第9話 第七位階回復魔法


「さて商会長さん、先程の提案の答えを聞かせてもらえませんか?」


「さささささ先程のててててて提案ですかぁ〜!?」


 会長の顔は引き攣り、俺に滅茶苦茶ビビっている。


「だから、ここの奴隷全員回復させるので、外のヴァンパイア少女を無償で譲ってくれって話ですよ。健康体になれば奴隷の価値が上がるからそちらに損はないでしょう?因みにここには不健康な奴隷は何人いるのですか?」


「当商会で扱っている奴隷は約2万人、症状は異なりますが2割は健康面に不安を抱えておりますので、4千人くらいですかな……。そんなに多くの者を全員回復できるのでしょうか?」


「んん?」


「あっ!い、いえ!やややヤマダ様ができると仰るならできるのでしょう!絶対にー!!た、確かに……、全員健康になれば3、4倍の値で売れますから彼女、ウィスタシアをお譲りする以上の……、それこそ数倍の儲けが出ますね。ええ」


 あの子、ウィスタシアって言うのか。


「そう言うことです。で、どうしますか?」


「しょ、承知いたしました。その話、お受けいたします」


 よし!これで2億グランのウィスタシアを無料でゲットだぜ!


「では、キラービーのメンバーもそろそろ死んじゃうので早速始めますね」


 俺は両手を翳す。両手の前に黒い球体が発生しそこから巨大な漆黒の水晶を携えた白銀の杖が出現した。


 世界の創造神が一人、白龍皇帝ガイアノス、その骨格と核で作られたこの杖は膨大な俺の魔力を増幅してくれる。


 俺が本気を出すときに使う原初の魔王アウダムの杖、〈偉大な白龍ガイアノス〉。

 そいつを握り魔法を発動させる。


「第七位階回復魔法――グロデストリバイバル!!」


 漆黒の水晶がブラックホールが如く勢いで俺の魔力を吸い込み、それを増幅して放つ。


 俺を中心に目が眩むほど眩しい黄金の光が波紋のように広がり端から端が見えない超巨大なテント全体を包み込んだ。


「なんじゃこりゃ!」

「何が起きてるのよ?」

「眩しくて何も見えないね」

「……温かい」


 会長や店員のおっちゃん、俺の奴隷達がこの光に驚いているようだ。

 10分ほどで光は収まった。


「あれ?足が生えて……る」

「どこも痛くねなーな?」

「持病の腰痛も治ってる」

「昔抜けた歯が生えてるぞ!?」


 どうやらキラービーのメンバーも全回復したようだ。


「会長さん、奴隷の健康状態を確認してください」


「か、かしこまりました。皆さん、人を集めてヤマダ様の指示通り奴隷の健康状態を確認してください」


「わかりやした」

「へい!了解です!」

「奴隷も使って確認させやす」


 店員におっちゃん達が散った。これなら確認に時間は掛からないだろう。



「さて、キラービーの諸君、立って横に整列してください」


 全員に奴隷紋を付与したから、俺の命令には逆らえない。彼は渋々立ち上がって横に並んだ。


「お前達は俺の奴隷になったわけだが、俺の自宅に連れて行って労働させるつもりはない」


「え?じゃぁ俺達はどうなるんすか?」


 顔半分にスズメバチの刺青が入った強面のリーダー格の男が不安そうな顔で聞いてきた。

 こんな奴等が家に来てうちで家事してるとか、こっちが困る。


「これから命令することを守ってくれたらそれでいいですよ」


 こいつらは今まで散々悪事を働いてきたと思う。でも俺は裁判官ではないから、いちいちそれを裁くつもりはない。


「命令だ。よく聞けよ」


「「「「「 はいッ!! 」」」」」


「嘘を吐かない。盗まない。奪わない。人を犯さない。人に暴力しない。人を殺さない」


「盗みができないんじゃこれからどうやって生活すれば……」

「ワイ、殺しだけが楽しみなのに……」

「もう女を犯せないのかよ。辛すぎだろ」

「オイラ、言ってること全部嘘なんだけど、どうたらいいんだ?」


 もう嘘を吐けないから本音が漏れてるな。こいつらほんとに屑だよ。


「しかし、あの有名な大賢者ゴロウ様って、実はロリコンだったんすね」


 は、はぁ?ロリコンじゃねーし!


「俺もロリコンだから親近感わいちゃうなぁ~」

「けど、強くてロリコンってもうなんかヤバい奴じゃんw」

「確かにw」


 こらこら、奴隷の女の子に聞かれるだろうが!心の声漏らすの止めなさい。

 やっぱり全員始末しておくか?


「おい!わかったのか!?」


「「「「「 はいッ!! 」」」」」


「それと弱い者や貧しい者は積極的に助けてやってください。もちろん無償で。わかったな?」


「「「「「 はいッ!! 」」」」」


「よろしい。じゃぁ……もう帰っていいですよ」


「「「「「 は……はい…… 」」」」」


 キラービーのメンバーは背中を丸めて帰って行った。

 こいつらが今後どうなるかはわからないが、死ぬまで世の中に貢献してくれることだろう。

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