第8話『第3魔導高校コアブレイク大会、開始!』


 7月中旬。


 第3魔導学校の行事の一つである、『第3魔導高校コアブレイク大会』に全校生徒が参加する。俺も、もちろん参加する。


 俺は空真くうま彩良音さらねの動向が気になるが、学校の行事をサボるわけにはいかない。

 サボっていた事が、学校にバレれば、1年間、迷宮ダンジョンに潜れなくなるのである。いわば、ダンジョン禁止令である。もっと、重いと学校在籍中は迷宮ダンジョンに潜れなくなってしまうので、サボるわけにはいかない。


 学校の闘技場とうぎじょうには大勢おおぜいの生徒達が立ちならんでいた。観覧席かんらんせきには生徒の保護者達が見守っていた。妹の花純かすみは学校なのでいないが、お母さんは来ている。


 天気は晴れており、気温も27度とまあまあ暑い。


 保護者達の中に、団扇うちわあおいでいる者、中にはお酒を飲んでいる者もいる。


 俺の前にいる次郎じろうかえる。

空音そらね緊張きんちょうしているか?」

「別に、緊張してないけど」

 そんな事より、空真達が無事なのか気になってしょうだないのだ。


 後ろにいる強司きょうじが俺のかたつかむ。俺はり返る。

「ぼくはとてもワクワクしてるよ。核を破壊するのは実に爽快そうかいで楽しいからね」

 強司はニッコリと笑顔で話す。

「お、おう……」

 その笑顔が怖い、それに黒いオーラも視える。

「だよな。おれもワクワクしてるぜ」

 次郎の笑顔は邪気じゃきがなく、綺麗きれいだ。



 魔導コアブレイク大会というのは、敵陣の核を破壊したり、自陣の核を守る競技。

 魔導オリンピックでは8人制、16人制、32人制、50人制、100人制がある。

 うちの学校、今年の大会では8人制である。

 昔は16人制だったみたいだが、少子化の影響で生徒数は減り、今では8人制となった。


 俺、次郎、強司だけでは人数が足りない。

 中学生の頃、同級生で友人の茶良輝喜ちゃら てるき遊園時ゆうえんじオサムを誘った。

 次郎は今野佐助こんの さすけくん、金剛力男こんごう りきおくんを誘った。


 最後の1人は――


「(ふふ、私、頑張るわ。空音くんのために!)」


 学校の美女ランキングトップ5に入る、美女、花輪囲優美かわい ゆみさんである。


 彼女はどうやら、いろんな生徒からお誘いがあったのに、すべて断ったみたいだ。彼女曰いわく、「空音くん、いがいのチームなんて、ありえない!」だとさ。

 なぜ、そこまで俺と一緒のチームが良かったのだろう?

 俺って、そこまで好かれる理由でもあるのか?

 俺なんて、そこまでイケメンでもないのに。

 それに、メイドゴッコはやらなくなったからね。

 俺の希望で止めたのだ。彼女は不満そうだったが。

 まあ、彼女と一緒のチームになれるのは嬉しいけど。

 

 これでぴったり8人である。



 教諭きょうゆのお言葉。

 校長先生のお言葉。

 先生も校長先生も、空気を読んで、短く、わかりやすい、お話で終わる。


 そして、三ツみつば先輩と村井先生が壇上だんじょうに上がった。

 三ツ葉先輩はマイクにスイッチを入れる。


『みなさん!! こんにちは!!』


「「「こんにちは」」」


 うお、声、大きいな!


『聞こえないよ!! みなさん、こんにちは!!』


「「「こんにちは!!」」」 


『よし、元気だね!! えーっと、わたしは放送部の三ツ葉アカリです! 今大会である第3魔導高校魔導コアブレイク大会の司会を務めさせていただきます! みんなが楽しめるよう、げて行くよ~! はい、次は村井先生! どうぞ!』


「可愛いよ!! アカリ先輩!!」

「素敵~!! アカリン先輩!!」

「大好き~!!」

 黄色い声援せいえんが聞こえる。


 すごいな。三ツ葉先輩は自己紹介で、こんなに盛り上げるなんて。


 さすがは放送部の部長だ。


 次は村井ツトム先生である。


 村井先生は20代なので若い。少し緊張している。

 村井先生はマイクにスイッチを入れ。


『みなさ~ん! こんにちわ~! 魔導戦闘術を教えている、教師の村井先生だよ! 解説者として、みんなに分かりや~すく、説明するから、楽しんでね! よろしくう~!』


「むら~、頑張って~!!」

「村井ファイト!!」

 村井先生も愛されているな。


『それでは、第3魔導高校魔導コアブレイク大会を開始、いたします!!』


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