【第32話】

時は、2018年2月1日頃であった。


なおみは、2018年1月の松ノ内に日進市で暮らしているトーダイ卒の弁護士の男性(37歳)とお見合いして、正式に婚約した。


3月の大安吉日の週末に挙式披露宴を挙げることが決まったので、なおみは結婚準備をすすめた。


婚約者の男性は、4月から法務省に転職することが決まった。


毎月のお給料が高額になるので、なおみは専業主婦で通して行くことができるようになった。


なおみは、幸せいっぱいで夢心地に包まれていた。


そんな幸せいっぱいのなおみに魔の手が忍び寄った。


時は、2月24日の午後3時過ぎだった。


ところ変わって、ジェイアールナゴヤタカシマヤのブライダルコーナーにて…


なおみは、婚約者の男性と一緒に楽しく衣装合わせをしていた。


このあと、婚約者の男性はウェディングプランナーの女性と一緒に打ち合わせに入った。


なおみは、試着室にいた。


その時であった。


竹宮が突然試着室に入った。


試着室にいたなおみは、おどろいた声をあげた。


「なおみさん。」

「ヒィィィィィィィ!!」

「どうかなされましたか?」

「何ですかあなたは!!土足で上がり込まないで!!」

「ああ…シッケイしやした…ちょっと…道に迷ってねぇ…」

「いいわけを言うてもダメよ!!帰ってよ!!」

「わかったよぉ…」


竹宮は、なおも煮え切らない表情を浮かべた。


なおみは、ものすごくイラついた声で竹宮に言うた。


「あなたは、アタシの声が聞こえますか!?」

「聞こえてるよぉ…だけど…耳が遠いのだよぉ…」

「いいわけを言わないでよ!!」

「いいわけじゃないよぅ…」


竹宮は、おどし口調の声でなおみに言うた。


「こっちは、あんたの弱みを全部にぎっているのだぞ…数ヶ月前に、あんたら母娘おやこが豚小屋の中でえげつないことをしていた写真のネガを持っているのだぞ…」

「やめてください!!」

「なおみさん…これ以上逃げ回らない方がいいですよ…そのうち、あんたのウェディングベールに魔の手が忍び寄って来ると言うことを忘れないでくださいね…ああ…シッケイしやした…では…お幸せに…ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」


竹宮は、不気味な声でわらいながら試着室から出た。


竹宮におどされたなおみは、足が凍りついてその場から動けなくなった。


いったいどういうことよ…


こわい…


こわいわ…


その日の夜8時過ぎであった。


場所は、ふたりが暮らしている家にて…


家の食卓で、ふたりはひとことも言わずに晩ごはんを食べていた。


この時であった。


(ジリリリリン!!ジリリリン!!)


電話のベルが鳴ったので、りつよが電話に出た。


電話は、なおみの婚約者の男性の親御おやからであった。


「もしもし…ああ…(なおみの婚約者の男性)さんのおかーさまでございますね…お元気でしょうか…えっ…挙式披露宴を少しだけエンキしてください…もしもし、どうしてエンキしないといかんのですか?」


婚約者の男性の母親は、困った声で言うた。


「あのー、私たちはいじわるでエンキしてくださいと言うたわけじゃないのよ…ほんの少しだけエンキしてくださいって頼んでいるのよ…ほんの少しだけでいいから(婚約者の男性)に時間を与えてくださいと言うてるのよ…ですから、うちのつごーが急に悪くなったのです…去年から長期入院をしていた(婚約者の男性)の兄が…きょうの夕方頃にキトクにおちいったのです…その上に、あによめが…昼前に吐血したあとジュウトク状態におちいったのです…今、家にお医者さんたちが来ているのです…ふたりの孫が極力不安定におちいるなど…家が危険な状態におちいりました。」


この時であった。


家の中で子どもたちふたりの泣き声が聞こえた。


婚約者の親御おやは、キャッチホンが入ったから待ってくださいと言うたあと別の電話の応対に出た。


受話器のスピーカーから聞こえていた着信音が聞こえた。


りつよは、ものすごくイライラしながら電話を待った。


(カチャ…)


この時、婚約者の親御おやが電話に出た。


「もしもし…さきほど、瑞穂区みずほの病院から電話がありました…(婚約者の男性)の兄が…息を引き取りました…ごめんなさい…」


りつよは、あきれた声で言うた。


「もういいわよ…すみませんけど、(婚約者の男性)さんに伝えてください…結婚したいのであれば違うお相手にかえてくださいって…」

「お相手を変えろって…」

「アタシは、いじわるで言うたのじゃないのです…」

「わかってますわ…」

「すみませんけど…(婚約者の男性)さまに伝えてください…挙式披露宴を取りやめにします…と…」


(ガチャ…)


受話器をおいたりつよは、大きくため息をついた。


なおみは、悲しげな声でりつよに言うた。


「もういいわよ…アタシ…ダンナ…いらない…」


なおみは、そう言うたあと食卓を出た。


その後、なおみは外へ出た。


このあと、なおみはより恐ろしい悲劇に巻き込まれた。


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