第13話 戦いは新たなるステージへ……
「……で、なんでみんな動物病院に来てたの?」
「え、まあこれは優ちゃん……いやーははは」
あやふやに言葉を濁す友人の男に代わってシンイチが答える。
「こいつがさあ、女の子を探しに行こうってんで、その道すがら立ち寄ったのさ」
「女の子?」
「ああ、ははは……俺も彼女が欲しいなーって、ははは……思っちゃってさ!」
「ふーん、いい子は見つかったの?」
はるちゃんの頭をなでなでしながら問いかける優ちゃん。
「それがさ……いたのはあのナースゾンビだから、話が通じなくて。はは、まあ……後は優ちゃんも知っての通り」
「そっかあ、残念だったね」
肩をすくめるシンイチの隣で、優ちゃんは少し悲しそうな顔ではるちゃんの背中を撫でている。
「かわいい子もいなかったしな」
「そうなの?」
「ああ、犬猫の方がよっぽどかわいかったよ」
「そうだ……なあ聞いてくれよシンイチ!どさくさに紛れてナースのおっぱいを触ったんだけどさあ、すげえ変な感触だったんだよ。なんか溶けかかったロウソクみたいでさ……あれは間違いなくゾンビだよなあ」
「落ち着け。優ちゃんのおっぱいはちゃんとぷるぷるしてたぞ」
「シンイチ」
「ごめんなさい」
「くそくそくそくそくそくそくそ」
「落ち着けって……」
シンイチが友人の男をなだめる一方で、優ちゃんははるちゃんを撫でながらにこりと微笑む。
「女の子を探すならいい場所知ってるよー」
「「本当か優ちゃん!」」
シンイチと友人の男は思わず声を揃える。
「うん!」
「優ちゃん、教えてくれ!」
「俺たちはどこを目指せばいいんだ!」
「えっとねー女子校!」
女子校……優ちゃんの言葉を聞いた途端、シンイチたちの顔つきが変わる!これは新たな戦いの始まりに違いない!
戦いの予感に血沸き肉踊らせ息を荒げる二人を尻目に、優ちゃんの指さす方に向かって走り出すスーパーゴールデンハルクことはるちゃん。
そのふかふかの毛にしがみつきつつ、シンイチたちは女子校へと急ぐ。
「もがあー」
はるちゃんの走りはまさに疾風迅雷だった。時速200キロを優に超える速度で走るその姿はまさに黄金のミサイルだ。単なる雑魚ゾンビなど蹴散らされるか、怯えて逃げ惑うかの二つに一つでしかない!
「もん、もん、がぁあぁーーーっ!!」
「おわあーっ!速すぎだあ!死ぬぅぅううっ!」
シンイチたちの絶叫が響き渡るが、もはや誰にも止められない。
ごうごうと風を切り裂きながら突き進むスーパーゴールデンハルクは、まるで異世界からの侵略者のように荒れ果てた道路を爆走するのだった。
「はるちゃんすごいねー」
「で、女子校ってどこにあるんだ優ちゃん!?」
「このまま真っ直ぐ。もうじきつくはずだよ」
衝撃の実話を基に予期せぬ恐怖に襲われるサバイバル・ヒューマンドラマが今始まる!
そしてとある街角にて……優ちゃんの指さす先には女子校があった。
「よーし、ここだね」
「もがあー!」
はるちゃんは校門の前でスピードを落とすとのっしのっしと歩き出す。おそらく女子校生ゾンビたちを踏み潰さないように、というはるちゃんなりの配慮だろう。何という優しい気配りだろうか。
「もんがー」
そんな優しいはるちゃんに女子校生ゾンビたち……いや、女子校生ゾンビの皆さんは大喜びで飛びつくと、キャッキャウフフとすぐさま自撮りを始め……などということもなく。
かといって刺す股を持ったガードマンゾンビやら守衛ゾンビが飛び出してくるわけでもなく、校内は不気味なまでに静まり返っていた。
はるちゃんはシンイチたちを背中に乗せたまま、敷地内にずかずかと乗り込んでいく。
すると……いた!ミニスカゾンビが!
「うわぁああ!シシシ、シンイチ、もうだめだ!早く降りよう!あそこにミニスカがいるぞ!希望はまだあるぞ!それ行け!」
「落ち着け。まだその時じゃない」
「シンイチ!俺は女の子に抱きつきたいんだ!!」
「落ち着け。優ちゃんが怖がるだろ」
「んふふっ、大丈夫だよー」
ミニスカゾンビの姿に我を忘れて歓声を上げる友人の男。だがミニスカゾンビはシンイチたちのことなど目もくれず、ぼんやりと空を見つめているだけだった。
「んが、もが」
はるちゃんはそのままミニスカゾンビの横を通り過ぎると、ずんずん奥へと進んでいく。どこへ行くのかとシンイチたちが疑問に思っていると、はるちゃんは校舎近くの木陰でしゃがみ込んでしまった。
「んがぁ……」
「はるちゃんは、ここで寝るってさ」
「そっか、ずいぶん走らせちゃったもんな」
どうやらここで一休みしたかったらしい。
なんと肝の据わった奴なのだろうか。
はるちゃんの背中から降りるとシンイチは大きく伸びをする。
「シンイチ!行こうぜ!俺は女の子のおっぱいをもみしだきたいんだ!」
「落ち着け。わかってるよ……ついでにはるちゃんのご褒美でもないか探してみるか」
「シンイチ!あっちにミニスカがいっぱいいるぞ!」
「ん?」
友人の男はすっかり骨抜きにされて、もはやおさわりゾンビと化してしまったのかもしれない。
だがそれも無理はない。
何しろミニスカゾンビの集団が敷地内を徘徊し始めたのだから!
果たして理想の女ゾンビはいるのか!刮目して見よ!
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