【第18話】

(ジリリリリリリン!!)


時は、8月6日の朝8時過ぎであった。


あやみ夫婦が暮らしている家に、電話のベルがけたたましく鳴り響いた。


ものすごく不安定な表情を浮かべているあやみは、電話に出た。


受話器のスピーカーから豚小屋にいる豚たちがものすごく不安定な鳴き声をあげていたのが聞こえた。


怖くなったあやみは電話を切った。


しかし…


(ジリリリリリリン!!)


また電話のベルが鳴り響いた。


あやみは、また電話に出た。


この時、受話器のスピーカーから竹宮の声が聞こえた。


「ああもしもし、朝からすいませんね…すみませんけど、(22歳の新入り)さまはいらっしゃいますか〜」


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れたあやみは、受話器を切った。


しかしまた…


(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)


また電話のベルが鳴り響いた。


この時、重朝しげともと職場の新入りさん3人があやみのもとへやって来た。


重朝しげともは、困った声で言うた。


「あやみ…電話のベルが鳴りっぱなしだよ…」

「出ないで!!」

「どうしてだよ…電話をかけて来た人が困っているのだよ〜」

「出ないでと言うたら出ないでよ!!」

「新入りさんのご家族の方だったらどうするのだよ?」

「出ないでと言うたら出ないで!!」

「だけど、電話をかけてきた人が困っているのだよ〜」

「じゃあ出なさいよ!!」

「分かったのよ…」


重朝しげともは、ブツブツ言いながら受話器を手に取ったあと話をした。


「もしもしどちら様ですか?…どちらへ電話をかけているのですか?…間違い電話をしないでください…」


重朝しげともが電話を切ろうとした時であった。


受話器のスピーカーから竹宮の恐ろしい声が聞こえた。


「またんかいコラ!!」


竹宮は、重朝しげともに職場の新入りさんの22歳の男性従業員さんの婚約者を豚小屋に監禁したと伝えたあと、新入りさんに変われと凄んだ。


受話器の向こう側からより強烈な鳴き声をあげている豚たちの声が聞こえた。


重朝しげともは、怒った声で『拒否します!!』と言うた。


ところ変わって、豚小屋にて…


新入りさんの婚約者の女性は、ボロボロに傷ついた姿でゾンビの覆面をかぶった男数人にナイフを突きつけられておどされた。


竹宮は、受話器の向こう側にいる重朝しげともに対して要求を突きつけた。


「おい!!どうしても出さんのか!?…それじゃあ(22歳の新入りさん)のかわいい婚約者はどうなってもいいのだな!?よく分かった…ワイらの要求を拒否したのでこれから実力行使に出るぞ!!」


(ガチャーン!!)


電話は、そこで切れた。


豚小屋にいる豚たちが、より強烈な鳴き声をあげた。


またところ変わって、あやみ夫婦が暮らしている家にて…


この時、22歳の新入りさんのスマホのラインの着信音が鳴った。


新入りさんは、スマホを取り出したあとラインをひらいた。


この時、死神マークからのライン通知が来た。


ライン通知にはこう書かれていた。


『最新作のビデオです…』


メッセージを読んだ新入りさんは、テンプされているフォルダをひらいた。


そしたら…


強烈な女性の叫び声が聞こえた。


「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


スマホの画面に、事件現場の豚小屋の様子が映っていた。


新入りの男性従業員さんの婚約者の女性が覆面をかぶった男たちによってナイフでズタズタにり裂かれて亡くなった。


より過酷な映像を見た新入りさんは、その場に倒れた。


(ドサッ、ブクブクブクブクブクブクブクブクブクブクブクブク…ドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロ…)


口から大量に白い泡と吐血をしたあと、呼吸が止まった。


同時に全身からウジがたくさんわき出た。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


あやみは、よりしれつな悲鳴をあげた。


(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)


再び電話のベルが鳴り響いた。


重朝しげともが電話に出た。


受話器のスピーカーから竹宮の声が聞こえた。


「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…ゴシューショサマでしたね〜…(22歳の新入り)さんは、婚約者よりもマージャンの方が大事だと言うたので、婚約者さまは亡くなりました…そうなったのは上司であんたに落ち度がおますねん…でしょ…すいませんけど、あとふたりの新入りさんに伝えてくださいな…マージャンが大事だというのであれば、大事なものを一つずつ壊しますよ…と…あんたも悪いことに気がつけよ…せやからあんたの嫁がリューザンしたのだよ…なさけないの…ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…ざまーみろボケテイシュ…」


(ガチャ…ツーツーツーツーツーツーツーツー…)


電話は、ここで切れた。


新入りのひとりが重朝しげともに声をかけた。


「係長。」

「なんだ?」

「どうかなさいましたか?」

「やかましい!!」

「係長!!ケーサツに知らせてください!!」

「分かっている!!」

「(22歳の新入りさん)がショック死で亡くなったのに、泣き寝入りするのですか!?」

「ケーサツに知らせるな!!今回の不手際はわたしひとりにある!!」

「しかし…」

「ケーサツに知らせるなと言うたら知らせるな!!」


思い切りブチ切れた重朝しげともは、トイレに逃げ込んだ。


ふたりの新入りさんは、口々に言うた。


「なあ。」

「なんだよ。」

「やつは他になんて言ったのだ?」

「あの様子だと、次はふたりのうちのどちらかの家族がギセイになるぞと言うた…」

「なんだって!!」

「やつらは本気だよ…」

「そんな〜」


ふたりの新入りさんは、ひどくおびえまくった。


どうすればいいのだ…


どうすればいいのだ…


係長はケーサツに知らせるなと言うた…


それはどう言うことか…


ケーサツに知らせたら…


やつらは、さらに過激な行動に走ると言うのか…


どうすればいいのだ…


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