【第20話】

それからまた数日後であった。


職場の帳簿に大穴をあけた末に栄南のナイトクラブのホステスに暴力をふるったゆういちろうは、大須のナイトクラブのホステスに乗りかえて同棲生活ドーセーを始めた。


ところ変わって、新しいホステスが暮らしているマンスリーアパートにて…


ゆういちろうは、外へ出ることが恐いので部屋の中に引きこもっていた。


時は、朝8時過ぎであった。


この時、ホステスが夜のおつとめを終えて帰宅した。


「ただいま…あんた大丈夫?」


ホステスの呼びかけに対して、ゆういちろうはおびえた声で言うた。


「こわい…外国へ逃げたい…」

「あんた、れいのナイトクラブのママに目ぇつけられたのね…」

「ああ…どうすればいいのだよ~」

「そうねぇ…」


ホステスは、ゆういちろうに対してこう言うた。


「アタシ…知人に頼むわ。」

「知人?」

「近くでペルシャジュウタンの販売業を営んでいるイラン人の主人に頼む…主人の知り合いにダフ屋がいるのよ。」

「頼む…日本このくにと国交がない国に行きたい…頼む…」

「分かったわ。」


ゆういちろうは、ホステスの厚意に甘える形で国外逃亡することを訣意けついした。


それが原因で、よしえとあやみが恐ろしい事件に巻きこまれたようだ。


時は、夕方4時過ぎであった。


またところ変わって、飯田市北方のゆういちろうの姉夫婦の家にて…


よしえは、姉夫婦から富士ふじみやで暮らしている義兄の実家へ帰ることを聞いたので、気持ちが不安定になった。


ゆういちろうの姉は、よしえに対して悲しげな表情で説明した。


「よしえさんごめんなさい…よしえさんとしゅうさくにはもうしわけないけど…8月いっぱいでこの家を売ることになったのよ。」

「家を売る…どうして家を売るのですか!?」

「アタシとダンナは、富士ふじみやへ帰るのよ。」

「富士ノ宮へ帰るって…」

「ダンナの実家へ移るのよ。」

「もしかしたら、主人がヤクソクをやぶったからこの家を売ると言うのですか!?」

「ううん、違うのよ。」


ゆういちろうの姉は、ひと呼吸おいてからよしえに言うた。


「実家のあとつぎがいなくなるおそれが出たのよ。」

「あとつぎがいなくなるからなんだと言いたいのですか!?」

「だから、実家のあとつぎが他にいないからダンナがあとを継ぐのよ…」


ゆういちろうの姉は、悲しげな声でよしえに言うた。


「ダンナの兄が…くも膜下出血を起こして倒れたのよ…」

「ダンナさんのお兄さまがくも膜下出血で倒れたって…」

「それが3日前だったわ…だけど、1時間前に義兄の娘さんから電話があって…義兄がキトクになったので早く来てって…」

「キトクになった…」

「うちらは、このあと富士ノ宮へ行くことになったのよ…しばらくの間は、法的な手続きなどで富士ノ宮に滞在することになるのよ。」

「この家を売却するのは、それからあとになるのね。」

「そうよ。」


ゆういちろうの姉はより深刻な表情でよしえに言うた。


「よしえさんはどうするのよ?」


よしえは、つらそうな声でゆういちろうと離婚することを決めたと言うた。


ゆういちろうの姉は『そうしなさい…』とよしえに言うたあと、ケーソツな声で言うた。


「ゆういちろうはナマケモノだからよしえさんに逃げられたのよ…うちらはなんのショックもないわよ。」


ゆういちろうの姉の夫もケーソツな声で言うた。


「そうだよ…独身の方が気楽でいいよ…真剣に結婚を考えている男なんかひとりもいないよ。」

「そうよね…ゆういちろうはかわいそうだったわ…お給料を自由に使えなかったし…楽しみたいことが他にもあったのに…結婚をすすめたのがよくなかったわね〜」

「そうだな〜」


ゆういちろうの姉の夫は、よしえに今後のことについてたずねた。


「それよりも、よしえさんは行くあてはあるのかな?」

「えっ?」

「もしないのであれば、妹さんのもとへ行ったらどうかな?」

「妹は、アタシを憎んでいるので無理です。」

「だったら、もう一度話し合いをして仲直りしたらどうかな?」

「できません!!」


よしえは、ひと呼吸おいてからゆういちろうの姉の夫に言うた。


「しゅうさく連れて、名古屋へ移ります。」

「名古屋…名古屋に知っている人はいるのか?」

「います…高校にいた時の後輩が住んでいます。」

「頼るあてはあるのだね。」

「ええ…」

「それなら仕方ないか。」

「あなたもういいでしょ…すぐに行きましょう。」

「分かった。」

「よしえさん、しばらくの間だけ留守番をお願いします。」

「分かりました。」


このあと、ゆういちろうの姉夫婦は急ぎ足で富士ノ宮へ向かった。


さて、その頃であった。


またところ変わって、豊田市小坂本町にあるあやみ夫婦が暮らしている家にて…


あやみにも悲しいしらせが入った。


重朝しげともが勤務している工場が1年後の8月31日を持って閉鎖することが決まった。


重朝しげともは、ものすごく怒り狂った表情で帰宅した。


家の居間にて…


重朝しげともは、よりしれつな怒りをこめながら工場閉鎖のしらせを伝えたあと辞表を叩きつけたとあやみに言うた。


あやみは、おどろいた声で言うた。


「えーっ!!あなた、工場をやめたの!?」

「ああ!!本当だ!!」

「それじゃあ、どうするのよ!?」

「それはあとで考える!!」

「あなた!!」

「なんや!!」

「あと1年残っているのになんでもったいないことをしたのよ!?」

「だまれ!!オレはあの工場で働きたくなかったからやめたのだ!!」

「あなた!!」

「ふざけるな!!」


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた重朝しげともは、近くにあったニポポ人形をキッチンの収納棚のガラス戸に投げつけた。


ニポポ人形がガラス戸のガラスに直撃したので、ガラスが割れた。


重朝しげともは、怒った声で言うた。


「今の工場を続けることはできない!!」

「どうしてよ!?」

「工場は来年の9月に枇杷島びわじまにある特大工場に統合されるのだよ!!それは豊田ここだけじゃない!!愛知県内けんないすべての工場が一ヶ所に統廃合トウゴウされるのだよ!!」

枇杷島びわじまって、豊田ここからうんと遠いわよ!!」

「今ごろ気がついたのか!?」

「それじゃあ、近くの工場に行かせてくださいと言えばよかったじゃないのよ!!」

「近くにはないのだよ!!近くにあった工場も枇杷島びわじまへ移転するのだぞ!!」

「困るわよ!!いくらなんでも困るわよ!!」

「だから工場なんかやめたのだ!!」

「他に近い場所はないの!?」

「なんで近くにこだわるのだ!?」

「お願いだから工場に頼んでよ!!」

「ぶっ殺してやる!!」


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた重朝しげともは、カベにかけていた亡義父の肖像写真しゃしんに硬いものを投げつけた。


肖像写真しゃしんは、カベから床へ落ちた。


思い切りブチ切れた重朝しげともは、亡義父の肖像写真しゃしんをふみつけながら言うた。


「悪いのはオヤジだ!!オヤジが全部悪いんだ!!あの工場に就職したのも…あやみと結婚したのも…くそオヤジが全部決めた!!…オレは…東京の大学を卒業した後は…東京で働く予定だった…それをオヤジが総合商社に内定を取り消してくれと言うた…オレはガマンして今の仕事に就いた!!…オヤジのコネで今の職場に就職したことが不満なんだよ!!」

「なんで亡義父おとうさまの気持ちを理解しないのよ!?」

「ふざけるな!!ワー!!」


(グサッ!!)


思い切りブチ切れた重朝しげともは、テーブルの上に置かれていた刃渡りのするどいナイフを亡祖父の肖像写真に投げつけた。


ナイフが亡祖父の肖像写真しゃしんにささった。


「やめて!!」

「ふざけるな!!ぶっ殺してやる!!」


思い切りブチ切れた重朝しげともは、ナイフで亡祖父の肖像写真しゃしんり裂いた。


亡祖父おじいもオレの人生をズタズタに壊した!!だからぶっ殺してやる!!」

「あなたやめて!!」

「うるせえ!!」


(ガチャーン!!ガチャーン!!)


思い切りブチ切れた重朝しげともは、亡義父と亡祖父の仏だんに食卓のイスを投げつけた。


ふたつの仏だんが粉々に壊れた。


「あなたやめて!!(リュウザンした子ども)の仏だんはやめて!!」


(ガンガン!!ガシャーン!!)


思い切りブチ切れた重朝しげともは、あやみがリュウザンした子どもの仏だんを金属バットで叩きつけて壊した。


あやみは、叫び声をあげながら言うた。


「なんで(リュウザンした子ども)の仏だんを壊したのよ!!」


重朝しげともは、怒った声で言うた。


「おいあやみ!!今から3年前どこにいた!?」

「あなたやめて!!」

「(リュウザンした子ども)の実の父親に会いに行ったのか…お前の幼なじみの園川とあられもないことをしたのか!?」

「園川くんは、お友だちと言うたわよ!!」

「ウソつくな!!」


(パチーン!!パチーン!!パチーン!!パチーン!!)


「いたい!!いたい!!」


思い切りブチ切れた重朝しげともは、平手打ちであやみの顔を激しくたたいた。


(ドサッ!!)


この時、あやみが床の上に倒れた。


「やめて…イヤ!!」


思い切りブチ切れた重朝しげともは、あやみが着ていたスカートを脱がした。


「やめてやめてやめてやめてやめてやめて!!」

「ふざけるな!!オレよりも園川のクソガキの方がいいのか!?」

「園川くんはお友だちよ…お友だちだと言うたわよ…イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)


思い切りブチ切れた重朝しげともは、あやみが着ていた白のブラウスを激しく破いた。


その後、重朝しげともはあやみが着ていた黒のストッキングを破きながら怒鳴り声をあげた。


「お前の友人たちはオレをグロウした!!オレは友人知人がひとりもいなかった!!小学校から大学まで友人がいなかったんだ!!ふざけるな!!ぶっ殺してやる!!ぶっ殺してやる!!」


(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)


「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


重朝しげともからどぎついレイプの被害を受けたあやみは、それから2時間後にくびをしめられて殺された。


それから4時間後であった。


よしえは、竹宮から『家の近くにある豚小屋へ来い!!』と電話で脅迫された。


よしえは、パジャマを着たまま家の近くにある無人の豚小屋へ行った。


よしえが敷地内に入った時であった。


この時、黒の目出し帽をかぶった男がよしえをはがいじめにしたあと豚小屋の中へ無理やり入れた。


豚小屋の中にて…


よしえは、栄南のナイトクラブのママと会った。


わけが分からなくなったよしえは、ひどくおびえながら言うた。


「あのぅ…」

「あんたがよしえさんね!!」


ナイトクラブのママがよしえに対して凄んだ声で言うたので、よしえはひどくおびえた。


この時、ヤキソバヘアで黒のサングラスをかけていてももけた(ボロくなった)ハラマキ姿で地下足袋を履いていた竹宮がよしえの前に現れた。


竹宮は、不気味な声でよしえに言うた。


「よしえさん…今日中にきっちりとオトシマエをつけてもらいまひょか?」

「オトシマエってなによ?」

「あんたのダンナがワテのレコの顔をどついて大ケガを負わせたあげくに、北朝鮮へ逃亡したようでおますな…せやから、ワテはそうとう怒ってまんねん!!」

「ちょっと待ってよ!!うちのダンナがあんたの女を殴ったと言うショウコはあるの!?」

「ごちゃごちゃごちゃごちゃぬかすな!!どんなにいいわけを言うてもアカンもんはアカンで!!」


この後、恐ろしいゾンビの覆面をかぶった10人前後の男たちがよしえを取り囲んだあとその場に寝かせた。


「やめて!!やめてやめてやめてやめてやめてやめて!!」


よしえは、叫び声をあげながら許し乞いをした。


「小さい子どもがいるからやめて…子どもいるからやめて!!」


よしえは、恐ろしいゾンビの覆面をかぶった男たち10人からボロボロに傷つくまで犯された。


それから180分後であった。


よしえが目を覚ました。


よしえの顔は真っ赤にはれていた。


着ていたパジャマは、全部脱がされた。


身体は、どす黒く汚れた状態であった。


よしえは、フラフラとした足取りで豚小屋内を歩いた。


その末に…


(ドボーン!!ブクブクブクブクブクブクブクブク…)


よしえは、小屋の中にあった汚水槽に落ちて沈んだ。


物語は、ドサイアクの形で膜を閉じた。


【おわり】



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