第18話
ファラトゥールはアシアスと共に地下工房を出て、アシアスの秘密の小部屋へ移動。
そして、ファラトゥールはまたも開発中だった隠密魔法をここで試しながら、アシアスの妹でもあるルイナの部屋へ向かった。
城内はとても静かで、妙に足音が響く。勿論、響くのはアシアスの足音だけだが。
『なんだか、物寂しいわね』
ファラトゥールの故郷のセイリオス国の城内と比べてしまい、思わず呟いてしまった。
「えぇ・・・恥ずかしながら、城内のどこもかしこもこんな感じです」
歩く廊下の灯りは最小限。壁などを飾る絵画も、何もない。
ファラトゥールの実家でもあるセイリオス国の城内は、そんなに贅沢をしている訳ではないが、王家として恥ずかしくない様、色んな所に趣味良く格調の高いものを飾っている。
「城内はこんな寂れた感じですが、王家より諸侯貴族の方が贅沢な生活を送ってますよ」
皮肉を滲ませてはいるものの、表情は変わらない。
こういうものだと、諦め、慣れてしまっているのね・・・・・
そうしているうちのルイナの部屋へと辿り着いた。
此処に来るまでの間、騎士にも誰にも会っていない。王女の部屋の前にも、誰も控えていないのだから。
―――異常だ・・・とファラトゥールは思った。
ノックをし、返事も待たず扉を開けて部屋に入って行くアシアスにギョッとしながらもついていけば、ベットに入り本を読んでいる可愛らしい少女がいた。
「ルイナ、体調はどうだい?」
「お兄様。今日は軽い運動ができる位は調子が良かったですわ」
「そうか、あまり無理はするなよ」
そう言って、優しく頭を撫でるアシアス。絵になる光景だ。
そんな二人を見ながら、ファラトゥールは動揺する。
―――あの子が妹?アシアスとは違い、金髪碧眼の美少女・・・・にしか見えない。
確かアシアスは二十三歳だったわよね。三歳年下ってば二十歳・・・・見えない!どう見ても、私と同じ位??
下手すれば私より年下に見える!!
アシアスにくたびれ感が見えていたが、ルイナに関してはタダひたすら弱々しい。
やだ・・・なんて言うか、もやし?もやしみたいに、白くてひょろひょろ!?ヤバいわ!まさに、吹けば飛ぶ気しかしない!あんなんで、軽い運動したって?軽い運動って、なに?ベッドから扉まで歩く事?えぇぇ?それすら無理じゃない?あのもやしの手足じゃ!
表情には出さないが、ファラトゥールは心の中でひたすら騒ぎまくる。
そして、ルイナを鑑定してみた。
ルイナ・ガルーラ 第一王女 二十歳
虚弱体質 重度な栄養失調
遅効性毒症状
そして彼女の本質を表わす言葉。アシアスに負けず劣らず、綺麗な言葉が並ぶ。
可憐、慈愛、包容力、癒し、誠実、自己犠牲・・・・
・・・・・・聖女かよ・・・
この兄妹・・・・似た者同士かよっ!
邪な事しか考えてない私が、超汚い人間に感じるわ!ってか、実際そうなんだけど・・・
こんな、汚れを知らないただひたすら真っ直ぐな兄妹だと、すぐに潰されちゃうわ。
せめて、妹だけでも腹の中が黒ければまだマシだったんだろうけどねぇ。
真面目過ぎて、なんとも難儀な兄妹だなぁと、ファラトゥールは微笑み合う二人を眺めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます