第26話『蛇闇間学とは?』



 花輪囲さんは学校の制服に着替きがえて、一緒に学校に登校する事になった。

 学校の美女トップ5に入る、花輪囲優美かわい ゆみさんをメイドにするなんて、漫画やアニメの世界だけだと思っていたが。

 駅のフォームで一緒にベンチに座った。


「ご主人様、あめ、食べます?」

「うん、食べるよ」


 彼女はスクールバックから飴袋あめぶくろを取り出し。


「ご主人様はソーダ味、好きですか?」

「うん、好きだよ」

「では、ソーダ味の飴をどうぞ」

「ありがとう」


 個包装こほうそうされた飴を受け取り、がす。

 口に入れる。


「おいしい」

「よかったです」


 そして、学校に到着。

 生徒達は俺達を見た。


「花輪囲さんの隣にいる男子は誰だ?」

「もしかして、付き合ってるのかな?」

「ええ、マジ~!?」


 生徒達の視線が熱いし、気恥きはずかしい。

 ここは、我慢がまんだ。


 理由があって、彼女はメイドになったのだから。

 人助けのためだ。悪い事をしてるわけじゃない。


 教室にはすでに、7、8人いた。

 時間は少ないが、宿題をやろう。


「これ、どうぞ」

「え?」

「宿題やってないんでしょ? ご主人様?」


 彼女はニヤリとし、クリアファイルを渡してきた。


「これは?」


「宿題の答案が入ってるから、使ってください」


「ありがとう!」


 お礼をいると、彼女は近づく。


「こちらこそ、ありがとうございます。空音様」


 耳元で囁かれた。


「……!!」


 耳も顔も、かぁっと、熱くなる。

 そんな、耳元みみもとささやかなくても!

 なんというか、花輪囲さんのイメージが、いろいろとくずれたような。

 保健室の事も想像し、悶絶もんぜつ

 花輪囲さんって、こんなキャラなのか?

 内心、ドキドキである。



 昼食の時間。屋上。

「おいおい、どういう事だ。空音」

「ん?」

「優美ちゃん、ガチのメイドになったみたいじゃないか!」

次郎が俺にる。

「それは、その……」

「一緒に学校に登校したみたいじゃないか? どういう事かな?」

強司も詰め寄ってきた。

「いや、だって、花輪囲さん、昨日、メイドになるとか言ってたじゃん。一緒に、登校するのは当然だろ?」

「あのな、普通に冗談だと思うだろ!! ただ単に、罰ゲームか何かで、誰かに『私、あなたのメイドになる』と、誰かに言わされたんだろ!!」

「そうそう、みな、花輪囲さんが冗談とか、罰ゲームで、言っただけだと思っているよ」


「それは、その……」


 俺が困っていると。

 花輪囲さんはかくし事ができないと、さとったのか、苦笑し。


「次郎くんと強司くんにも説明するよ。なぜ、私が八雲くんのメイドになったのかを――」

 花輪囲さんは事情を説明した。


 次郎はあきれといかりが混ざったような表情で壁を叩く。

「あいつ、まだストーカーしてたのか!! こりない奴だな!!」


『まだ』という事は、知ってたのか? 次郎は。


「あいつがストーカーなの、知ってたのか?」

 次郎は溜息ためいきをもらした後、「ああ」と頷く。


「まあな。有名だからな。知ってたぜ」

次郎はうでみ。

「うん、僕も知ってるよ」

 強司は頷く。


「彼とは同じ中学に通っていたんだ。それに、何度か話す機会があったからね。どういう人なのか、だいたい、わかるよ」

「ああ、そうだ。俺もあいつと同じ中学学校だったぜ」

2人は嫌々そうな表情をしていた。

どうやら、花輪囲さんと、蛇闇間学じゃくらま まなぶ、次郎、強司は同じ中学校だったみたいだ。

「なんだよ、知らなかったのは俺だけかよ」

 俺、友達なのに、何も知らないなんて。水くさいというか、悲しいというか。

 友達なんだから、教えて欲しかった。

 俺の気持ちが伝わったのか強司は申し訳なそうな表情になり。



「すまないな、空音。お前を巻き込みたくなかったんだ。あいつは、そんじょそこらと、ストーカーと次元が違うからな」

「ゴメンよ。空音を巻き込みたくなかったから、言えなかったのさ」

「ごめんなさい。空音くん、巻きこんでしまって」

 3人から謝罪され、俺の気はだいぶ晴れた。


「3人とも悪くない。悪いのはストーカーをする蛇闇間学だろ。それに、こうやって話してくれたんだ。ありがとう、話してくれて」

 3人は、ぱあっと明るくなり。暗くどんよりした空気も晴れた。


「てか、蛇闇間学はどれくらヤバいの?」

「あいつは国家議員の孫だから、金と権力はある」

「マジかよ!?」


 政治に詳しくないので、わからなかった。


「彼は優美ちゃんに盗聴盗撮、何でもやってたみいだよ」


「うわ~」


 改めてドン引きだ。


 それから、次郎達は蛇闇間のヤバい話をどんどん、聞いた。

 花輪囲さんの体育着や教科書、ノートなどを盗んだ話や花輪囲家の自宅に盗聴器を仕掛けた話など。ガチでヤバい奴だと再認識した。


「とにかくだ。空音も優美ちゃんに協力してくれ」

次郎に真っ直ぐな目を向けられ、俺は強くうなずく。

「わかった!」


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