幕間 犯人

「まさか……そんな……」


 アルブ王国から帰還した後、リタ団長から聞いた話に、俺は動揺を隠せなかった。


「ルビちゃんから、確かにそう聞いたよ。ローグを殺したのがディアスだって。サーナちゃんが言ったらしい」


 そんな筈はない。

 出来るわけがないのだ。


 それは俺が一番、よく知っている。


「確かに、アルブと冷戦状態の帝国にはおやっさ……ローグを殺すメリットはあるかもしれない。でも、あの人がディアスなんかに……」


「まあ、何か裏があるだろうね。でも、この件にディアスが関わってんのは確かだ。ブライトが裏で糸を引いてんのか、はたまた無関係か……どちらにせよ、帝国絡みは面倒ごとになりそうだなぁ~」


 サーナ・キャンベル、ベリィの幼馴染で行方不明だと聞いていたが、先日の彼女が嘘をついているとは思えない。

 本当にディアスがローグをやったのか、ブライトがサーナに嘘を吹き込んだのか、前者だとすれば、俺は全力で帝国を潰しに行くだろう。


「まあ私は帝国とケンカになっても構わないけどね。どうせ負けないし。エドちゃんもやってやりたいでしょ?」


 リタ団長ならば、帝国を滅ぼすことぐらい容易いだろう。

 とは言え、真偽はまだ分からない。

 慎重に調査を進めていく必要がありそうだ。


「……もし奴が本当におやっさんを殺ったなら、刺し違えてでも仇は取ります」


 既にベリィもこの事を知っている。

 あの子には背負わせたくない。


 奴を殺す責任は、俺が取る。


「エドちゃん」


 俺を呼ぶリタ団長の声はいつも通り気が抜けていて、少し枯れている。


「はい?」


「ベリィちゃんの事、助けてあげようね」


 リタ団長はそう言うと、手に持っていたボトルを口に運んでぐびぐびと飲んだ。


 そうだった。


 奴の顔を思い浮かべて、つい復讐心が強くなってしまったが、俺の目的はベリィを守る事が最優先なのだ。


「必ず、ベリィを守ります」


 それが、おやっさんの願いなのだから。

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