ホラー回②
「ねぇねぇ、そんなことよりこれ見て。この前ようやく秋月が全裸にされながらも倒したリッチさんが配信やるんだって」
「はぁ?」
いや、全裸にされながらじゃねーよ!
初見で敗北して全裸にされたから、リベンジしてちゃんと倒しただろうがよ!!!
お前も一緒にな!
それにしても、リッチが配信やるってなんだよ!?
”弱き人間どもめ!?俺が貴様らを育ててやるから死に物狂いでかかってこいやボケェ!”チャンネルとか、なめてんのか?
ツブヤイタ―に出現したらしいけど、やっぱりいたずらして遊んでるやつがいるんだろうな。
まったく。
これは即通報だな……ってなんで通報ボタンが拒否されるんだよ!
『このチャンネルはダンジョン協会長公認のため卑猥であるなどの規定に抵触するな内容が放送された場合を除いて通報できません』ってどういうことだよ!?
「ダンジョン協会会長って湊さんでしょ?ちょい悪系だけど探索者想いの良い人だったよね?」
「まったく、何を公認してんだよ!?」
何度か顔を合わせてことがある湊会長は既に探索者を引退しているが、世界ではじめてダンジョンの100層を突破したパーティーのリーダーだ。
リーダーっつっても2人のチームで、もう1人は絶望的にコミュニケーションが難しい人だけど。
ちょっと生意気なこと言ったくらいで空間を埋め尽くす無数の騎士にフルボッコにされた苦い記憶が蘇る……。
死に物狂いで脱出したら、ちっちゃい女の人に衝撃的な腹パン喰らって気付いたら協会の医務室だったんだ。
それを爆笑しながら見ていた湊会長……って、探索者想いの良い人か?
って、そんなのはどうでもいいんだよ!
今はこのチャンネルだ……あれ?これでいいんだっけ?
「はじまるよ、秋月」
「あっ、あぁ」
紬が寝そべってる横に置いてある年季の入ったクッションをボフボフ叩いて……そこに座れってことだな。
微妙に画面が見づらいんだが……。まぁいっか。
「これ本当にダンジョンの中だよね? むしろ本当にボス部屋なんじゃ?」
「この前戦った新宿ダンジョンの40層のボス部屋っぽいな……まじであのリッチなのか?」
『〇★□▲※◎◇!』
疑問を浮かべる俺たちが見つめる中、画面にはあのリッチが片手を『よっ』みたいな感じで顔の前に持ってきたポーズを取りながら聞き取れない声を出した。
秋月:なに言ってるかわかんねぇよ!!!!!!?
:さっそくのツッコミ……
:えっ、秋月ってあの海堂秋月?
:転がされて全裸にされた海堂さんであってますか?
秋月:うるせぇよ!!
:ってことは、このチャンネル、マジでリッチなのか……
:えっ、フロアボスモンスターがマジで配信してるの?
:チャンネル名は煽りつつも育ててやるって書いてあるけど……
塔ちゃん:そうだ、目の前にいるリッチであるこの俺が配信してるんだ
……オイ、チョット待テ
:えっと……塔ちゃん?
塔ちゃん:あぁ。これは俺のニックネームだ。気さくに塔ちゃんとか、リッチとか、リッチ様って呼んでくれ
:リッチ様すてき♡
:えっ、どこが?
:どこに惚れる要素があったんだ?
皇ちゃん:あぁもう始まってた。遅れちまったな。
塔ちゃん:廊下で立ってなさい!
:wwwwwwww
皇ちゃん:おぃ!!!!
:えっ?ダンジョン協会長?マジで?
皇ちゃん:あぁ。日本ダンジョン協会会長の湊皇一だ。よろしくな。
まさかの湊会長登場。だが俺は気になっているのは全く別のことだ。
マジかよ。
俺の視線は画面のある一点に固定されている。
:会長乙
:普通に登場したけど、本物?
:まじでなんなのこのチャンネル。フェイクじゃなくて?
皇ちゃん:フェイクじゃないぞ?怪しまれると思ったから会長権限で通報却下してるから通報しても無駄だ。
塔ちゃん:久しぶりだけどいい仕事するじゃないか
皇ちゃん:お前、そんな偉そうなキャラじゃなかっただろ?って、いかんいかん。早く始めろ。
塔ちゃん:いいじゃないか。どうせ誰も今は挑んで来てないしな。
:なんのためにこの配信はじまったんだ?
:探索者を鍛えるってことだから、その名の通りボス部屋に来た探索者と戦うところをモンスター側から配信するってこと?
塔ちゃん:その通りだ!素晴らしいな。説明と宣伝のつもりだったけど、もう達成してしまった。
皇ちゃん:同接はまだ100人くらいだけどな
塔ちゃん:お前は同接者を100人も集める大変さがわかっていなんだ!!!!
:そうだそうだ!
:協会の横暴だ!
:協会員年会費下げろ!
:協会職員の給料上げろ!
皇ちゃん:それは政府に言ってくれ。
繰り広げられるやり取り。
しかしあることを確信した俺はこの問いを投げかけた。
秋月:なんでフロアボスモンスターがスマホ持ってんだ?
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