第47話「純白の少女」
ドワーフの人達が村の人達に避難を呼びかける中、私も村を走り回って避難を呼びかけていた。
そんな中、私は自分と同じくらいの背丈の、1人の女の子に出会った。
その少女の事を一言で表すなら、純白だった。
着ている服も、サラサラとしたその髪も、透き通る様な肌も、美しい白だった。
ただ、耳に付けた黒い羽根飾りを除いて。
私はそんな彼女に見惚れて何も言えずにいると、彼女はそれが面白いと言うようにくすくすと目の前で笑った。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
その言葉に私ははっとする。
年齢は同じくらいなのにお姉ちゃんと呼んでくるという事は、もしかしたら見た目よりも歳は下なのかもしれない。
「えっと、ごめんね。君はこの村の人?」
その質問に、女の子は微笑みながら頭を振った。
違うという事だろう。
「ボクは他の場所から来たんだ。お姉ちゃんとおんなじだね?」
女の子はそう言いながら楽しそうに金色の目を閉じながらはにかんだ。
旅の子、という事は前線で戦っていた冒険者のお子さんだろうか?
けど、今はそんな事を気にしてる場合ではない。
「あのね。もしかしたらここは危ない場所になるかもしれないの。だから、私と一緒に避難しようね?」
そう言うと、女の子はまったく予想していなかった言葉を口にした。
「うん、知ってるよ。でも、ボクもお姉ちゃんに用があってきたんだ。」
「わ、私に?」
「うん、そう。お姉ちゃんはまたアルシア達のとこに戻って戦うんだよね?」
「う、うん……。そうだけど……。」
会話の内容に少し違和感を感じながら頷くと、白髪の少女は満足そうにうんうん、と頷いた。
「じゃあ、ボクもお手伝いしないとね?」
「だ、駄目だよ、危ないよ!」
「いいからいいから。実際に戦うんじゃなくて、お姉ちゃんに、ね?」
そう言いながら、女の子は私に更に近寄って、私の胸に手を当てた。
「ち、ちょっと君!?」
「あ、やっぱり。お姉ちゃん、槍を持ってるよね?あと、神術も使える。まだ若いのに凄いね。」
そう言いながらにへへ、と笑う女の子に私はドキリとする。
胸を触られてる感覚からではない。
教えてもないのにそんな事を言われたからだ。
しかし唯一、槍、という単語には心当たりが無い。
「槍………、ホーリーランスの事?」
私は自分が使う術を思い出して、そう聞いてみることにした。
現状、私が持ってる物で槍と言えば、アレしかない。
だが、アレはただの光魔法で、光魔法を使える魔導師なら誰でも使える上級魔法だ。
特別な物ではない、そう思って女の子を見ると、女の子は「やっぱりか……」と言いたげに苦笑していた。
「うん、やっぱり自覚してないみたいだね。まあ、今教えても、まだ使いこなせなさそうだから、今日はもう一個の方かな?」
そう言うと、私の胸に当てられた手が光り出し、それと同時に私の身体に激痛が走った。
思わずその場に倒れそうになる。
「かっ、は…………!?」
女の子は胸を押さえて膝をつく私をニコニコと笑いながら見下ろしている。
だけど、彼女を怒る事はない。
何故なら、私を襲ったソレは激痛ではあったけど、閉じていたものを開いてくれたような、そんな感覚だったのだ。
寧ろ、今までよりも力が溢れてくるような感覚まである。
「神術に目覚めちゃう人って、大体変なつっかえみたいなのが出来ちゃうんだよね……。まあ、お姉ちゃんみたいなパターンは特例中の特例だけどね?」
女の子は穏やかな微笑みを浮かべながらそう言って、私に背を向けた。
「ま、待って!君は……!?」
名も知らぬ女の子を止めようと声を掛けると、彼女はその場で振り向き、微笑みながら更に言葉を紡いだ。
「ボクの名前はシギュン。お姉ちゃん。もし、この先戦う中で苦しい場面があったら………戦う中で、もっとも信頼している人の顔を思い浮かべながら神術を使って。……その人っていうのは、きっと高位魔族の誰かさんなんだろうけど、ね?」
それだけ言って、今度はいたずらっぽく笑うと、白髪の女の子は何処かへと走り去っていった。
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