第7話 ダメアン撲滅大作戦

 入学式でまたまた独り反省会をする私。

 どうしても自室まで行かないと時を進められないから、学院長の話は避けては通れないんだよね。


 でも実はその長い話の時間が、反省会にはもってこいな訳ですよ。


 正門でも思ったけど、もうダメアンがエミリアに近付いた時点でアウトな気がするんだ。

 私がどう行動するとかじゃなくて、ダメアンをどう攻略するかがカギになってるみたいだ。


 一応エミリアには気を付けてって言っておいたけど、全然真に受けてなさそうだったしな……。


 本来のゲームでは、エミリアのところにダメアンが話しかけてくるシーンがあるんだよね。

 でもそこにディアナの姿はなかったから、普通にいっても私が止めることはできなくて、気付いたら婚約報告をされる感じになる。


 でも私は悪役令嬢じゃなくて今やヒロインのディアナ。

 エミリアが話しかけられるシーンに先回りをして、話しかけられる前に私がエミリアをどこかへ連れ去る。



 よし、これで行こう。



⸺⸺学生寮 自室⸺⸺


 入学式が終わって部屋に入ると、私は1ヶ月ほど時を進めた。

 確かこの辺りで話しかけられるはずなんだよ。


 それから数日、エミリアとは別の授業で別れたあとも、執念に彼女の後を追い続けた。


 すると、彼女が中庭に差し掛かる頃、ダメアンが彼女へと近づく瞬間を捉えた。


「エミ……」

 話しかけようとするダメアン。そこですかさず私がエミリアを見つけたていで強引に彼女をダメアンから引き離す。


「エミリア見ーっけ!」

「あっ、ディアナ! どうしたの? 確かディアナのさっきまでの授業って……正反対の教室じゃ……」


「エミリアに会いたくなってダッシュでこっち来ちゃった。ね、一緒にお昼食べよ」

「もちろんだよ! っていうか食堂で待ってたら良かったのに……」

「あはは、いいからいいから……」


 よし、ダメアンはポツンと取り残された。作戦成功だ!

 これで流れが変わったからきっといけるはず……!



⸺⸺翌日のお昼休み。


「ディアナ、あのね、私……バシュレ伯爵家の御子息のダミアン様に婚約を申し込まれたの……」


「なっ……何ですとー!?」


 つまり、あの時点から話しかけられるまでダメアンは何度もエミリアを狙いに来るってこと!?


「あれ……どうしたの? ディアナ……」


「エミリア……私、罠の可能性があるって言ったよね……」

 トホホ……っと、肩を落とす。


「うん、だからね、“私たちは貴族の家系。そういうのは私たちの親が決めることですので”って、言ったの」


 エミリア! なんて良い子なの!?


「そうね、きっとご両親同士が決めたことなら大丈夫そうだしね……」

「うん、でも私がそんな声をかけてもらえるだなんて思ってなかったな~」

「エミリア可愛いから心配だったのよ~」

「もー、ディアナったら……」

 エミリアはモジモジする。んもぅ、本当に可愛いんだから。



⸺⸺数日後。


「ディアナ、あのね、両家の親同士で相談して、正式にダミアン様と婚約をすることになったのよ」


「ぐはっ……」

 私はテーブルに突っ伏した。


「あれ、ディアナ……私が婚約するの嫌だった……?」

 はっ、いかんいかん。ここは友として祝福せねば……!


「そんなことある訳ないよ! まだちょっと心配になっちゃっただけ。でもご両親が決めたのなら大丈夫よね。良かった、おめでとう!」


「もう、ディアナは心配症なんだから~。でも、ありがと」



 はぁ、結局ダメだった。その後いつもの理由でダメアンと会うのだけは避けれたけど……。こうなったらもう、パーティ会場に顔を出す訳にはいかないな……。


⸺⸺中間考査後。


「ごめんね私、徹夜で勉強頑張りすぎたせいか体調悪くてパーティ出るのはやめておくわ」

 エミリアの誘いを断る私。


「えっ、大丈夫なの!? 私もパーティ行かないでディアナの看病する!」


「そ、そんな悪いよ……」

 と、思ったけど、大事な分岐点でエミリアを確保しておけるのはチャンスかもしれない。そのため私はこう続けた。

「でも、やっぱエミリアに側にいてほしいな。今夜は一緒に部屋でゆっくりしよ」


「うん、それがいいよ。あったかいココアでも飲みながらテストの反省会でもしよ」


 そう、これでいいんだ。パーティに出なかったらアーサー殿下とは会えないけど、パーティに出ればエミリアが傷付く。


 私は彼への気持ちをぐっと飲み込んで、親友との時間を過ごした。

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