、食べていい?」
「あ、ああ、勿論だよ」
すると俺の腕を抱くヒオリの力が強くなる。
「むむ!主様に向かって呼び捨ては良くありませんな。無礼ではありませんか?」
「ゴロウって呼んでって言われたの。君には関係ないでしょ」
「ぐぬ!」
「まぁまぁ落ち着いて。とりあえず帰ったら風呂だから」
食事に釣られて懐かれてしまったがこの子達、めっちゃ臭いんだよね。
「あんた達、離れなさいよッ!」
「むむ、エルフ殿にいわれる筋合いはあませんな」
「後から来て偉そうだよね」
「その男はあんた達のこと臭いって言ってんの!」
「なぬッ!クンクン、確かに魔族殿は少し臭いますな」
「ボク……うん、ずっと洗ってないし臭いかも……、でも君だって凄く臭いよ!」
「えっ!いやぁー、某は……鼻が慣れたといいますか、むしろこの臭いが落ち着くといいますか。あははははは!」
「とにかく迷惑だから離れないよッ!バーカ!」
「ふむ、馬鹿と言った者が馬鹿なのですよ。故にエルフ殿、馬鹿なのは貴殿です!」
「ねぇ、ゴロウは誰がバカだと思う?ボクはこの二人がバカだと思うんだけどな……」
とラウラは更に俺の腕に胸を押し当ててくる。反対ではヒオリが負けじと俺に抱きつく。いや臭いって。
そして目の前には鬼の形相で仁王立ちするエルフ殿!
いや何この状況!?想像してたのとちょっと違うんだが!?奴隷の子供ってもっとしおらしいの想像してたのに!
「主なんだから何か言いなさいよッ!」
「ねぇゴロウ、どうなの〜」
「ゴロウ殿ぉー!」
「あははは……、皆バカじゃないよぉ〜。仲良くしようね〜。家に帰って風呂に入れば匂いも落ちるからね〜」
俺は笑顔で3人を宥めるのであった。
ここでは体を洗えないのだから臭いのはしょうがない。それをとやかく言うのは良くないよね。
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