第7話

花井視点


 私は小さい頃とても真面目だった。


 「アンタはなんでいつも宿題やって来ないの!!」

 

 「俺馬鹿だから宿題出来なくて。」


 私はいつも毎日宿題を頑張ってやってる。

 なのに宿題をやって来ないこの馬鹿がムカついて仕方ない。


 「馬鹿だからこそ勉強しないといけないんでしょ!」


「そうだね、これからはもっと頑張るよ。」


そんなことを言っているが、この馬鹿はまた宿題をやって来なかった。


 

 宿題をやって来ない人は他にもいる。


 「アンタ達も宿題やりなさいよ。」


「嫌だよ!そんなのめんどくさい。」


「真面目ぇー!頭勉強でいっぱいなんじゃないの?」


馬鹿なのにそうやって言い返すから馬鹿なのよ。勇者が少しはマシに見えた。


ーーーーーーー

 お母さんが私によく言っていた。

 「お父さんは勉強、勉強ばかり言うけど、もう少しは遊んだりしてもいいのよ。」


 でも私は思った。勉強をしないでいるとあんな馬鹿みたいになると。


ーーーーーーー

 私は知らないうちに周りから距離を置かれていた。


 「勇者、今日も用事が無ければ良いのであとで残ってください。」


「わかりました」


 勇者は先生にずっと呼ばれている。馬鹿だから先生に怒られて可哀想。

 

ーーーーーーー


 最近点数が下がって来た。正直国語が苦手なんだよね。


 そして、衝撃な姿を見た。


 嘘、あの馬鹿(勇者)に点数で負けてる??


 ほんの少しの点差だった。だけど負けた事実は変わらない。


 不正でもカンニングでもしているの?


ーーーーーーー


 その日も勇者は宿題をやって来なかった。

 やっぱりテストは何かしらズルをしたんだ。


 その日、先生に呼ばれず、誰も居ない中一人で放課後残る勇者を見つけた。もしかしたら、テストのカンニングをするためにズルをしているんだ!


 そして、勇者は宿題を始めた。


 嘘?アイツが宿題をやっている?


ーーーーーーーーー


 それからも勇者が宿題をしている姿を何回も見た。


 「来週はこの宿題を出しますのでみなさんはやって来てください。」


 その日の放課後、勇者がその宿題をやっている姿を見つけた。


 明日も明後日も、また先生に呼ばれた日もあり、その次の日もまた残って宿題をしている。


ーーーーーーーー

 宿題提出日


 私はやっと、勇者の宿題を出す瞬間が見えるかもしれないと思った。


 だが、勇者は宿題を出さなかった。


 なんでよ?なんで出さなかったの?もしかして忘れたの?


 その日の放課後に勇者はまた学校に残っている。

 そして


 「なんで、その宿題今日出さなかったの!!」

私は思わず、直接言った。


 「終わらなかったから。」


「終わらなかったってアンタいつも残ってやってたじゃん」


「えっなんで知ってるの?」


「そ・・・それは先生から聞いたからよ。」


「そっか。俺馬鹿だから全然出来なくて、たまに先生に放課後に教えて貰ってるんだけどそれでも終わらなくて。」

勇者の手元にある宿題を見る。そこには先生の字らしき物のアドバイスが書いてある付箋が沢山貼られている。


 「俺いつも宿題を提出日までに出来ないから先生に手伝って貰って残って頑張ってるんだ。ある程度終わったら先生に丸つけ貰い、分からないことを教えて貰うの。」


その付箋の数を見ると、本当にそのことをやって来たことがわかる。


 今まで宿題を出さなかったのはこうやって頑張ったけど、提出日に間に合わないだけだったの?


 「花井さんは凄いね、いつも宿題を出して。」


 「・・・ッ!」

私は同い年の子に初めて勉強で頑張ったことを褒められた。いつもは真面目だと馬鹿にされているのに、


 「俺も頑張んないと。」


 「とっくにがん・・・」

言葉が出なかった。私はこの宿題を3日で終わらせた。時間も半分以下だろう。

 私がいつも言っていたことを思い出す。


 【馬鹿だからこそ勉強しないといけないんでしょ!】


 勇者は既に何回も計算を書いている。


 もう、頑張ってるじゃん。私より何倍も。


 「ねぇ、私が勉強教えてあげるよ。」


「いいの?」


私は毎日勇者に勉強を教えた。気付いたら私はいつも勇者と一緒に居た。

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