第四章 終の棲家

第38話 内見(1)


 11月に入り、暖かく穏やかな晴天の日が続いている。ただ、先日おとずれた台風と共に、夏の残暑はすっかりと消え、気温は冬へと近づいていた。


 北の方ではすでに雪が降っている地域もあるそうだ。

 ただ、北海道や日本海側とは違って、この辺りで雪が降ることは珍しい。


 冬になったからといって、雪の心配をする必要はないだろう。

 しかし備えをするに越したことはないのも事実だ。


 首都圏で少しでも雪が積もれば、鉄道ダイヤは乱れ、帰宅時は激しい混雑になる。

 列車本数の少ないローカル線と違って、過密ダイヤの首都圏では、雪が降った際の対策は難しい。


 その影響は首都圏に限らず、周辺地域にも混乱を与える。


(冬の【怪異かいい】も存在するしな……)


 いや、そっちの方は俺がしなければならない心配だった。

 一般人は「電車の遅れ」や「転倒による怪我けが」に気を付けていればいいだろう。


 後は水道管の凍結防止だろうか?

 車があるのなら、冬用タイヤの準備もしておきたい所だ。


 問題なく発進したはいいいが――交差点に差し掛かった際――ブレーキが効かず、雪にハンドルを取られる事態は容易に想像できる。


 歩行者の場合は、それに巻き込まれる可能性もあるだろう。

 心霊スポットが増えるのは勘弁して欲しい。


 まあ、不用意に出掛けないのが一番だ。


(猫にとっても、温かい家にる方がいいからな……)


 雪が降った日は「炬燵こたつで丸くなる」と歌にもある。

 被毛におおわれているので、一見暖かそうだが、猫は寒さに弱い。


 体が小さいため、外気温に影響されやすいのだ。

 また『イエネコ』の祖先である『リビアヤマネコ』は砂漠地帯に生息していた。


 そのことも影響するらしい。

 水をあまり飲まないのも、砂漠地帯に生息していた祖先が影響しているようだ。


 加えて、多くの猫は室内環境で育てられている。

 そのため、寒さに対する免疫めんえきは低い。


 人間と同じで、猫もはげしい寒暖差には弱いようだ。


(それに「強いストレス」を感じると調子が悪くなるらしいな……)


 確か「猫にも『五月病』がある」という話を聞いた。

 4月は飼い主の生活環境も変わる。


 帰宅時間が遅くなったり、引っ越しをしたりすることもあるだろう。

 例えば「娘が就職をして1人暮らしを始めた」としよう。


 家族の中で一番世話をしてくれていた人間が彼女であった場合、猫にとっては相当なストレスになる。


 季節の変わり目は、気温の変化だけではなく――


(環境の変化にも注意が必要というワケか……)


 一方で寒い地域原産の『サイベリアン』のような猫は「寒さに強い」とされている。


 代表的なのは『ペルシャ』や『メインクーン』『ヒマラヤン』などの長毛種だろう。


 初心者が飼うのであれば『ノルウェージャンフォレストキャット』がオススメらしい。賢くて飼い主に従順。人に対しての信頼も厚い。


 新しい環境にも順応できるようだ。北欧神話に登場する猫たちの「モチーフとして考えられていた」という逸話いつわもある。


 雷神トールでさえ持ち上げる事の出来なかった猫(正体はヨルムンガンド)や、女神フレイヤが車をかせるために用いた2頭の猫がそうだ。


(どうやら、よほど古くからノルウェーに生息していたらしい……)


 よく見かける日本猫(雑種)も、そのほとんどは「(換毛期のある)ダブルコートだ」といわれている。


 被毛が上毛オーバーコート下毛アンダーコートの二重構造になっているため、彼らも寒さには強い。


 ただ、長毛種でも『メインクーン』はシングルコートで、『サイベリアン』はトリプルコート(三重構造)だったりする。


 また「寒さに強い」されるダブルコートとは言っても、長く室内飼いで育ってきた猫は「寒さに対して弱くなっている」と考えた方がいい。


 ダブルコートだから――という理由ではなく、個体差やエアコンの性能による違いもあるので、温度設定は猫の様子を見て決めるべきだろう。


 猫が寒がっている時は体を丸めていたり、毛布などから出てこなかったり、毛を逆立てて体をふくらませていたりするので、分かりやすい。


(いや、冬場の猫はだいたい、そんな感じか?)


 水を飲まない、体を丸める頻度ひんどが多いなど、普段と違う行動を取るので、飼い主なら気付くだろう。


 ひざの上に猫が乗ってきて「離れてくれない」という経験をした飼い主もいるハズだ。


 猫は体温が下がってしまうと『猫風邪』などの病にかかりやすくなってしまう。

 そのため、早めに対策したい所である。


 特に免疫めんえい力の低い仔猫は発症しやすい。感染力も高いため、多頭飼いをしている場合、あっという間に他の猫にも感染してしまうだろう。


 猫風邪を根本的治療するのは、ほぼ不可能と言われている。

 医師の指示にしたがい、自然治癒を待つのが一般的だ。


(死亡率が高いことも厄介だな……)


 また、冬場は運動量が少なくなる傾向にある。

 これも水を飲む量が減ってしまう原因だ。


 そうなると尿路結石症を引き起こす可能性も高くなる。

 まずは、ぬるめの水を用意することで水分補給をうながすのがいいだろう。


 後は加湿器と空気清浄機を併用して、エアコンによる乾燥対策をする。

 ブラッシングで血行を促進させるのもいい。


なにやら、いたれりくせりでうらやましいな……)


 そう思ってしまうのは、仕事中だからだろうか?

 築30年で6階建ての中古マンション。リノベーション済みの物件だ。


 部屋の内装からは、いつ建てられたモノなのか推測するのは難しい。

 日当たりはあまり良くないが、それが依頼者の希望だ。


 だが、それ以外は特に問題はなさそうである。

 大学生になって1人暮らしをする際は、こういった部屋もいいかしれない。


(お金をめておこう……)


 そのためにも、仕事バイトを頑張らなければならないのだが――




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 ฅ^•ω•^ฅ💰 猫森くんはお金を貯めたい

 ようですが、そのためには仕事を頑張ら

 なければいけまん。


 早速、問題発生でしょうか?

 いつものことですね(ฅ'ω'ฅ)♪

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