第26話 順風満帆の裏で
それからと言うもの、アラン様とクラース様が常にどこかで私たちのことを見守ってくださり、エミリアに
相変わらずエミリアの両親が持ち込んでくる縁談は回避できず、上手くいかなかったときはループしていたが、優秀な護衛の協力もあり、なんとか最低限のループで時を進めることができた。
私の実家も王宮魔法杖職人さんたちとの取引も軌道に乗り、たくさんの姉弟たちも不自由なく暮らすことができ、またお父様の収めるエイデン領も豊かになっていった。
順風満帆に時は流れていき、私たちは2年生へと上がった。
⸺⸺アーサー殿下の自室⸺⸺
「おかげさまで2年生になることができました!」
「うむ、ここまでは順調に来られたな」
私とアーサー殿下は2人で乾杯する。
「1年生の間は、もうこの流れで固定でいいと思うんです」
「そうだな。そんな固定とかできるのか?」
「できます。この時計には長針と短針の他に、動かない針があるんです。これを“2”に固定することで、ループしても2年生からになります」
「なるほどな、よし、2年生で固定してしまおう」
「はい」
私は時計の針を操作して、“2”のところで固定をした。
⸺⸺
「それにしても、エミリアにはなかなか良い縁談が来ないな……」
と、アーサー殿下。
「そうなんですよ……エンディングのある人も何人も近付いては来るんですが、全員本当の運命の相手ではないようで、どこかで躓いてしまいますね……」
「そうだな。皆何かしらを抱えてて、結局俺らに解決してほしくてエミリアに近付いてきたみたいだったな。だがこの1年間の間に現れてくれないと……少々マズイな」
「そうです~。私がアーサー殿下と婚姻して学院を卒業してしまったら、エミリアを置いてけぼりにしちゃいます……」
「うむ……」
「私はたとえ貴族でも、エミリアにも恋愛する素晴らしさを知って、愛する人と結ばれてほしいんです」
「そうだな。つまり勝負はこの1年、気を引き締めて取り掛かるぞ!」
「はい!」
アーサー殿下の自室から自分の部屋へ戻った私は、ベッドに横になりエミリアのことを考える。
エミリアは、本当は誰のことが好きなんだろうか。エンディング付きの人が近付いて来ても、結局エミリア自身もなんか違うと言った感じで破談になってしまう。
意を決して1度アーサー殿下をハニートラップに向かわせたこともあったけど、エミリア自身は地位にもあまり興味はないらしく、後から私に「アーサー殿下あんまり好みじゃない」と言われ、彼と共にズーンと凹むはめになった。
エミリアの運命の人、絶対見つけてやる……!
私はグッと決意を固め、起き上がり腕まくりをした。
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