第10話 セフレは幼馴染。
まひるから気まぐれに連絡があって、時々会う。
そんな関係がしばらく続いた。
会ってる時のまひるは、本当に可愛くて優しくて。
毎回、勘違いしてしまいそうになる。
その度に、まひるとのメッセージのやり取りを見返すのだ。
まひるからの「エッチしたい」と、待ち合わせ場所の繰り返し。
この事務的なやりとりを見返すと、我に返ることができる。
こんな関係がいつまで続くのだろう。
でも、まぁ、まひるが飽きるまで付き合うとしよう。
また、いつものように「エッチしたいです」とメッセージが来がくる。そして、いつものように、待ち合わせの時間と場所を決める。
ただ、この時はいつもと違う点があった。
午前中に俺の用事があって、まひると会うのが午後からになってしまったのだ。
会ってからは、いつもの感じで一緒にホテルで2人の時間を楽しむ。思うところがあっても、何も言わない。2人はそういう関係なのだ。それに、2人でいるときは、なんだか気分が落ち着いて何の不安もなくなる。不思議だ。
だけれど、いつもより考え事をする回数が多かったのかもしれない。まひるは、頻繁に俺の顔を覗き込んだり、ネコのように寄り添ってご機嫌をとるような態度をとってくる。
何も悪くないのに、まひるにも気を遣わせている。
何をやってるんだ、俺は。
これ以上、自分のことは棚上げで、まひるに何を望むのか。
うまく感情がコントロールできていない。
こんなんなら、この関係も
いつも俺の意を汲んでくれるまひるは、俺の内心に気づいたのかも知れない。
手を何度も握ってきて、次に会う日を決めようとする。今まで、会っているうちに次の約束の取り決めなどしたことはないのに。
それでも俺が口を開こうとすると、まひるは、キスをして俺の口を塞ぐ。
そして、ショーツだけ脱いで、スカートのまま馬乗りになってくる。
今日はいつにも増して、まひるが大胆に感じる。
まひるの身体が俺の遺伝子を求めてくれているようで、心とは逆に、俺の肉体は興奮してしまう。
でも、まひるが頑張ってくれるほど、俺の中の自己矛盾が大きくなる。気持ちと身体が絶頂の限界を迎える前に、俺は口を開いた。
「なぁ、まひる。うちらそろそろ終わりに……」
すると、まひるは激しく動いて。
「イヤだ。会えなくなるのはイヤ。ね。中に頂戴。わたしの中にいっぱい出して」
「え?」
おれは衝動に負けて、そのまま出してしまった。しかも、いつもより興奮してしまい、それから続け様に3回もしてしまった。
何をやってるんだ、俺は。
終わりを切り出そうとしていたのではないのか。
だけれど、少なくとも、まひるも会いたいと思っていてくれていることは分かった。それに、もしかしたら子供ができるかもしれないのに、このまま終わりになんて、無責任なことはできない。
今はこれで満足しないとな。
少なくとも、まひるの次の生理がくるまでは、さっきの話の続きはナシにしよう。
終わってベッドに寝ていると、まひるは、お腹をさすって嬉しそうにしている。
そして一言。
ぺろっと舌を出しながら。
「ずるいよね、わたし」
おれは笑顔を作った。
「ほんとだよ」
まひるは、少し口を尖らせて、俺の腕にぴたりとすり寄ってくる。
「でもね、もうしばらく、こうしてて欲しいな。いまは1人になるのは耐えられそうにないよ。それと、おにいちゃんのあったかくて優しくて、わたしの中に沢山いるよ。んっ。またへんな気持ちになっちゃう……」
そういうと、まひるは、足をモジモジさせて、俺の太ももを彼女の両足で挟む。そして、右手の中指で自身の下半身を弄るような仕草をすると、その大きな目を潤ませてとろんとさせた。
まひるは唇を重ねてくる。
息を吐きながら離した唇からは、唾液が綱引きをしていた。
「ね。おかわり。もっと愛して……」
それからは、さっきまでの不安はどこへやら。
時間あたりの連続記録を更新してしまった。
(アラームの音)
……やばい。寝てしまった。
もう終電がない時間だ。
俺の腕に抱きついて、ぐうぐう寝ているまひるを起こす。
「まひる、起きて。ごめん、明日の出勤時間が早くて今日は泊まれないんだ。最寄りの、……、いや、夜道は危ないか。まひるが構わないなら、家の前まで送って行くよ」
すると、まひるは
「うん。おにいちゃんなら信じられるからいいよ。あとで家の場所を教えるね。それと、……」
まひるは、俺の目を見つめてくる。
何度か
それは、聞き返したくなるような小さな声だった。
「それと、次も会ってくれる?」
おれは自分の口元が綻んでいるのを感じる。
「あぁ、わかった」
まひるは俺の肩に抱きつくと、俺の顎下のあたりを見上げる。
そして、目尻にシワを作り嬉しそうな顔をした。
「よかった。それとね、わたし生理痛ひどくてホルモンの薬飲んでるんだ。だから、赤ちゃんできないよ」
「えっ?」
まひるはいたずらっ子のように、舌を出す。
「ね? わたしってズルいでしょ?」
ほんとうにこいつは。
俺は苦笑いをした。
それから急いで帰路に着く。
まひるはホテルを出てから、ずっと俺の手を握っている。
正直、そこらの倦怠期のカップルよりも、ずっと仲がいいと思う。でも、彼女はそれ以上を求めてこない。まひるの本心がわからないや。
まひるに住所を教えてもらう。
「東京都◯◯区◯◯町……」
えっ。
それって、俺が中学まで住んでいた町なんだけど。
まひるの家に近づいていくと、どんどん懐かしい風景になっていく。
「あ、そこのお家」
まひるの指示で車を止める。
それは、よく知っている建物の前だった。
ここは『
おれに、女性不信のトラウマを刻み込んでくれた幼馴染の家だ。
おれが
「おにいちゃん。どうしたの? 送ってくれてありがとう。……あの、また会ってくれるかな?」
「あぁ」
正直、答えに迷ったが、あまりのことにそこまで考えている余裕がなかった。
「……よかった。次は来月の最初の土曜に会いたいな」
そういうと、まひるは手を振って、両手を膝で揃えてお辞儀をすると、何度かこちらを振り返って家に入って行った。
おれはそれから数分、茫然自失した。
そして、中学生の時に、俺を見下すような目で「キモい」と言った少女の顔がフラッシュバックする。
……いや、顔の感じ違うし。
あいつ、あんなに綺麗な二重じゃなかったし。
それに、あんなにスタイル良くて胸大きくなかったし。
髪もショートで黒かったし。
声は少し似てたかも。
だけれど、もっと男みたいな話し方だったよ?
名前は?
幼馴染の名前は
セフレの名前はまひる。
まひるを漢字で書くと「真昼」。
真昼と真夜。
本名を逆の意味にしたハンドルネームだ。
俺は確信した。
あいつは、俺を打ちのめした幼馴染の女だ。
★★あとがき★★
ようやくタイトル回収できました。
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