第3話 思いの外まともで怖い。

 

 それから、まひるとメッセンジャーでやりとりをするようになった。


 映画の話し、アニメのこと。

 きっと、まひるがあまり知らないことでも、ちゃんと返信してくれる。


 やはり、まひるは大学生らしい。

 自分は高卒だからわからないけれど、学校や親友のこととか色々と話してくれる。


 俺も会社であったことや、登録に至った経緯とか(もちろん最低限の取捨択一はしたが)。クズ先輩のこととか。色々話した。


 すると、まひるはドン引きすることもなく、楽しそうに返信してくれる。


 本当に普通の女の子だ。

 いや、むしろ俺がイメージしていた遊んでいる女子大生より、良い子なように思える。


 少なくとも俺が遊んできた相手達よりは、全然すれていない印象を受けた。

 

 やりとりしていて普通に楽しい。

 なんだか当初の趣旨も忘れて、昼夜を問わずにやりとりをした。


 だけれど、時々冷静に戻ってしまうのだ。


 でもね、この子、セフレOKするような子なんだよね。

 そんな子を良い子って思う俺って。相当に見る目がないのかな?


 それか、あれか?

 クズ先輩が言っていた、美人局つつもたせ的な?


 会ったら怖い人が出てきて、俺は何かを売りつけられたり、へんな宗教に勧誘されたり、どこかに連れていかれてしまうのだろうか。


 ちょっと心配で、まひるに素直に伝えると、すぐに返信がくる。


 「そんなことないですよ。でも、心配ですよね? 今、外にいるので、ちょっと周りがうるさいけれど、通話で話してみますか?」


 もちろんOKした。

 飲み会の最中らしく、まひるのタイミングで着信をくれるという。


 待っている間、すごくドキドキした。

 男の人の声だったらどうしようとか、実際に話したら、話が続かないんじゃないかとか。


 やがて、着信が入る。


 やばい、手汗かいてる。心拍数めっちゃ上がってるし、何から話そう。


 「はい。うナぎです」

 

 しまった。声が裏返った。

 電話の向こうでは、爆笑する女の子の声が聞こえる。


 「あははっ。と、ごめんない。うなぎさん声高いからびっくりしちゃって。まひるです。いま、ゼミの飲み会で。お酒飲んでるせいか、うなぎさんの声聞いてみたいなって。ちょっとドキドキしたけれど、電話しちゃいました」


 それから数分話すと、まひるは店に戻ると言って電話を切った。

 俺は一人暮らしなので、急に静かになって、ドギマギした余韻がけが残る。


 『なんか、明るくて良い子そうだな』


 聞いていて、すごく落ち着く声だった。

 でも、だからこそ余計に不安が頭をもたげる。

 

 そんな子がどうして?

 よっぽどな理由があるのかな。すごく気になってしまう。


 それから数時間後、まひるからメッセージがきた。

 

 「さっきはありがとうございました。家に帰りました。わたしも声が聞けて安心しました」


 思い切って聞いて見ることにした。


 「ごめん、まひるちゃんみたいな子がどうして、あのセフレなんかに返信くれたの?」


 すると、テンポよくやりとりしていた返信が途切れる。


 『やばい、地雷踏んだかな。すごい当たりっぽいのに余計なこと聞いちゃった。失敗した……』


 俺は、すごく不安になる。





 すると数分おいて返信がきた。


 「話したくないです」


 そうだよな、俺は何を期待していたのだろう。

 きっと、それなりの理由があるに違いない。

 セフレで良いって言ってくれている子に、こんなことを聞くのはマナー違反なのかもしれない。


 それに、自分が、まひるに惹かれ始めていることに気づいてしまった。

 あまり長くやり取りしていると、好きになってしまいそうだ。


 そうしたら、自分が辛くなる。

 これは、早めに会った方がいいな。

 

 俺は、まひると会う約束をした。

 

 


 

 

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