夕焼けと時の狭間で
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夕焼けと時の狭間で
夕焼けが空を染め、住宅地はその美しい色彩に照らされていた。
国道が近くあることで、閑静とは言い難い環境ではあるが、一戸建ての住宅が立ち並ぶ区画もある。
高校生の
「ただいま」
手には学校の帰り道、スーパーで購入した食材が入ったエコバッグを持っていた。
すると家の中から小学生の弟・
「姉ちゃん、綾乃が僕の宿題のノートを汚しちゃったんだよ!」
悠馬は泣き顔で訴える。その後ろには同じ歳くらいの女の子が申し訳なさそうに立っていた。妹の
「ごめんなさい。お絵描きしてたら、ジュースが倒れて……」
綾乃はジュースで汚れた服のまま、涙を浮かべながら説明した。
早紀は二人をなだめるように優しく声をかける。
「悠馬も綾乃も泣かないの。お姉ちゃんが、きれいにしてあげるから」
そう言うと、タオルを絞ってリビングの掃除を始めた。テーブルと床を丁寧に拭き取っていく。それから綾乃の服を洗濯すると共に、お風呂に入れて洗ってあげた。
それが終わると、悠馬が待っていた。
「お腹すいたよ」
早紀は、次々と起こる出来事に、ため息を一つつく。
「……待ってて、すぐにカレーを作るから」
早紀のイラつきがある口調に、悠馬はビクっとする。
そんな弟の反応に、早紀は小さい子供にあたってしまったことを内心で反省した。
(私、ダメね)
心の中で謝りながらも、弟や妹の世話をするのは姉の務めだと割り切っている部分もあった。それが自分の役割なのだから……そう自分に言い聞かせていた。
夕食の準備をするためエプロンをつけると台所に立った。
早紀の家は母子家庭だ。母親は仕事からの帰りが遅く、早紀が母親代わりとなって弟と妹の面倒も見なければならないため彼女の負担は大きかった。
「悠馬、お皿を取ってくれる?」
早紀の声に反応して、弟は食器棚から皿を取り出した。
その時、家の中が突然静まり返った。
音がすべて消え、悠馬も動かなくなった。
「えっ?」
早紀は驚いて周りを見渡した。
時計は夕方5時を指して止まっている。
早紀はリビングに行き、テレビの前に座っている綾乃を見たが、彼女も動かないどころか、テレビの映像も静止している。
「どういうこと?」
窓の外を見た。
街も静まり返り、鳥も空中で止まり、車も人も動いていない。まるで時間が止まったようだ。
しかし、早紀だけは自由に動ける。
怖くなったが、同時に好奇心も湧いてきた。これは一体何なのか? どうすれば元に戻るのか?
最初は戸惑っていた早紀だったが、この奇妙な現象を利用してみることに決めた。
「少し休もう……」
早紀はカバンから、休憩の合間で読んでいる小説を取り出し読み始めた。いつもは早朝のアルバイトや学校、勉強、宿題、家事等に追われて、自分の趣味に時間を割くことはほとんどできなかった。
しかし、今は誰にも邪魔されずに読書に没頭できる。
時間が止まった特別なこの瞬間、彼女はリラックスし、本の世界に引き込まれていった。どれくらいの時が止まっていたのだろうか、突然音が戻ってきた。
悠馬の声が聞こえ、時計の針が再び動き始めた。
「お姉ちゃん、お皿どこに置くの?」
悠馬は何も気づいていない様子だ。早紀は驚きながらも皿を受け取った。
「今のは一体……」
早紀は再び外を見る。
さっきと同じ風景だが、時間が再び動き出したことは事実だった。
この現象は、早紀が自宅に居る時だけ起こった。
【空中で止まったまま浮かんでいる鳥】
2023年2月17日の夕方。
カナダ・バンクーバーに暮らすクリスティーナは、住宅街を走る生活道路の真上に曲がった翼を広げた大きな鳥がいるのを目撃する。
鳥は空中でピタリと動きを止めていたのだ。周囲には電線が張り巡らされているが、鳥がそれに絡まっているわけではない。まるでそこだけ時間が止まっているかのような不思議な光景は、時間停止ではと言われた。
その後、早紀はこの特別な時間のリズムを毎日楽しむことにした。
夕方5時が来ると、時間が止まる。その間、彼女は読書や絵を描くこと、自分の趣味に没頭することで、心をリフレッシュさせた。
この時間のおかげで、多忙だった早紀の生活には少しずつ変化が訪れた。学校の成績が上がり、部活でも集中力が増し、パフォーマンスが向上した。疲れ切っていた彼女の顔にも笑顔が戻り、家族との時間も増えていった。
母や悠馬、綾乃とも話す時間が増え、家庭内の雰囲気が明るくなる。彼女のリフレッシュした心が、家族にも良い影響を与えたのだ。
日々の忙しさの中で、早紀は自分の時間を持つことの大切さを実感していた。おかげで、彼女は心身ともに健康になり、周囲との関係も良くなった。
「自分だけの時間って、大切なのね」
早紀はしみじみと感じた。
彼女は毎日夕方五時を楽しみにしながら、友達や家族との絆を深めていった。この特別な時間は、彼女の心を豊かにし、日常生活をより充実させる為の大切な
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