【第2話】
多川ひろつぐは、2017年2月に横浜の関内大通りの交差点でトラックを運転中に横断歩道を渡っていた30代の女性と3歳の男の子をひいて死なせたひき逃げ事故を起こした。
事故を起したひろつぐは、事故現場から逃走した…
それから何日か後にひろつぐはケーサツに逮捕された…
逮捕~地検に起訴~裁判員裁判で執行猶予がついた有罪判決を受けた…
判決を受けた後、ひろつぐはシャクホウ~つぐないの日々を過ごした。
しかし、執行猶予の期間中に殺人事件を起こしたあと三島市から逃げた。
ひき逃げ事件で逮捕されたひろつぐは、ケーサツの取り調べに対して『ケータイのナビを見ながらトラックを運転していた。』と供述した。
裁判員裁判の時、ひろつぐは『どんな厳罰も受けます…逃げません…』と裁判長に言うた。
しかし、検察側が論告求刑公判で『無期懲役に相当する判決をお願いします!!』と裁判長に言うた。
ひろつぐは、検察側から極刑に近い刑を求刑されたので、ビービービービー泣いて裁判長にあわれみを乞うた。
「イヤだ…ローヤはイヤだ!!車は運転しません!!免許証を返納します!!ローヤはイヤだ!!」
その結果、ひろつぐは裁判長から執行猶予付きの有罪判決を下された。
5月中旬にひろつぐはシャクホウされた。
その後、保護観察士の男性からの紹介で三島市内で暮らしている知人が経営するクリーニング工場に再就職してつぐないの日々を送った。
だが、再就職して3日目に寮の規約をやぶったことで生活態度が悪化した。
6月に入ったあたりであった。
ひろつぐは、生活態度に加えて勤務態度も悪くなった。
事件が発生した日、ひろつぐは現場主任の男性から言われた言葉に腹を立てて職場放棄した。
保護観察士の男性に対して『オレはあんたの飼い犬じゃねえんだよ!!』といい放ったあとグーでこめかみを殴った。
そして、家出した。
6月12日の朝7時過であった。
場所は、
実家の居間には、両親とひろつぐのイトコのひでのり(48歳・区役所勤務)の家族(妻・42歳と三女一男)がいた。
家族が朝ごはんを食べていた時に電話がかかってきた。
電話は、三島市内で暮らしている保護観察士の男性からであった。
母親が電話に出た。
「もしもし…(保護観察士)さん…このたびはひろつぐがゴメイワクをおかけしてもうしわけございませんでした…ひろつぐがもし帰ってきたら電話するように言うておきます…」
母親は、受話器を置いたあと大きくため息をついた。
端にいた父親が、怒った口調で言うた。
「ひろつぐが脱走したのか!?」
「ええ…」
「もういい…あのクソバカは家には絶対に入れるな!!」
「どうしてよ!?」
「あのクソバカを入れるなと言ったら入れるな!!」
「あなた!!」
「今は、ひでのりのほうがかわいい…あのクソバカは憎たらしいから大キライだ!!」
「あなた!!」
「ひでのりは東京の大学を卒業したあと、
思い切りブチ切れた父親は、黒の手提げカバンと作業用のジャンパーを持って家から出た。
この後、ふさえ(21歳・大学生)とふさこ(16歳・高2)がごはんをたくさん残したあと家から出た。
ひでのりも、ブアイソウな表情で家から出た。
この時、ひでのりの妻・あずさ(42歳・専業主婦)がもうしわけない表情でひろつぐの母親に言うた。
「おばさま…」
「あずささん、どうしたの?」
「おばさま…やっぱり…居づらいわ…」
「どうしたのよ…」
「だって、おじさまがイライラキリキリとしていたから…」
ひでのりの母親は、過度にやさしい声で言うた。
「ああ、あずささん…ごめんね…おじさまは経営している工場のことで頭がいっぱいになっていただけよ…もうすぐボーナスの時期だから、従業員さんたちにボーナスが出せるかどうかで悩んでいただけよ。」
「そうでしょうか?」
あずさは、エプロンをはずしながらひろつぐの母親に言うた。
「アタシとひでのりさんは…ひろつぐさんの将来のために取っておいた貯金や学資保険を全部解約して、アタシたちの結婚資金に回していただいた…それが原因で…」
「ああ…そんなこと気にしなくてもいいのよ。」
「ですが…」
「あずささんがそのように思うのであれば、幸せに暮らしていることをしっかりとアピールすればいいだけよ。」
「それではよくありません!!」
「そんなことないわよ…あなたたち家族が幸せに暮らしていればおじさんとおばさんは十分よ…ああ、もうすぐひであき(6歳)とほのか(4歳)の幼稚園のお迎えのバスが来る時間が来るわよ。」
「ああ…そうだったわ…ひであき、ほのか…幼稚園へ行く時間よ。」
あずさにやさしく言うたひろつぐの母親は、大きくため息をつきながらつぶやいた。
これから先、どうすればいいのよ…
事件発生から11日目の6月22日であった。
ひろつぐは、舞阪(浜松市)の海水浴場のベンチで野宿をしていた。
ひろつぐは、巡回中の警察官が発見されたあと警察署に保護された。
ひろつぐはクリーニング工場をクビになったので、覚王山の実家へ帰ることになった。
夕方6時頃であった。
実家の居間には、ひろつぐと両親とひでのりとひであきとほのかがいた。
テーブルの上には、小皿が並んでいた。
晩ごはんは、あずさの手作りのゆでた豚肉のサラダである。
食卓では、父親が腕組みをした状態でイライラしていた。
母親は、心配そうな声で父親に言うた。
「あなた…あなた…」
「なんや!!」
「あなた…」
「オラ!!なんでひき逃げ魔を家に入れた!!」
「あなた!!」
「ごはんいらない!!」
イスから立ち上がった父親は、書斎へ入った。
母親は、よりあつかましい声でひろつぐに言うた。
「ひろつぐ!!」
「なんだよぉ…」
「ひろつぐ!!おとーさんがなんで怒っているのか分かっていないわね!!」
「なんだよぉ…」
「ひろつぐは執行猶予期間中の身よ!!シッコウユウヨ!!」
「おばさま、やめてください…オレしんどいのだよ~」
ひでのりがつらそうな声で言うたので、母親はやさしい声で『ごめんね。』と言うた。
母親は、ひと間隔置いてから厳しい声で言うた。
「ひろつぐ!!晩ごはん食べたらおかーさんと大事なお話をします…分かっていたら返事しなさい!!」
「なんだよ話って…」
「シッコウユウヨの意味を教えるために話しをするのよ!!」
この時、エプロン姿のあずさが大きめの容器を持って食卓に来た。
そして、みんなが食べる豚肉サラダを小皿に入れた。
ひでのりは、よりあつかましい声であずさに言うた。
「あずさ…あずさ!!」
「あなた…」
「ふさえとふさこはどこへ行った!?」
「ふさえは大学のお友達とジョシカイ、ふさこはジュク…」
「なんだと!!」
「あなた!!」
「ふさえは3回生のくせになにやってるのだ!!」
「あなた!!」
「ドーキューセーたちがシューカツしている時にジョシカイへ行くなんてけしからん!!」
「だけど…」
「あずさはだまれ!!オレに意見を言うのか!?」
「あなたがそのように言うのであればふさえに向き合ってよ!!」
「やかましいだまれ!!」
思い切りブチ切れたひでのりは、イスから立ち上がったあと寝室へ逃げた。
この時、あずさは途中でサラダを入れる手が止まった。
ひであきとほのかが泣きそうな表情を浮かべていたので、あずさはやさしい声で言うた。
「ああ、ごめんね…ごはん食べたいのよね…今サラダ入れてあげるからね…7時からみたいアニメがあるよね…」
「みない!!」
「みない!!」
「どうして見ないのよ…大好きな(アニメ番頭)がもうすぐ始まるよ〜」
思い切りブチ切れたひでのりとほのかは、スプーンをひろつぐに投げつけた。
あずさは、怒った声でふたりに言うた。
「ひであき!!ほのか!!」
「おカーさんなんか大キライ!!」
「大キライ!!」
「いいかげんにしなさい!!」
あずさに怒鳴られたふたりは、ビービーと泣き出した。
(ガーン!!)
思い切りブチ切れたひろつぐは、サラダの入った入れ物をあずさに投げつけた。
「オドレぶっ殺してやる!!」
「ひろつぐ!!」
「オレがダメになったのはあんたらのせいだ!!」
思い切りブチ切れたひろつぐは、ワーワーと叫びながらひであきがいる部屋に入った。
「オドレぶっ殺してやる!!」
「ごめんなさい…ひろつぐさんごめんなさい…」
思い切りブチ切れたひろつぐは、ひであきをボコボコに殴りけた。
その後、ひろつぐは家じゅうを暴れまわってめちゃくちゃにした。
その翌朝であった。
朝のワイドニュース番組のトップでひろつぐが殺した男が横浜の交通死亡事故で亡くなった母子の夫であることが伝えられた。
これより、恐ろしい悲劇の幕があがった。
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